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7話 直属の上司であるプロデューサ

 音響会場のビルに着いたのは14時50分頃。

 アフレコというのは聞き覚えがある人も多く、何をするかわかる人もいると思うが、ダビングは聞いてもピンと来ないとだろうが、簡単に言えば音付けである。アニメーションは絵の素材と音の素材で出来ている。この音の素材には声優のセリフも含まれていて、アニメから聞こえる音声素材全てが該当するのだ。声優によるキャラのセリフはアフレコで付けて、それ以外の効果音や劇伴などをダビングで付けると言った具合に分かれている。

 俺はいつも通り地下1階のスタジオまで降りる。作品によって音響会場は様々なのだが、作品に対して会場の数は比例していないので、場合によっては違う作品と被る場合もあったりする。

 そして俺は、この日「ボクキミ」のアフレコ収録が被っている事を知らなかった。


 ダビングが始まっても、正直制作進行のする事はほとんどない。事前に渡したムービー素材に対して音響スタッフの方が音を既に付けてくれているので、監督や演出はそれに対して修正や意見を加えていく。時折、音に対して絵の素材を修正する場合が出てくるのでその時にメモを取るくらいしかやることはない。

「じゃあ15分休憩挟んでからBパートに入ります」

 Aパートのダビングが終わって音響進行の一言で休憩に入る。ダビングの時にいるスタッフは大まかに言えば、監督、音響監督、演出、効果音、音響進行、プロデューサと制作進行が主である。場合によっては製作委員会側の人が来ていたりもする。

 因みに「白黒つける」のプロデューサである夏目(なつめ)さんって人なのだが……今日はまだ姿を見ていない。

「いやいや最終話でプロデューサ不在はヤバいって……」

「お疲れ様です」

 なんて独り言を呟いていた時に、決して声は大きくないけど妙に凄みのある声が部屋に響いた。声の主は噂のプロデューサの夏目さんだ。

「お疲れ様です」

 そのまま流れで俺の隣りに座ったので、そのまま挨拶をする。

「お疲れ様です。最終話はまだ順調そうですね」

「えっ……そうですか?」

線撮(せんさつ)の状態でも見ればわかりますよ、その話数の進み具合とクオリティはある程度」

 線撮とは文字通り色のついていない線画の素材で取られたムービーである。たまに意図的に線撮を作品に組み込む場合もあるが、基本的には決して世に出ることのないムービーである。なぜそんな価値のない物をわざわざ用意するのかと言うと、アフレコとダビングのためである。色付きの素材が間に合わないので線画の素材で無理やりセリフを当ててもらったり、効果音をつけてもらう必要があるのだ。

 これは制作会社の制作遅れが問題なので、音響スタッフには毎回本当に申し訳なくなる……そして何より問題なのが、この現状が当たり前過ぎて罪悪感すら抱かなくなっている事だ。

「……でも1カットも色付いてないです」

「その点は私に責任があります。仮に私が回してもこのスケジュールで色を付けるのは無理ですよ」

 入社当時から俺は夏目さんの班でお世話になっている。当時から会社にいることが余り無い人だったので、最初は仕事しているのか本気で疑っていた。

「さっきの撮影の件含め、11話でも色々動いてくれて助かってます」

「いえ、撮影さんからの要望を共有しただけです」

「要望を引き出したの間違いじゃないですか? 西賀君はもう少し自分の力を理解した方がいいですね」

「自分の力ですか?」

 なんだろう、対して仕事もできないのにでしゃばるな的な話だろうか……

「はい、普通は撮影(さつえい)監督(かんとく)と言う責任ある役職の人は一進行に要望は伝えないですよ。プロデューサかデスクに直接言うか、少なくとも伝言を託して判断を仰ぐ様にするはずです」

 まあ確かに、俺が逆の立場ならそうするかも。

「でも滝本さんは君に要望を伝えた。西賀君なら自分の要望を通してくれると思ったのでしょう。それだけ信頼されているという事ですよ」

「俺は自分に出来る仕事をしただけです……」

「まあ、今はそれでいいです」

 多分褒められているのだろうけど、マジで褒められるような事をしたつもりがないから素直に喜べないな。普段は夏目さんとこんな感じで話したことないから、少し戸惑ってすらいる。

 夏目さんは偶にいる、仕事していないように見えて実は裏でめちゃめちゃ動いているタイプの人だ。いつも余裕のないスケジュールの作品を会社から押し付けられては、確実に納品まで導いている。しかもクオリティも落とさずに。上司として、これ以上の人は中々いないと思う。後は俺がこの人にどう答えていくかと恩を返していくかだ。

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