誘拐の後始末3
「ゾフィ、すまなかった」
衛兵の拠点でシミリートが謝ってくる。
「別にシミたちのせいでは無いわよ。ただ、まだ残党が居るかもしれないのね、と思っただけよ」
カミラをさらい、ゾフィを人質にしようとした女も犯罪奴隷になるとのことで、貰った金貨1枚。それを銀貨100枚に両替して5人で等分していたところにシミリートが駆け込んで来たのである。
「しばらく他の街にでも行ってみるか?」
とヨルクがボソッとつぶやいた言葉が皆の心に響く。
「確かに、商売の勉強のためにも他所の街、例えば王都にでも行ってみたいわね。どんな品揃え、どんな店頭展示しているのか興味あるわ」
親から独立してお洒落な衣服を作って売りたいゾフィとしては、漠然と思っていたことが言葉になったようである。
カミラも工芸屋を引き継ぐとしても、他所の街の商品などを見てくることは糧になると思う。宿屋の長男ジーモントも、鍛冶屋の次男ヨルクも、である。
「でも……」
そう、ユリアンネも王都などの薬屋や書店のことは勉強になると思いはするが、高齢で後継者を求めていたオトマンにその話を切り出すのは忍びない。仲間達の親の世代はまだまだ普通に現役を続けられると思うのだが。
それにシミリートも衛兵団に就職したところである。衛兵団はあくまでもこのトリアンの街、広くとらえてもストローデ領の中で働くことを期待されているわけで、遠くに行くとなると退職する必要があるのではないか……
その2人のことも分かった他の仲間達はそれ以上この話題には触れず、臨時収入の銀貨20枚で何を買うか、結局途中で取りやめになったガラクタ市で何か買いに行きたい、でも1人で行ったら危ないから揃って行こう等の話で盛り上がる。