9.レーラ家の金策 前半
「グラスさん、王国から依頼が来ていますよ」
「王国? レネの奴か、随分と珍しい事だな」
「レネはあれから度々と王国で手が回らない依頼を僕達に頼んでくることがある。王国の依頼という事もあり、報酬がいいからあまり気が乗らないけど結局僕は受けてしまうのだ」
「それじゃあ王国に行くか」
今僕は王国でレネと話している。
「ええ? システラの様子がおかしいって?」
「そうなんです。最近どうもシステラさんが任務の招集に集まらなくなりまして……どうやらレーラ家関連で何かあったようなのですが」
「そうなんだ……じゃあ、尋ねてみるとする」
システラと言ったら名門レーラ家の当主で、常日頃その事を高らかに宣言していたよな。かなり鬱々しい思いをさせられてきたけど、まさか僕がシステラの身内問題にまで関わる日が来るとはな。
「おいグラス、確かここら辺に商業街があったはずだが、ちょっと巡ってきていいか?」
「うん? 別に構わないけど」
そういえばエルカはここの第一王女だったな、何か思い出場所とかそういうのがあるんだろうか。
「ご主人様、私もエルカさんついていってもよろしいでしょうか。ちょっと心配になりまして」
「まあ、確かにあいつ一人だと僕も心配になるからな、よろしく頼むよ。僕は今回の件について話だけ聞いてくる」
「分かりました」
そんなことでエルカは故郷である王国巡りをして、その様子をレピティが補佐して、一方で僕はレネから承ったシステラの依頼をこなしていくことになるのだった。
「ごめんください」
「ええ、あなたはどちら様でしょうか」
レーラ家の豪邸を尋ねた僕、扉を叩くと現れたのは執事であった。
「レネ王女様から依頼を受けてきたグラスというものです。何やらシステラさんが最近おかしいだとか」
「王女様からの使いの方でしたか! これは失礼しました。早速中へ入ってください」
豪勢な装飾品が並ぶ部屋の中で椅子に座って待機するように言われた僕、しばらくするとレーラ家の主らしき人が現れた。
「始めましてグラス様、私の名前はレーラ家の主、エレテド・レーラと言います。早速なんですが、王女様の依頼の件なのですが私の方から説明させていただきます」
「お願いします」
「只今レーラ家は大規模な金策活動を余儀なくされています。数年前の戦いでの投資金が想像以上の赤字でその名門とあるまじき事態なのですが、このままでは自動的な没落を迎えてしまうことになるのでしょう」
「そう言う事なんですね」
「して、金策の要となるのが、この時期に付近の森に出現すると言われている金鉱石なのですが、これが中々現在入手が難航しています」
「なんでですか」
「周囲に厄介な魔物がいるんですよ。その魔物は凄まじい速さで金鉱石を持ち去ってわ、自身の拠点にため込んでいるようなのです。その魔物の拠点を発見することが出来れば、一気に問題は解決するのですが……」
「分かりました。そしたら、僕がその金鉱石を取りに行きましょう」
「本当にいいのですか?」
「大丈夫ですよ」
「申し訳ありません。場所を記した地図をここにお渡しします。それとシステラも同行するかもしれません」
「え? システラが」
「そうです、魔王を倒してからというもの、どうも調子が乗らないみたいなのでちょうどいい機会になるでしょう。彼女とは現地集合となります」
「そうなんですか分かりました」
まさか僕がシステラと共闘することになるかもしれないなんて驚きの事態である。
「それではお気お付けていってらっしゃいませ」
僕はレーラ家の主と執事に見送られて、豪邸を離れることになった。
「ご主人様ああああ!」
商業街に戻るとエルカとレピティが色んな商品を持って僕を迎えに来てくれた。
「どうしたんだ、そんなにたくさん商品を持って」
「エルカさんが、あれもこれもと次々にいろんな商品を取っていったんですよ」
「すまん、つい懐かしくなってしまってな……王国に来るのはそんなに機会も多くないからつい手が進んでしまったんだよ」
「いや別にいいけど、ちゃんとお金は自分で払ったんだろうな」
「勿論だよ……所持金は全部使ってしまったが」
「は? じゃあエルカは帰れないな」
「おい! 帰りの代金くらい私の分も払ってくれよ!」
「自業自得だろうが! と言いたいところだけど冗談だよ。故郷を懐かしむ気持ちには賛同できるからそれくらいしてやるよ」
「ほ、ほう、随分と意地の悪い奴だな」
「エルカさん、それでも私の注意を無視してたくさんのものをかったのですから、帰りの代金を払ってくれるご主人様に感謝しないとだめですよ」
「う、分かってるよ、ありがとうな」
「どういたしまして」
「それで依頼の方はどうなったんだ」
「ああ、金鉱石採取をすることになったんだけど、日時は明日かな。レネが貸してくれた、借家で一泊して明日向かう予定だけど二人も来るか?」
「勿論です!」
「当たり前だろ!」
「そうか、明日依頼ってことは本当にタイミングが良かったな」
「何かあったのか?」
「いや実は今日の夜は王国のお祭りがあるようなんだ。ほら、屋台とか花火とか色々あるらしい。どーしても参加したかったから言い訳を考えてたんだけどちょうどよかった」
「買い物の時もエルカさんそれのことずっと言ってましたもんね」
「そうかお祭りか……面白そうだな」
「グラスも行くのか?」
「うん、僕も参加しようと思う」
「じゃあ今日の夜はここで集合だ!」
夜になると今僕は、立ち並ぶ屋台を見ながら、随分人だかりが出来てきたなと思っている。
「ご主人様―お待たせしました」
「おいグラス! またせたな!」
「ええ! 2人ともいつの間にそんな姿になったのか」
レピティとエルカが浴衣姿になっていた。
「エルカさんは商業街でずっとお祭りの事を言っていましたからね」
「前もって準備をしていたのさ、やっぱりお祭りと言ったら浴衣だと思ってね」
「成程、いいものが見れた!」
僕が感想を言うと2人は嬉しそうに笑ってくれたのであった。
「そういえばエルカは代金はどうするの?」
「いやグラスに借りるつもりだが?」
「は?」
「バア―ン! パチパチパチ」
質問を僕がしたタイミングで、花火が丁度打ちあがった。
それから僕は仕方なくエルカに祭りの商品をおごってやったのだった。
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