森狼
森を進む中で遭遇した森狼2頭に対して、ユリアンネはそれぞれ≪火球≫を発動したが、それだけでは倒し切れていない。ゾフィは走る馬車の御者台から放つ経験がなかったからか外してしまい、先輩冒険者のエミリアンは鉄級ではあるが、自分で騎乗した状態なのに上手く矢を当てている。
一方、別の鉄級冒険者と名乗っていた女性魔法使いのリリアンナは詠唱と魔法陣を使用しながら石の球を狼の片方に当てていた。
ユリアンネは自身が未習得の土属性の魔法であり、茶色の魔法陣が杖の先に浮かび上がる様をついつい見入ってしまった。
「おぉ、ユリアンネ、すごいじゃないか。発動も2発と早いし無詠唱か?リリアンナの石も威力がありそうだ」
「あぁジョエタンの言う通りだな。このまま手負いで残すより撃退した方が安心だな。よし停車して撃退するぞ」
「“赤い同志達”は馬車、特に馬を守れ。ヨルクとカミラは馬車に乗ったままで入口を守れ!シミリートとジーモントは御者台から降りて、ゾフィとユリアンネを守れ!ゾフィとユリアンネは自分の身の安全優先で余力があるときにだけ遠隔攻撃をしろ!同士討ち、フレンドリーファイアだけは絶対に避けるため無理はするな!ヴァレマンもリリアンナを守り、リリアンナも無理せず遠隔攻撃だ」
「基本的には俺たち“赤い同志達”だけで大丈夫だ、そう信じて無理をするな!」
先輩冒険者である“赤い同志達”が、不慣れなユリアンネ達“選ばれた盟友”を慮ってかなり丁寧な指示をして来る。
そして言葉の通り、自分たちも動きやすくするため馬から降りて、馬車の荷台を外側に、馬を真ん中にするように誘導して陣を固めながら、近づいてくる森狼達に確実に手傷を与えていっている。
ゾフィは安定した地面に降りた後は、同士討ちにならないタイミングを見計らって矢を放つのでほとんど的中させ、シミリートとジーモントは近寄ってきた森狼にだけ丸盾で身を守りながら片手剣で切り付ける。ユリアンネは引き続き≪火球≫だけを複数発動させて応戦したが、ヨルクとカミラが武器を振る機会は無かった。




