1.追放の予兆
「グラスっていったっけ? 君を勇者パーティーから追放する」
「う、嘘だろ、またかよ」
魔王が消滅しハイフレードとの戦いから3年が経過した。
魔王を倒し英雄になったはずの僕だが、何故か今勇者から追放を言い渡されている。いつ以来だこんなことは、最初にレネ達に追放されたあの時の事を思い出す。あの絶望が再び再来した。
「まあ、今となってはあの時の追放なんて生易しく微笑ましい話でしかないけどな」
今僕を追放した勇者の名前はセルファシア、そうあの言い伝えの勇者だ。そもそも勇者セルファシアは僕が追放されたときから数十年前に魔王と共に滅びたはずである。ではなんで今勇者がいるのかって、それは現在から少し前の出来事である。
「ご主人様、流石です今日もクエストを完璧にこなせましたね」
「おおう、当たり前だろ」
ハイフレードとの戦いから2年、魔王軍は消滅してこの世界に平和が訪れた。
そんな中僕はギルド《オルトレール》で平穏な日々を送っていた。
「グラスう、今日も早速報酬を使って買い物に行くぞ」
「分かってるよエルカ」
僕たちは商業街の街へ訪れて買い物を始めていた。そんな時に異変は起きた。
「今日は何を買いますかね」
「そうだな、回復アイテムとか揃えたいところだな」
「おい、あれはなんだ」
「うん?」
僕はエルカが指をさした方向を向く、周囲の街の住民も一斉に上空を見上げていて、ただ事ではなさそうだ。そして見た先には強烈な閃光が高速で落下していったのである。
その閃光は僕たちのギルドのある方向へと落下していった。
「これは……ただ事ではないのではないか、行くよ2人とも」
とっさに事態の深刻さを把握した僕は、一目散にレピティとエルカと共にギルドへ向かうのだった。
「特に異変はないようですね」
「そうだね」
ギルドに戻ったものの特に異変は見られなかった。さっきの閃光はいったい何だったんだろうか。
「グラス君!」
するとギルドの中からセイラさんが慌てて出てきた。何やらただ事ではない様子だが。
「どうかしたんですか」
「いや大変なことになったみたいで、おかしな人がうちのギルドに訪れてきたの! それでギルドに依頼を持ちかけてきたんだけど、意味が分からないのよ」
「え?」
「とにかく早く中に入ってきて」
「分かりま……ちょっ」
僕はセイラさんに手を繋がれ、ギルドの中に引き入れられた。レピティとエルカがそっちのけの状態で困惑しているあたり申し訳ない気持ちである。
ギルドの中に入るも、特にいつも通りの情景であった。セイラさん曰く何やらその怪しい人物は執務室でエイマさんと話しているそうだ。
そして僕はセイラさんに連れられて執務室に入ることになった。
「エイマ連れてきたわよ」
「おう、よく来たなグラス」
「え、ええ、まあ」
「君がグラスか、あえて光栄」
金髪で美形のその男は突如僕の方をふり向いて、まるで僕の事を知っているかのような態度で話しかけてきた。
「ええと、この方はどういった方なのですかエイマさん」
「うむ、それはな……」
エイマさんが困惑しているかのように言葉に詰まっていると、男が先行して話し出す。
「私は勇者だ。勇者セルファシア、こういえば分かるかな?」
「は?」
僕の思考は停止した。
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