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翼の勇者  作者: た~にゃん
第三部 森の王女 厄災の女神
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Chapter04-5 血だらけの

 灯りの乏しい廊下を進む。古びた臭いと甘やかな芳香が薄く混じって、館内を漂っている。


「ちょっと……本当に行くの?」


 前を行く背中に問いかけるが、背中の主――モルドレッドは「当然だ」と答えるだけ。



 この館のどこかに、比較的新しい死体が隠してある。



 モルドレッドにほぼ無理矢理つき合わされ、部屋を抜け出したメリルだが、ヤツは肝心の行き先をいっさい言わないのだ。まあ、現在進行形で死臭の元を探しているのだから、言えないだけなのだろうが。


 でも、やっぱり良い気分はしない。


 数歩前で、モルドレッドが立ち止まって空気の臭いを確かめている。


「こっちだ」


 メリルの部屋があるのは、いわゆる「離れ」。そこから緩やかなカーブを描く渡り廊下を通って母屋に行くのだが。


「あ」


 足を止めた。渡り廊下は、輝石窓ではなく目の細かい鉄格子がはまっており、外光が差しこんでいたのだ。

 メリルは今、姉お手製の衣装を持っていない。洗濯係のメイドが持っていってしまったからだ。


「……くだらんことをする」


 立ち止まるメリルにモルドレッドは顔をしかめ、


「被っていろ」


 自分の上着を脱いでメリルに投げてよこした。


「……ありがと」


 メリルはボソッと礼を言った。モルドレッドはメリルを旅に巻き込んだ張本人だが、ごく当たり前にこういうことをしてくる……どうも調子を崩されるのだ。


「で? アンタの探し物は母屋にあるの?」


 照れを誤魔化すように尋ねたものの、モルドレッドはさっさと先へ進んでしまっている。


(気がきくのかきかないのか……変なヤツ!)


 むくれて追いかけようとしたメリルだが。


「ウウッ……ウ……」


 微かな物音に、メリルは再び足を止めた。


(な、今、泣き声が……)


 二人並んで歩けない渡り廊下の先には黒い闇が蟠っている。鉄格子の外は、草丈の低い雑草がまばらに生え、壊れた煉瓦や石材らしき残骸が無造作に転がっていた。



 静かすぎるくらい静かだ。

 だからこそ。




 ナニカが、いる気がする――。




 メリルの心臓がトクトクと走り出した。こう見えてメリルは意外と怖がりなのだ。


「どうした。行くぞ」


 足を止めたメリルに、モルドレッドがニヤリと笑った。


「怖くなったか?」


「そ、そんなわけないじゃない!」


 つい反射で言い返し、メリルはギュウッと両手を握りしめた。イヤな予感しかしない。振り向いたら何か良からぬモノがいるかもしれない。


(前だけ! ムカつくけどアイツの顔だけ見るのよ。そうすればヘンなモノは見えないんだから)

 

 固く決意して顔をあげたメリルだが。


「え」


 斜め前の窓からこちらを見つめる緑髪の少女と、ばっちり目があった。


 まるで生気がない蒼白な顔……の、目の周りがドロリと赤黒く、ツツと赤色が頬を伝


「あ゛ぁぁぁーー!!」


 悲鳴をあげたメリルは、駆け戻ってきたモルドレッドにしがみつくと、ブルブルと窓の外を指差した。


「血! いいい今! 目の周りが血だらけのメイドがぁ!」


「? 血の臭いはしないが?」


 ただのメイドだろう、とモルドレッドが走り去るお仕着せを一瞥した。


「でも見たんだってば!」


 モルドレッドの胸ぐらをひっつかんでメリルは訴えたが、もうメイドの姿は消えており、誰もいない、うら寂しい庭があるばかりだった。

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