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翼の勇者  作者: た~にゃん
第三部 森の王女 厄災の女神
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Chapter02-2 謎めいた王女

『ちょちょ、王女ォ?!』


 念話でウィルが素っ頓狂な声をあげた。リディアもメリルも、ヘリオスまでも驚きを隠せない。どうして森の中に王女様が?


「私は、生まれつき魔力が異様に高かったのですわ」


 リディアたちの驚きを察したのか、カーミラは美しい(かんばせ)に微かな憂いを浮かべた。伏せた長い睫毛が白い頬に影をおとす。


「お兄様より高い魔力だったのが、よくなかったようですの」


 兄王子より高い魔力の持ち主だったことが災いして、王宮から遠ざけられた――。カーミラの顔は悲しげだった。


 確かに、魔力の高さは血筋と並んで重視される。


(……やっぱり凄腕の魔法使い??)


 怪鳥なんか怖くない?? それも気になるが。


『お兄様?』


 メリルがウィルを見るが、彼は目顔で「ちがう」と訴えた。


(今の国王陛下のお子は……)


 アグネス第一王女、レグルス第一王子、ハンナ第二王女、ウィリアム第二王子(ウィル)――この四人。第三王女はいない。


『認知されていない、ってこと?』


 メリルが念話で尋ねた。認知されていない――つまり、隠し子?


『いや、庶子はいるかもしんないけど、わざわざ離宮建てたりしないって』


 あのオッサン、女遊びはやりそうだけどな、とウィルが他人事のように言う。


『じゃなくて、アンタの血の繋がってる方の姉妹よ』


 ウィルは『怪物王子』――かつて古代魔族モルドレッドの遺骸を飲んだ王族の末裔。しかし、遺骸を飲んだ初代以来、放蕩の果てに勝手に子を為すので、王族の血は入っているもののかなり薄い。ウィルは『怪物王子』がゆえに王族に組み込まれているだけで、国王の実の息子ではないのだ。


 それに、異様に高い魔力持ちというのなら――。


『俺、そっちは一人っ子だもん』


『ええ……』


 じゃあ、目の前にいるカーミラはいったい『何』なのか。


 仮に王の隠し子だったとしても、彼女の見た目は二十代半ばは過ぎている。第二王女であるハンナは、ウィルと一歳差(御歳十六歳)のため、明らかに年齢が合わない。


「ねぇ、旅のお話を聞かせて?」


 憂いの表情から一転、カーミラは好奇心に輝く瞳をリディアたちに向けた。


「メリル様のドレス、とっても変わった形ね。もしかして異国からいらしたの?」


 ワクワクと尋ねるカーミラ。


「ど、どうして私の名前を?!」


 メリルが動揺も露わにカーミラに訊き返した。リディアたちはまだ名乗ってもいないのだ。


「ふふ。この子が教えてくれたの。メリル様と、リディア様、ウィル様にヘレネ様でしょう?」


 カーミラが示したのは、彼女の膝の上でごろごろしている〈厄災〉(異世界種)


『あ、それは俺が教えたんだ。聞かれたから』


 〈空間〉からジーンが申し訳なさそうに明かした。まさか〈厄災〉(異世界種)が人間と交流しているとは思わなかったから、と。


(だとすると、カーミラ様は〈厄災〉(異世界種)から私たちの名前と特徴を聞き出したことになるわ)


 〈厄災〉(異世界種)とは、ごく簡単な伝達なら身振り手振りでなんとかなる。「おいで」とか、「ごはんだよ」程度の内容だが。


 しかし、個人の名前をジェスチャだけで伝えるのは無理だろう。いくらなんでも。


「ねぇメリル様、異国のお話を聞かせて」


 こちらの動揺に気づかず、少女のように無邪気な笑みのカーミラ。そう、無垢な少女のように……。


「わ、私、陽射しがダメなんですぅ。だから、えっと、異国の話はできないのですぅ」


 上擦った声で答えるメリルに、カーミラは「まあ!」と目を丸くし、白い指先を口許に当てた。陽射しに当たれない人間がいるなど、聞いたこともないといった風。灰色の瞳をまん丸にして、ハッと気がついたように、


「ごめんなさい」


 シュンと肩を落とした。その様子は痛々しく悲しげで、剥き出しの感情に中てられたメリルは慌ててフォローした。


「い、いえ! そんな! 気にしないで……ほら! 輝石窓は外の光を通さないから全然平気なのでぇ」


 大丈夫、とメリルがパタパタと手を振る。


(なんだろう……何か……)


 リディアは違和感を強く感じていた。でも、その正体がわからない。 


「本当? 嬉しい!」


 一方のカーミラはキラキラと嬉しそうな笑み。感情の起伏がはっきり出るタイプのようだ。でも、違和感の正体はこれではない、とリディアは思った。


「どうぞ」


 そこへ年嵩のメイドがやってきて、リディアたちの前に紅茶のカップを置いた。


 カップは、飲み口が大きく広がったピオニーシェイプ。外側はミントグリーンに金のラインが入ったシンプルなデザインだが、内側には一面に薄紅色の薔薇が繊細なタッチで描かれている。


「これ……!」


 ウィルが思わず声をあげた。


「『ベルローズ』だ! ほ、本物だ」


 碧玉の瞳を見開いて、薔薇を凝視するウィル。


 『ベルローズ』とは、王室だけのために考案されたティーカップの絵柄である。その名の通り、花の真ん中がややくびれた(ベル)のようなシルエットの薔薇は、王室のシンボルでもあり、文字通り、王族以外は使ってはならない品だ。


「フフッ。ウィル様はよくご存知ですわね」


 微笑むカーミラは、上品な手つきでカップのハンドルを持った。そして、何気なしに……


誰と(ヌグハゴ)話したの(イヤギヘッソヨ)?」


 膝の上でごろごろする〈厄災〉(異世界種)に話しかけた。


「マ、マーマ、ママーマ(ヘレネとジーンって言う茶髪の男だよ)」


「ヘレネ様とジーン様?」


 〈厄災〉(異世界種)の言葉を理解して、喋っている?!



 驚くリディアたちの前で、カーミラはぱあっと顔を輝かせた。キラキラした灰色の眼差しは、銀髪の怪しい男の娘と化しているヘリオス(ヘレネ)に向けられている。


「やっぱり! ヘレネ様というお名前で綺麗な銀色のお髪……。それに、この子たちと話せるなんて一人しかいないわ。聖女ヘレネ様!」


「?!」


「私、『創世神話』が大好きですの! 〈聖女ヘレネ様〉は傷つき病に苦しむ者を種族を問わず憐れみなさる――癒しの奇跡を施されるお方。ああっ! なんて素敵なのかしら!」


 素早く、優雅な仕草でソファから立ちあがったカーミラは、ヘリオスの前に膝をつくと、感極まった様子で彼女(♂)の手を自らの両手で包みこんだ。


(やっぱり、何か引っかかるんだけど……)


 この違和感は何なのだろう。強く感じるのに、その正体がわからない……。

〈厄災〉独自の言語をとりあえず既存の言語(韓国語)で代用しております。オリジナル言語を作るべきだったのですが、その余裕がなく☆⌒(_;´꒳`;):_

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