大人達の配慮2
その頃、衛兵団の中でシミリート達は幹部に呼び出される。
「マンファン伍長以下の分隊による、この度の治安向上の働きを評価する。マンファン、軍曹への昇進を認める」
同様に、班長のセレスラン兵長は伍長に、シミリート一等兵は上等兵に認められた。
「シミ、お前は入団してから色々と発生して慌ただしかっただろう。視察を命じるからゆっくりして来い」
マンファン分隊長の言葉の意味が分からず驚いているシミリート。
「シミ、あまりに急な昇進は他者からの妬みをかう。しばらく外を見てこいと言うのは、分隊長の親心だ」
「セレス、そういうことは本人の前で言わないものだ」
「分隊長、班長……」
「居ない間のことは任せろ。お前の仲間達も安心してトリアンに戻れるよう、“蒼海の眼”は根絶やしにしておいてやるから」
「だからちゃんと帰って来るんだぞ。あくまでも出張命令だからな。証明になるように手形も用意してやるが必要なときにだけ使えば良いから、足かせに思うなよ。お嬢ちゃん達とあちこちを見て来る中で、各地の衛兵達の働き様を学べば良い。それがお前の将来の糧になると信じているし、衛兵団にも貢献すると期待している」
「……」
「今夜は壮行会で酒に溺れるだろうから、明日にはちゃんと実家に帰れよ。寮は残すから荷物をどうするかは任せる」
「さぁ今夜はお嬢ちゃん達との仲もいじってくる奴がいっぱい居るぞ。覚悟しておけよ」
仲間の彼女達とは特筆することが無いことを知った先輩達からは逆に不甲斐なさを責められる。旅の間に仲を深めるためのテクニックと称した適当なことをあれやこれやと言われたが、深酒起因だけでなく、どれもたいしたことでは無いことしか覚えていない。
それよりも入団してそれほど経っていないが、分隊員の皆が弟に接してくれるような気持ちだけが残っている。