表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/33

第九話 アナスタシア姫の知謀

今日はもう一話投稿します。


「ガリューズ、お主だけが本城に戻れ。わしとローズメイデンは少し野暮用ができたのでな」


 ジオスの呼び止めに、馬に乗ったガリューズが振り向き答える。


「別に構わねぇぜ!! 城を守るなんざ、俺一人でも十分だからな!!」


 自信満々に返事をするガリューズに対し、ローズメイデンが食いかかる。


「あら、随分と頼もしくなったじゃないの♪ まぁ、結局また私に助けを求めることに♪」


「ならねぇよ!! お前らはここに残るなり、どっかいくなり好きにしろ!! とにかく、王都を守るのは俺一人で十分だ!!」


 ガリューズがそう言い終わると、ジオスは安心した様子で、ローズメイデンの方を見た。


「では、ローズメイデン。ガリューズの活躍に期待してワシらは別の場所を守るぞ」


「ジオス様がそう仰るなら♪」


「ハ! たっぷり期待しとけよ!! ほら、シャドウ!! てめぇは俺と一緒に王都に行くんだよ!!」


 仲間との会話が終わると、今度は捕虜として捕らえられた敵将シャドウに話しかける。


「くそっ……竜化が解けたら真っ先にお前を殺すっ!!」


 ガリューズの言い方が気にくわなかったのか、やけに嫌そうな顔をしながら、シャドウは吐き捨てるようにそう言い放った。それを聞いたガリューズは、勝ち誇った様子で返事をした。


「そういうセリフは殺した後に言うもんだぜ!! まぁ、今のお前じゃ百億パーセント無理な話だけどな!! おい、誰か!! こいつを乗せてくれ!!」


「「はっ!!」」


「くそっ……! 絶対後悔させてやる……!!」


 シャドウの捨て台詞を無視し、そそくさと進むガリューズ、ローズメイデン、ジオスの三人。

 かくして、ガリューズとシャドウは王都に。ジオスとローズメイデンは王都と拠点を繋ぐ兵糧庫に。それぞれが、拠点を離れる結果になったのであった。


**


「行きましたね」


 赤旗、黄旗、白旗の三旗がそれぞれ別の方角に進軍するのを見ながら、アナスタシア姫がぽつりと呟く。


「皆を招集させなさい。今すぐに」

「は!」


 兵士が号令をかけると、ラッパ吹きが一呼吸のち、リズミカルな音を響かせる。

 その音を聞いた兵士たちはすかさず体を起こし、集合場所へと向かった。


(敵を騙すにはまず味方から。それは、ジオス。あなたとて例外ではないのですよ)


 集まった兵士を前に、アナスタシア姫が語り始めた。


「皆の者!! よくお聞きなさい。敵はこれから兵糧を断ちに来ます。わが軍は兵糧を断たれると撤退せざるを得ない故、やむなく三英傑を本陣から外し、事に当たらせました。しかし、それこそ奴らの思うつぼ。奴らの本当の狙いは、兵糧を断つふりをしてわが軍を分散させ、もって大本営でわが本陣を壊滅させることにあります。そしてその敵軍の中には、型使い、もとい竜の託宣者も加わっていることでしょう」


 緊張を隠すよう一つ生唾を飲み込むと、再度語りかける。


「しかし、ご安心なさい。型使いには型使いを、などという常識は私には通用しません。本戦いをもって、それを証明してみせます」


 自信満々な表情で、されど険しい表情は崩さずに話す。


「今戦いは最初で最後の大苦戦する戦いになります。ですがそれゆえに、あなた方は歴史に名を刻むことになります。本戦いで最後まで尽力したものには、爵位の褒賞と金銀財宝を望む額すべて差し上げましょう。これはかの三英傑ですら与えられたことのない褒賞です」


 陣営にどよめきが走るが、アナスタシア姫が拳を掲げると静寂が訪れた。

 兵士が皆口をつぐんだのを満足げに眺め、拳を降ろすと再び口を開く。


「ですが、それもすべて勝てばの話……負ければすべてが水の泡です。ゆえに、皆には粉骨砕身の心構えで戦場に臨んでいただきたいのです」


 苦しい時も、辛い時も、全てを乗り切り勝利を掴む。

 その信念を今、アナスタシア姫が全世界に知らしめさせる!!


「皆さんを必ず勝利に導きます。これが私たち、最後の戦いです!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ