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第一話 始まりの狼煙

初連載です。よろしくお願い致します。

 眼下に広がるのは兵、兵、兵──大地を埋め尽くさん限りの兵だ。

 突風が吹き、白い旗が揺らめく。青バラと赤バラが合わさった紋章がはためく。強風の中をたなびく王旗と、烈風の中を微動にしない屈強な兵。これから起こることは、そう──戦である。


「今日この日は、歴史に刻まれることになるでしょう」


 崖の上で隊列を見下ろす女性。金髪で紫紺色の瞳をした絶世の美女が語り始めた。


「三百年……群雄割拠の時代が訪れて三百年です。乱世は人を誤らせ、戦火は民を困窮させました。生き地獄を、戦火を──これ以上長引かせる必要はありません」


 太陽がスポットライトとなり、彼女の金髪を鮮やかに照らす。紫紺色の瞳が、すべてを見通すような透き通った光を輝かせる。彼女の美しさは見る人を圧倒させ、息を飲ませ……呼吸さえ止めさせた。


「終わりにしましょう。今日、この日をもって」


 生唾を飲む音が聞こえる。拳を強く握る音が聞こえる。

 皆一様に彼女を見上げていた。額からにじみ出る汗になど構わず、ただ見つめていた。隊列から出る雑音と視線がすべてを語っていたのだ。


──今日がどれだけ待ち望まれていた日かを。


「長くは語りません。ゆえに、最後の一言をもって開戦の狼煙とさせていただきます」


 風が止む。荒々しく吹いていた風が、嘘のように止まる。彼女の持っている大旗が平服し、無音が場を支配し……束の間の緊迫感が大地を覆う。


「……」


 太陽が頭上高く昇る。高く、高く、天の意を示すように昇る。そして数刻待った後、太陽が最頂点に鎮座する。

 この瞬間を待っていた。彼女はそう言いたげな顔をし、天高く旗を掲げた。

 天の意である神風が吹き、旗が翻る。先ほどの無音とは程遠い轟音が鳴り響く。そして、彼女は高らかに宣言した。開戦の火蓋が切って落とされたのだ。


「「解放の女神、ここにあり!!」」


───解放の女神、ここにあり!!

───解放の女神、ここにあり!!

───解放の女神、ここにあり!!


「「全軍反転!! 目標、コーネリア連合国軍!!」」


 自軍が一斉に反転し、土煙が舞う。一人の兵士も見えなくなるほどの濃霧が彼らを覆う。煙はしばらく続いたが、突如、突風が吹いた。先ほど吹いた神風と同じ、聖なる風だ。

 視界が広がる。見渡す限りの兵が、敵兵を睨みつけているのが見える。彼らが精鋭揃いなのは一目見ただけで明らかだった。これだけの少ない時間で、大隊列を組みなおしていたからだ。


「「必勝、必勝、必勝!!」」


 目標を一点に見つめる。眼下に広がる、水平線を埋め尽くす程の敵兵を睨みつける。固く閉じた拳は戟を持ち、一心不乱に武器を上げ下げし、士気を高める。

 兵の熱気が最高潮に高まったのを感じ取った彼女は、旗を大きく振った。強風に負けないよう、相手に負けないよう、大きく……大きく振った。彼女の華奢な体からは想像できない力は、自身の身長三倍以上になる王旗をはためかせ、大陸全土にラスト王国軍の到来を伝えた。


「「突撃!!」」


<<ウォォォォォォォォォ!!>>


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