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第三話 三英傑の舞

諸事情で夜中の投稿です。この時間でも見ていただける方いましたら本当に嬉しいです。

「ラスト王国、三番隊隊長ッ!! ガリューズ様のお通りだ!! どけよ、カスども!!」


 戦線の中、馬に跨りながらそう高らかに叫ぶ戦士がいた。

 短髪の赤髪をオールバックにし、鋭い眉と瞳が威圧感を与える彼。声の主は、そんな「俺様」の雰囲気を出しながら、戦場を駆け抜けていた。


「「ウォォォォォォ!!」」


 前方から、地平線を埋め尽くさんとするほどの兵が迫ってくる。今まで見たことのないような鬼の形相をし、赤黒いオーラを出しながら迫ってきていたのだ。


「なんだぁ? 俺を見てもビビらねぇどころか突っ込んできやがる。いつもは尻尾撒いて逃げるくせによぉ。どんな演説ブチかましたらこんな狂戦士ができあがるんだよ……まぁ、迫ってくるのはしょうがねぇ。全員冥界に叩き落さねぇとなァッ!!」


 そう言うや否や、彼は跨っていた馬の背中に立ち、勢いよく天に向かって跳躍した。そして宙に体を浮かせながら、剣を手に持ち、体を思いっきり捻った。


「「ボウッ!!」」


 炎が発生した──彼の剣先から猛々しく燃え滾る、一筋の炎だ。

 空気と剣が擦れるたびに眩い光を放つ炎。それは一回や二回ではなく、彼が回転するスピードに合わせ何度も何度も発生し、やがて炎塊が出来上がる。


「くらいやがれッッ!!」


 空高くから剣をしならせ、遠心力に身を任せながら渾身の一撃を見舞おうとしている彼。

 その炎海は時の流れと共にどんどん大きくなり、やがて彼の周りそのすべてを、炎が覆うまでに至った。そして──


「炎帝流、一の型──」

「──劫火一閃ッッ!!」


 重力に従い地上に降り立つや否や、地面に靴を思いっきり噛み合わせ、猛々しく燃え広がる一閃をお見舞いした。太刀筋というよりは炎線のようなその一閃は、周りにいる敵すべてに向かいそして──


「「グアッッッ!!」」


──悉く切り伏せたのであった。


「おらおら、どうしたぁ!! こんなもんかよ!! まだまだ、いくぞ!!」


 彼は次の型を披露する。


「炎帝流、二の型ッ!!──」

「──双炎乱舞ッッ!!」


 刹那、二つの交差する炎が敵を切り裂いた。クロスされた炎は敵の甲冑もろとも焼き払い、熱波の大風を拭き荒らしたのだ。


「まだだ、まだ諦めるなぁ!!味方の屍を超えて、必ず奴の首を取れぇ!!」

「「ウオォォォオオオオ!!」」


 しかし敵も負けていなかった。押し寄せる熱波と炎の壁に阻まれながらも、死に物狂いで突撃してきたのだ。


「ちッ、諦めの悪いゴミクズどもがッ!! 型使えないやつが……型使える奴によォ!!勝てるわけねぇんだよォッッ!!」


 波のように押し寄せる敵兵を焼き付くため、彼は再び剣を握る。


「炎帝流、三の型ッッ──!!」


 剣を鞘に仕舞い、重心を落とし……前を見据える。前が真っ暗になるほどの敵兵が近づいたのち、『カチッ』と音が鳴った。それを合図に鞘から炎が一気に噴出し、そして──


「──参式≪陽炎≫ッッ!!」

「「ぐああっっっ!!」」


 踏み込んだのち、一気に加速し居合の要領で敵兵を薙ぎ払った。

 斬ったあとには炎がいまだくすぶり、移動した距離を炎線が物語る。それははるか数十メートル先の敵陣真ん中まで伸びており、懐深くまで入ったことを示していた。


「うっしゃぁッッ!! 第一線突破ッッ!!」


 彼は大いに喜んだ。敵陣深くまで入り込んだから、敵大将に切り込みにいける。そう考えたのだろう。しかし、彼は気づいていなかった。敵陣深くまで入ると言うことは、同時に背後から襲われる可能性もあることに……


『スッ』


 慢心していた彼は、背後から近づく影に気づけなかった。気づいたときにはすでに刃は頭上目掛けて振り下ろされており、そして……


「しまt……」


 彼の顔から余裕の表情が消え、先ほどの威勢が嘘のように崩れ去り、そして──真っ二つに切られる……はずだった。


「黄帝流、一の型──」

「──紫電一閃♪」


 ガリューズの真ん前を『バチッ』という音とともに過ぎ去る美少女。その雷鳴はただ通り過ぎるだけでなく、敵兵の首までも搔っ攫っており、ガリューズはその様子をただひたすら見守ることしかできなかった。


「よそ見はいけなくってよ、そこのお兄さん♪」


 声がした方を見ると、そこには白と黄色の混合ヘアーが美しい女性が立っていた。気高い雰囲気のお嬢様気質な彼女は、見下ろす様に彼を見るや否や、余裕の表情を浮かべ、『ビシッ』と人差し指を彼に向けた。


「うるせぇ、誰も頼んでねぇよ!! ぶっ飛ばすぞ!!」


 変な気遣いに気がふれたのか、彼が激昂する。

 しかし、それを諭すように彼女が──


「怖いですわ~♪ でも私の方が強いから、お口はチャックでよろしくて♪」


──といい、人差し指を口にあて挑発してきたのだ。


「よっぽど死にてぇようだな……お望み通りぶっ殺してやるよ!!」


 妖艶な表情で舐めて掛かってきた彼女を見るや否や、ついに彼の堪忍袋の緒が切れた。


「竜炎の撃──炎竜アルドラ」

「雷帝の舞──黄竜パトリクス♪」


 刹那、突風とともに二人の剣鞘からは炎と雷が迸るようにあふれ出た。凄まじいオーラとともに、戦闘態勢に入ったのである。

 双竜睨み合う──この状況を一言で表すなら、この言葉が一番適切であろう。それくらい人間離れした異様な雰囲気が、戦場に向かって一気に伝播したのだ。


「謝るなら、いまのうちだぜ……」

「弱くも強くもない中途半端な男なんて、謝るに値しませんわ♪」

「言ってくれるじゃねぇか、このくそアマがぁ!! ぶっ殺してやる!!」

「やれるもんならやってみなさい♪」


「炎帝流、七の型──!!」

「黄帝流、二の型──♪」


「──七星≪竜炎撃≫!!」

「──双士電雷♪」


 二つの炎と雷が、爆音と爆風を鳴らしながら弧の形を描く。無論狙うのはただ一つ、相手の首である。

 険しい剣幕で切り伏せようとする彼と、余裕の表情で華麗に切り伏せようとする彼女。相反する二つの竜は互いの首に向けて一閃を解き放ち、どちらか一方が倒れるまで戦う。こうして味方同時の喧嘩という、何一つ利益がない闘争に発展する──はずだった。


「白帝流、一の型──」


 炎雷が迸る中、二つの剣閃に一人の老騎士が割り込んできた。彼は二人の刃の軌道をゆっくりと見据え、的確に刃を振り上げ、そして──


「──白銀一閃」


 白い聖光が戦場に降臨した。 天高くまで打ち上げられた白光は雲を貫き、白い柱を築き上げていたのだ。

 暫し見惚れていた──味方だけではなく、敵までもが呆気にとられていた。この世とは思えないほどの美しい聖光は、まるで神が降臨する軌跡を描くようにして地上に降り立ち、それは同時に──史上最強の騎士が現れたことを世に知らしめた。


「お主ら、戦場なのに何やっとるんじゃ……」


 白髪の老騎士がそこにいた。暴走する二人の戦士の剣戟を華麗にいなし、何食わぬ顔で清々しく立っていたのだ。


「ジオス様♪」

「ジオス、てめぇ……邪魔すんじゃねぇ!!」


 二人は彼を見るや否や、そう互いに口にした。それを聞いた老騎士は、


「味方同士の仇討ちなど、止めない方がおかしかろう……」


 と呆れたような表情をしながら、溜息交じりに答えるに過ぎなかった。


「なんで、次から次へとッッ!!」


 『ギリッ』と歯ぎしりし、憤慨した赤髪の男が問い詰める。


「おい! ローズメイデン、ジオス!! お前ら、左軍と右軍の担当だろ!! 何で中央の俺ん所まで入ってくんだよ!? 俺の獲物横取りすんじゃねぇぞ!! 自陣に戻れ!!」


 彼は、戦場の真ん中で怒号をがなり立てた。しかし、肝心の彼らは……


「だって♪」「しかしのぉ」

「「もう、全部終わっちゃった(♪)」」


 と、あまりにも味気の無い淡々とした口調で、そう告げるに過ぎなかったのだ。


「ハ、ハハハ……なんだそりゃ? 俺がこんなに手こずっているのに、もう敵兵壊滅させたのか? お、俺は信じねぇからな!! 後でアナスタシア姫に軍法で裁いてもらうからな!! 虚偽の報告をして、戦場を乱したってなぁ!!」


 尻もちをついて驚き、後ろ指を指している彼をいともせず、二人は敵兵を見据えた。


「ローズメイデン。そなたとわし、どちらが大将の首を取れるか競争じゃ」

「望むところです、ジオス様♪ でも私──勝ちますからね」


 そう言うや否や、激しい電雷と白光が一直線に伸び、前方へと行方をくらました。


「おい、俺の話を聞け……っておい!! くそぉ、俺の話聞かないでどっか行きやがった!! あのバケモン二人にぃ、先越されてぇ……たまるかよッッ!!」


 彼は急いで腰を起こすと、同じように前へと駆け出して行ったのであった。


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