10.レーラ家の金策 後半
翌日僕達はシステラが待っているという目的地を訪れた。
「貴様らか」
「久しぶりだな」
「あまり、気安く話しかけるな。私と貴様は因縁の相手ではないのか」
「そう言えばそうだったな。そしたら今回は協力はせずに単騎で行動することにしよう」
「ふん」
システラと僕は会うや否や不穏な空気が漂うのであった。
「な、なあレピティ、この空気感で依頼をこなすのは中々居心地が悪いもんだぞ」
「そうですね……しかしながらご主人様とシステラさんは因縁の仲ですからね。一緒に仲良くというのも無理なものですよ」
「たっくレネの奴とはなんだかんだうまく言っているみたいだけど、それが異常事態なだけだったんだな」
「それはまあ、仲直りというのは難しいものですからね」
「何喋ってんだ2人とも!」
「いえ、何にも!」
僕はこそこそ二人で話しているレピティとエルカを少しだけ強い口調で詰める。
「はあ……じゃあ、僕達は先に行ってるから、お前もあとから好きにするんだなシステラ」
「……ふん」
「行くよ2人とも」
「了解です!」
「分かった」
レピティとエルカは居心地が悪そうな雰囲気を感じつつも僕と一緒に来てくれるのであった。
金鉱石があるとされている拠点に向かった僕は、現場の悲惨の状況を目の当たりにする。
鉱石は既に掘りつくされていて、採掘ができる状況ではなかった。
「やっぱりこれは直接魔物の巣にある鉱石を探すしか方法はなさそうだね」
「そうだね」
僕達は金鉱石を持ち去った魔物の巣を探すことになった。
「エルカ感知頼めるか?」
「分かった」
やはり索敵とは言えば聖女の感知力を持つエルカの出番である。
「グラス、見つかったぞ。ここを真っすぐ言ったところに洞窟がある。その中から金鉱石の反応があったぞ」
「よくやった、早速向かおう!」
洞窟に行くと入口にシステラがいた。
「よくここが分かったな」
「いや、お前最初から場所が分かってるなら教えてくれよ」
「誰がお前等なんかに、この金鉱石は私の手柄だ」
そう言うとシステラは先に洞窟へ突っ込んでいくのだった。
「なんなんだあいつは、随分と感じ悪いんだが」
「またこの展開か……」
エルカはあたまを抱えた。
洞窟の先へ進むと驚くことにそこにはたくさんの金鉱石があった。
「なんだ、こんなところに金鉱石がたくさんあるじゃないか。結構簡単にクエストクリアって感じ……」
金鉱石を見つけてこれで終わり方思っていた僕であるが、ふとシステラの方を向くと緊張感を見せていることに気づいた。
「おい、どうしてそんなに顔が強張ってるんだよシステラ」
「馬鹿が、そんなに簡単に手に入っていたら私がとっくにクエストクリアしているわ」
「……っ!」
「グゥうゥゥゥゥ」
その時洞窟の奥から小型のクマのような魔物が現れた。
「凄く弱そうな魔物が出てきたけど」
「馬鹿言うなよ、そいつはここら辺の主、軽くS級の強さはあるぞ」
S級って全然そんな強そうに見えないけど……。
「とにかく今度こそ私がこいつを倒させてもらう!」
システラが魔物に突っ込む。
「うわあああああ」
しかし魔物の俊敏で鋭い一撃で一瞬でやられてしまうのだった。
「おいおい、大丈夫かよお前」
「くっ、やっぱり我がレーラ家はもうお終いなのか。このままでは金策が……」
「いやいや僕に任せてくれよ」
そう言うと僕は雲の クマの魔物に向かって出力を放った。
「ぎゅわああああ」
クマの魔物は倒れるのだった。
「なっ……」
「これで金鉱石の依頼は達成だな」
僕はレピティとエルカと顔を合わせて依頼達成を称え合うのだった。
「ふん、相変わらず滅茶苦茶な奴だなお前は」
「どうも、そちらも相変わらずな口調な事で」
金策を終えた僕はレーラ家の屋敷で主であるエレテドと執事、そしてシステラと今話している。
「システラ、グラスさんのお陰で金策が出来たのにその口の利き方は何ですか」
「……ふん」
「お、おう……」
システラが僕にお礼を言うなんて考えられないから予想通りの反応である。
「グラスさん今回は本当にありがとうございました。レーラ家一同あなた様に多大な感謝を示します」
「それはありがたいです!」
それから僕はレーラ家を去ることになった。
今回の依頼主はレネである。なので後日僕はレネの元へ訪れて報酬を受け取りに行った。
「グラスさん、あれから無事システラさんは冒険者に戻ってきてくれました。感謝しますよ。これはほんのお礼の報酬です」
「おっありがとうなレネお嬢様、今日も報酬が弾みますね」
「ハイエナみたいな目つきはやめてください! それはそうとシステラさんから伝言がありますわ」
「システラから!」
「お陰で冒険者活動への熱が戻った。ありがとう。ですって」
「ええええええ? それ本当にシステラの伝言なんですか?」
まさかのシステラからの伝言に僕はすさまじい衝撃を受けるのだった。
「そんな不思議な事ですか? まあいいです。また何か機会があればお会いしましょう。近い機会にあなたとはまた面倒ごとで一緒になる予感がするんです」
「いや、僕はあんまり遠慮したいけど」
「それはこっちのセリフなんですよ!」
城にレネの大声が響き渡るのだった。
今僕は冒険者としてのスローライフを手に入れている。我ながら理想の生活であるが、ある日そんな生活を揺るがす大きな出来事が起きるのだった。
日常回終わりです。次回から二部に入ります。更新ペースは二日に一話のペースの予定です。
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