20.冒険者パーティー再始動~前半追放サイド~
かつて魔王軍幹部らが拠点にしていたとされる洞穴、魔王軍は壊滅したがそこに勇者セルファシアが探している物があるという。しかし勇者が何を探しているのか、それを誰にも開示しようとはしなかった。
「魔物が接近中だから頼めるかな?」
「分かりました。ほらほらフォラリフェ行ってきなさい!」
シセレッサは魔力で覆われた糸を取り出してフォラリフェに繋げる。するとフォラリフェはシセレッサに思いのままに身体を操られることになるのだった。
「あはははは、これおもちゃみたいで面白い! それじゃあ魔法も使ってみて」
「ダ……ブル……ファイア」
「ギュワあああああ」
魔物はフォラリフェの魔法により焼かれることになる。シセレッサはフォラリフェを操って魔法を発動することも可能になったのであった。
「いやあ、凄い、凄い、すっかり人形として機能してるわね」
シセレッサは意識が朦朧としているフォラリフェの頭を撫でる。その際に手から魔力を頭に流し込んでいる。
「くふふふ錯乱の魔力……既に錯乱している相手にはそれが持続する効果があったなんて中々面白い発見ね……意識を取り戻すことなんてさせないわよ……なんでこんな狂っちゃったのか知らないけど、もっともっと私のために役に立ってもらうわ」
「う……う……うううう」
「ねえ? フォラリフェきゅ~ん」
セルファシアが離れたところで魔物を狩るシセレッサは意識が朦朧としているフォラリフェに顔を近づけながら、怪しい表情でフォラリフェを睨みつけるのだった。
「……ふう、少し熱くなり過ぎてしまったかもしれません」
「落ち着いてくださいセレネティリア様、トップに立つお方がああも熱くなってしまっては崩壊を招きますよ」
「すいません……ホルテラさん。やはりあなたは頼りになりますね。その他の皆様も申し訳ありませんでした。一先ず、こちらで今後の方針を決めたいので皆さまは引き続き待機室で休んでいてくれませんか」
「分かりました」
こうして僕たちは再び待機室で休むことになったのであった。
しかし女王様に褒められているあたり、精霊達の間での立ち位置は、ホルテラ様もかなり高いほうではないのだろうか。
流石伝説の勇者の元契約精霊だったことはありそうだな。あ、でも今や伝説の勇者セルファシアさんの人物像もだいぶ崩れたと言えるが……。
そういえばホルテラ様と契約してないのに精霊都市に入れたセルファシアさんは誰と精霊契約をしていたのだろうか。その精霊はひずみの影響は受けていない? まあ張本人だから何らかの対策は施してそうだが。
「グラスさん本当に申し訳ありません……師匠が本当に勝手な事をしているばかりに……特に魔具の件なんて弟子の私が擁護しようもない酷い自分本位な理由でした」
「いえいえ、もう慣れましたよ。セルファシアさんの人物像は大体掴めてきました」
「彼は昔からろくでなしな奴でしたからね」
ホルテラ様が愚痴をこぼす。
「昔からセルファシアさんはあんな感じだったんですか」
「私はちょっと分かりません。私の前では師匠は昔から好意的に接してくれましたので、あまり師匠が他人と関わっているところは見たことがありませんの。ホルテラ様の方が詳しいと思いますわ」
「そうですね。実を言うとセルファシアは昔もっと普通の性格をしていました。いつからか荒々しい性格になってしまったのは、恐らくは勇者魔力を手に入れた時くらいでしょうか」
「勇者の魔力ってそれはホルテラ様が制御能力でコントロールしてたっていう、あの荒々しい魔力の事ですか」
実のところ勇者の魔力については色々と魔術学園で研究をしてたこともあり、非常に関心がある。というかそんなに昔からホルテラ様はセルファシアさんと契約をしていたのか。
「そうなんですよ、セルファシアの力は勇者の魔力が宿った時に発現したんです。何故宿ったのかは正直に言って私も分かりません。ある日まだ彼が小さかった頃突然魔力は宿り力が覚醒したんです。それからというもの性格も変わってしまいまして……」
僕に力が宿ったのと同様にセルファシアさんにも突然力が宿ったんだな。
「とにかく性格は直しようがないですもんね。色々馴れていくしかなさそうです」
「気を使って下さり申し訳ありません」
「いえいえ」
こうして一先ず精霊都市でのセルファシアさんとの一連の騒動は一旦完了する形となった。
「ご主人様! これからどうするんですか」
「そうだな、追放されたとは言え、やっぱりみんなは勇者パーティー補助班なわけだから、引き続き皆についていくとするよ。セルファシアさんにももう一度会って色々聞きたい事とかあるし」
「良かったです! ここで退避するという話になったら私も補助班を抜けたいと思っていました。というかもうご主人様がおられるので補助班は抜けようかななんて思ってたりもします」
「おいおい、レピティ、それはずるいぞ! 私も抜けさせろ」
「ちょっと! お前らそれは勝手すぎるだろ!」
「いいじゃありませんか、補助班なんて私が自分の意志で作った形だけのものなんですよ。それに目的は変わらず師匠の元へ行くことですよね。補助班という形をとっていたのが本来のグラスさんのパーティーに変わっただけの話」
「そんな軽い感じで大丈夫なんですか」
「ええ、何なら私が今から補助班を解体して、グラスさんがリーダーを取る形でもいいんですよ」
「いやいやいや、それだとなんか公式の枠外になって、申し訳ない感じになるので止めておきます……」
「それじゃあ引き続き補助班という体を装いましょうか」
こうして僕達は補助班という形を取りながら、本来である僕の冒険者パーティーにゼーネシアさんを加えた形で行動することになったのであった。
「みなさん女王の準備が整いました。またお呼びです」
扉が開き使いの者から準備完了の連絡が届く。
「じゃあ行きますか」
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