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8.追放された 追放2週目  

「……」


 それから少し時間が経過、完全に勇者パーティー内での立場を失った僕かなり控えめな状態に現在なっている。


「ちょっとメガネ? この荷物もってよ」


「は? なんで僕が」


「あ?」


「は、はい……」


あれからシセレッサは僕が能力を使えないことをいい事に、ぐいぐいと上から目線で物を頼んできた。


「セルファシア様、感知致しました。前方数Km先に魔物を発見、如何されますか?」


「ああ、よくやった、討伐をしてくれ」


「かしこまりました! おい行くぞお前ら」


 いや、行くぞって言われても僕はいま能力を使えないんだが。


 しかしすっかりフォラリフェの立場がデカくなった気がする。こいつは色々と立ち回りがうまいのかセルファシアさんにかなり気に入られ始めている。シセレッサも僕への態度とは反対にフォラリフェにはあまり感情をみせない。


 見えないところで僕にものを言っている感じかなり陰湿な奴だと言える。


「おい、お前も来るんだよ脳無しメガネ」


 脳無しメガネって、散々な言われようである。でも今の僕にはシセレッサに逆らう力はなかったのであった。





「さあて、お出ましか、ええと廃べヒーモス、ランクはS中盤ってところか」


  ロストクエイクに出現する魔物は基本的に超強力な魔物で、普通の冒険者は寄り付かない。エイマさんもこの場所の依頼はギルドには危険だからと掲載しなかったくらいだ。例外として魔王軍の時は緊急事態だったので難易度関係なく掲載されていたと言える。


「くそっ、能力さえ使えれば……魔王軍幹部程の相手じゃないはずなのに」


「何ぼやいてんだよ脳無しメガネ、お前は囮だ」


「痛ってええ!」


「僕はシセレッサに蹴られて魔物の前に吹っ飛ばされた」


「お、いい事考えるねシセレッサ! あいつの使い道は囮が一番かもな。ヒャハハハハハハ」


「フフフ……私天才かも……」


 魔物に睨まれる僕を嘲笑うシセレッサとフォラリフェ、しかしフォラリフェの奴笑い方がレジンの奴そっくりだ、嫌な予感はしたが、やっぱり碌な性格してないな。


 それにシセレッサの奴、アイツも相当性格が悪い。レネの奴はまだ王女様としての真面目さやひたむきさがあったが、こいつに至ってはそんなものは微塵もなく、ただ陰湿でただ僕を見下して嫌がらせをしてくる、全く好感度を感じられない。


「さ、最悪だ……こんな状況早く抜け出したい!」


 魔王を倒してギルドの皆に慕われていい気分になっていた僕に、久しく惨めな地ベタを這いずり回る気分が襲う。久しく思い出すこの感覚、そう能力がなければ、僕はただ一般人、いやそれにも劣る底辺なのではないだろうか。


「仕方ない、こうなってしまった以上やるしかない」


 僕は腹をくくって目の前の廃ベヒーモスに対面する。普段ならどうってこともないのだろうが、能力が使えないどうあがいても勝てない、ならばうまい具合にフォラリフェ達の元へ誘導するのが得策だろうか。


「ぎゅわあああああああ」


「ドドドドドドドドド」


「へ?」


 次の瞬間廃ベヒーモスが凄まじい気迫で衝撃派を放ち、それが僕のそばに素通りする。その後睨みつけてくる廃ベヒーモスの威圧感と能力が使えないことが合わさり僕は完全な恐怖心に襲われた。


「ひ、ひえ、こっちに来るな!」


 魔物に睨まれて久しく忘れていた弱者の恐怖を感じる僕、気が付けばそう声を漏らし、その場から逃げようとしていた。


「ちっくだらねえな、呆れを通り越して言葉も出ねえよ、おいシセレッサ後はお前が倒しとけよ。俺はセルファシアさんの元へ戻る」


「……分かった」


 立ち去るフォラリフェをみて、もう一度僕の方をみるシセレッサは、自分が好きな様にしていいのかと気づいたのか、凶悪な笑みを浮かべてこっちを見るのであった。



「おいメガネ! 逃げんな」


 逃げた先にいたシセレッサに僕は蹴られて、魔物の元に押し返される。


「ぐ、ぐああああああ……へ?」


 蹴られた箇所の痛みを抑えながら落ち着いたころ、僕は目の前を見ると、そこには廃ベヒーモスが顔を近づけて僕を哀れんだような目で見て凶悪な牙を持った口でにやけていたのであった。


「や、やめて……」


「アヒャヒャヒャヒャ! 早く逃げないと食べられちゃうよー?」


 こんな、こんな思いなんで僕がしなくちゃいけないんだ。レピティ、エルカ……ギルドのみんなに会いたい。こんな場所嫌だ。嫌だ。嫌だ。


 僕はこの時これまで以上にレピティやエルカを始めとしたギルドのみんなの暖かさを欲して、その大切さに気付いたのであった。


「嫌だ………」


 それから僕は目の前の魔物の圧にやられて意識を失った。



「ハッ!」


 目を覚ますと、目の前には焚火があった。すっかり日も暮れている。


「目を覚ましたようだな」


「……ええ?」


 目の前にいたのはセルファシアさんであった。


 少し離れた場所にフォラリフェとシセレッサが立っていて、僕を軽蔑した目で見てくる。


 立っているセルファシアさんは倒れている僕を見下ろしながら話し出す。


「グラスといったか。この際だから私たちの中間目的地を話しておこうと思う。私達が向かうのは精霊都ファイフォビスだ」


「なんで……今になって……そんなこと」


 僕は意識が朦朧としている中で、そう呟く。


「簡単なことだよ、私は君を勇者パーティーから不要だと判断した。明らかに君は足手まといだ。これから私達はこの場を離れるが君の事を放っておく。ロストクエイクにいる強力な魔物に君はやられることだろうな。ほかの補助班が来る頃には君の身体は跡形も残らないだろう」


「ふざけ……」


「悪く思わないでくれよ、君は勇者パーティーに所属するという意味を吐き違えていたんだ。そんな甘いものじゃない。実力が達してい無ければそれは破滅を意味する」


「まって……」


「皆には君の事は不運な事故に遭ったと伝えておくよ。その方がみんなも納得がいくだろう」


「ちょっと……まって……」


 こいつまたしても僕の意見を無視して勝手に議論を進めやがる……。


「ああ、君の名前は確か……なんだったっけ?」


 僕の名前まで忘れて、眼中もないってか。


「そうグラスっていったっけ? 君を勇者パーティーから追放する」


「う、嘘だろ、またかよ」


 僕は勇者セルファシアさん、いやセルファシアの言葉を聞くと再び意識を失い、ロストクエイクの広大な大地の中一人取り残されるのであった。




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