7.誕生日会 前半
商業街にレピティと向かった僕、エルカは料理担当係であった。
「ええと、確か足りない調味料と食材は砂糖と小麦粉って言ってましたね」
「砂糖と小麦粉って一番重要な奴じゃないかよ」
思わず無計画すぎると突っ込みたくなったのであった。
「小麦粉と砂糖売り場はあちらのようですね」
色んな食品が売っている商業街であるが、その中から目的の物を探すのは中々大変である。
それだけによく商業街に訪れていて色々と場所を把握しているレピティの存在は僕にとってとても助かるものであった。
目的の品が売っている店を尋ねると、そこの店主が困っているようであった。
「どうかしたんですか」
「ああ、いや最近商品が品薄になってきてね。こっちも店を運営するのが大変なんだよ」
「それはとても大変なんですね」
「ああすまないね。私情を挟んでしまった。それで何を買いに来たんだい?」
「いえいえ、小麦粉と砂糖を買いたいのですが」
「小麦粉か……すまんね。今多分どこも品薄で売ってないと思うよ。砂糖は売っているから買っていくといいよ」
「ええ、そうなんですか。それは残念です。何か異常があったんですかね」
「いや、話によると小麦粉がとれる畑に魔物が出没したんだよ。情報が回ってくるのが遅くてまだ冒険者にも依頼できていないんだ」
「成程……分かりました。ありがとうございます」
それから僕はギルドに戻って一連の事をセイラさんに話した。
「えええ! 小麦粉が品薄だったの。それは困ったわね」
「あとどれくらい時間があるんですか」
「あと、半日ぐらい?」
「分かりました。そしたら僕が急いでその現地にいる魔物を倒してきますよ。多分現地の人からお礼で小麦粉が貰えたりするかも」
「ええ、本当に! ありがとうグラス君、そしたら出来る料理だけ済ませておこうかしら」
「お願いします」
こうして僕は小麦粉の現地へ魔物を倒しに行くことになった。
「ご主人様、着いたようですよ」
引き続きエルカは料理担当で、着いてきたのはレピティだけである。
僕たちのギルドから商業街までは徒歩数分の距離であるが、それくらいの距離を商業街から進んだ場所に小麦粉を生産している現地があった。
「アレみたいだね」
小麦粉の畑らしき場所が見えて、そこには小柄なイノシシのような魔物が数体いた。
「これは現地の人からしたらたまったものじゃありませんよね」
「そうだよなあ」
畑は魔物に荒らされていて、無惨な姿になっていた。
「一先ず現地の人に会いに行こう」
「分かりました」
「本当にこんな状況じゃ商売をやってられないよ」
僕が現地の人の建物を訪れると、畑の持ち主たちが集まって魔物の愚痴を言っていた。
「本当だよ。何とかならないものかね」
「どうかしたんですか」
僕はそんな現地の人たちの会話にしれっと混ざってみる。
「君は畑のあの惨状を見たかい。畑の作物はうちらの売り物だからね。こんなに荒らされたらうちらの生命線が絶たれてしまうんだよ。ギルドに依頼しようと思っているんだけど、冒険者が来るまでどうしたものか」
みんな口をそろえて、魔物が退治されるまでの時間どうするか頭を抱えているようだった。
「そしたら、僕達に任せてくれませんか」
「君達は一体何者なんだ?」
僕はレピティと顔を合わせると、自分達の自己紹介を始めた。
「僕達はギルドの冒険者です!」
「なんだって~」
「いや、スムーズ話が分かってもらえてよかったよ。これならギルドの皆との時間も間に合いそうだな」
「そうですね。それでは早速掃除を始めましょうか」
僕たちは現地人の人々に自己紹介すると、喜ばれて魔物退治を任されることになった。
「ざっと30匹くらいか」
畑を荒らしているイノシシの魔物は一か所に固まって、作物を食べあさっている。
作物を傷付けずに、如何に魔物だけを倒せるかが重要な要素となってきそうだ。
「どうしますかね。私が引き付けて畑から魔物を剥がして倒しましょうか」
うーん、別に畑から魔物を剥がさなくてもそのまま、作物を傷付けずに撃退するのは普通に出来そうだが、折角レピティも来てくれたことだし、2人で協力してクエストを進めてみたいものだ。
「それじゃあ、レピティが魔物を引き付けてくれ。僕は惹きつけてこっちへ来た魔物を一掃しようと思う」
「分かりました」
こうして魔物から畑を守るクエストが始まったのである。
「こっちですよー」
レピティが魔物を挑発する。手に果物を持って揺らし、魔物の関心を引いた。
「グヒグヒドヒ」
イノシシの魔物は見事にレピティの誘導につられて突進を仕掛けてきた。
「来ましたね! 急加速」
レピティと得意技急加速である。これでイノシシの魔物から追われても逃げることが出来る。逃げ足に自信があるからこそでレピティは囮を引き受けたと言えるな。
「さて来たか」
レピティが引き寄せた魔物はこちらへ接近してきた。これが今回の作戦の肝となっている。
「一直線にしか走れないっていうのも中々不憫なもんだね。行くよ!」
「了解です」
限界まで魔物を引き寄せるとレピティはジャンプした。その瞬間僕はその足元に会った地面を分析して、大穴になるように出力、魔物たちは瞬く間に大穴に落ちて戦闘不能になったのであった。
「よしっ、これで一先ず討伐完了っと」
「流石です! ご主人様」
「いやいや、レピティのタイミングの良さがあっての事だよ」
僕たちは互いのコンビネーションで魔物討伐が出来たことを称え合ったのであった。
「本当に、本当に助かりました冒険者様!」
それから僕たちは現地の人からお礼を言われた。
「これはほんの気持ち程度ですが、是非受け取ってください」
そう言って現地の人が渡してくれたのはなんと小麦粉だった。思わぬ収穫である。
「これ貰っていいんですか! 丁度欲しかったんで助かりますよ」
「いえいえ、またいつでもお越しください! このご恩は忘れませんので」
「分かりました!」
こうして僕たちはクエストを受注したことで結果的に買い物で手に入らなかった小麦粉を手に入れたのであった。
「早速ギルドに戻るか」
「了解ですご主人様」
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