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翼の勇者  作者: た~にゃん
第三部 森の王女 厄災の女神
59/105

Chapter01-2 聖女様を生け贄に

ウィル視点となります。

「ジーンさん! アレ、いいのかよ!」


 クマに囲まれたリディアを指さして、ウィルはジーンに訴えた。


(あー! もう! メリルちゃんにもたかってるし! ぐぬぬぬ……!)


 あのクマは女好きだ。それが証拠に、言葉が通じるジーンにもヘリオスにも寄りつかず、女の子たちに群がっている。わかりやす過ぎだ。

 なのに、メリルもリディアも「懐かれている」としか思っていないのか、ヤツらに触らせ放題だ。頭ナデナデしてるし!


「ジーンさん!」


 なんとかしてよと訴えるも、彼はキョトンとした顔。おかしいだろ! と、ウィルは眉をつりあげた。


(……前から思ってたけど。ジーンさん、リディアちゃんに関心なさすぎじゃね?)


 男なら、可愛い女の子には興味が尽きないはずだ。その子が女好きなクマに触られ放題ってダメだろ。ダメだよな?!


 ……あくまでも、ウィル個人の考え方である。


「ウィル、リディアも彼らの言葉はわかるみたいなんだ。だから」


 いいんじゃないかな、とジーンが言う前に。


「もぉー! ジーンさんはわかってないよ。アレはそう見えるだけ!」


 ズバビシィ、とリディアを指さすウィル。


「リディアちゃんもメリルちゃんも優しいから! ()()()あげてるの!」


 独自の理論を展開するウィル。ポカンとするジーン(勇者)ヘリオス(当代『聖女』)を前に、彼は続ける。


「それに! このままじゃ話が進まないじゃん? リディアちゃんはクマの言うことがなんとなくわかるかもしんないけど、クマはリディアちゃんの言葉がわかんないでしょ!」


 ……確かに、〈厄災〉(異世界種)リディア(人間)の言葉を解さない。会話にはならないのだ。


「……まあ、それはそうだね」


 苦笑しつつ肯いたヘリオスに、ウィルはふと思いついた。


(そうだ! ヘリオスなら)


 ジーンはダメだ。この朴念仁。ウィルは訴えかける眼差しを、ヘリオスに向けた。


「だろ? でもさ」


 思いついた『提案』を熱く語りながら、ウィルは内心でニタァと人の悪い笑みを浮かべた。




♤♤♤




「マーマ!(女神様!)」


「ママーマ!(ちがう! 聖女様、だ!)」


 ……数分後。


 ぬいぐるみもどきの〈厄災〉(異世界種)たちは、突然現れた神々しい銀髪の美少女に殺到していた。


「うわぁ」


 美少女の中身はヘリオス。ウィルの口車に乗せられ、【擬態】魔法で美少女になった途端こうなった。


「予想以上過ぎて引く……」


 食いつきの凄まじさに、ウィルは顔を引き攣らせた。


 なにせ〈厄災〉(異世界種)たちは、美少女(ヘリオス)(♂)にくっついてクンクンと匂いを嗅いだり、服を引っぱったり、頬ずりをしたり……まるでセクハラの見本市。


「…………」


 さすがのジーンも言葉を失っている。すかさずウィルは畳み掛けた。


「ジーンさん、ほら! リディアちゃんがああなるのは良くないだろ!」


「あ、ああ……」


 呆然と答えるジーン。


 念のため言うが、ヘリオスはさっきまで『男性』だった――つまり、着ている服も男ものである。具体的には、土木作業員風チュニックとズボン(※古着)。チュニックにはデカデカと『安全第一』の染め抜き……聖女には絶対に見えない。身体がひとまわり小さくなったことも相まって、怪しさと犯罪臭漂う男の娘である。


(アレでいいんだ……)


 こっそりそんな感想を抱いたジーンである。


「ちょ、乗るのはダメッ! うぎゃ~~~!?」


 かわいそうに生贄にされた美少女(ヘリオス)は、対話どころか〈厄災〉の群れに今にも飲まれようとしている。


 ……いいのかほっといて。


「リディアちゃん、守る! わかった?」


「わ、わかった……」


「そんなことより助けてよぉ!」


 〈厄災〉の毛玉に埋もれかけた美少女(ヘリオス)が、悲痛な叫び声をあげた。

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