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61.最強の技巧

「な、何を言っているんだ。俺こそハイフレードだ……」


 その時ハイフレードが言葉に詰まる。


「俺はハイフレード……いや違うお前は魔王だ!」


 ハイフレードの身体で激しい魔力が揺れ動いていく。


「うをおおおおおやめ、やめろハイフレード。俺を受け入れろ」


「ずさああああああ」


「……」


 ハイフレードが手を振り払うと、魔王の魔力が体の中のどこかへ消え去ったようだ。


「お前がいくら表に出ようとお前が生きている限り私はいつかお前の人格を乗っ取ってやるからな……」


「そしたらまた引き裂いでやるさ。まあその時が来るは分からないけどね」


 ハイフレードはそう言うと僕の方を向いて笑顔で微笑む。


「いやああ、よく気付いたねグラス君。僕が身を潜めていたの」


「当たり前じゃないっすか、だってあまりにも魔王様弱すぎですし」


「はははは、魔王が弱いだなんて凄いな君は、流石の僕も自分の身体がここまで無様にやられるのは黙っていられないからね」


 ハイフレードは少し下を向いて考え込む。どうやらハイフレードはわざと魔王に人格を乗っ取らせて自分の身体の主導権を渡していたようだった。


「もう少し観察していたかったんだけど、どうするか、僕は大大罪人としてもうこの世界にはいられない」


「いやいや、魔王に身体を乗っ取られていたと言えば何とかなりますよ」


「そうだね、確かに一考の余地はあるかもしれないけどそんなに甘い話でもなさそうなんだ。そもそも魔王は依然と僕の体の中にいるわけだしね。だから決めたんだけど……魔王として最後まで振る舞わせてもらうよ」


「それは非常に困るんですが……うわっ」


「やるねえ、この太刀筋を躱すか」


 憑依した魔王を振り払って戦闘終了かと思いきや、まだハイフレードは戦うつもりみたいだ。


「こうなったら仕方がない、本気で行きますよハイフレードさん!」


「そう来なくっちゃグラス君、前回の二の舞にはならないでくれよ」


 僕は王国追放の際にハイフレードさんに吹っ飛ばされた。思えばあの時以来のリベンジマッチである。


「あの時と今の自分の力は比べ物にならないのでそこはご了承くださいね」


「ふん、面白い」


 僕は早速ハイフレードさんが纏う魔法陣を分析しようとする。


「分析……なっ!」


 な、なんだこれは、ハイフレードさんの纏っている魔法陣が分析できない? 数値化できないのでは対策のしようが……仕方ない空気中の魔力を分析して外部からハイフレードさんへの数値化した魔法陣を攻撃干渉で出力しよう。


「はあああああ!」


「ドドドドドドドド」


 僕が起こした出力によりハイフレードさんに衝撃波が襲い掛かる。


「やったか……なっ?」


「早速来たか……いいね」


 何故だ? 確かに衝撃波はハイフレードさんに直撃したはずなのに、全く効いている様子がなく平然としている。そもそもなんでハイフレードさんの纏う魔法陣が分析して数値化できないんだ、こんなこと今までなかったのに。


「それじゃあグラス君、こっちも行くよ! シュッ!」


「うわっ」


 危ない間一髪で斬撃を躱せた。しかし攻撃が当たらなかったのか? 攻撃をくらった筈なのに、ハイフレードさんは何事もなかったように剣を振るってきている。


 周囲干渉系の出力でも魔王軍幹部を一発で倒せるくらいの攻撃なのに、ビクともしないって、やっぱりハイフレードさんはただものじゃない。


「よそ見をしてるのがバレバレだよ」


「ぐあああああああ」


 思考中の隙を付いて、ハイフレードさんの鞘による打撃が僕に直撃する。


「っ痛……これは困ったなあ、さっきの魔王の比じゃないぞ」


 同じ姿でも見かけ上の魔力は明らかにさっきの魔王の方が数段大きいものだった。魔王を軽く倒せそうだった僕にとって、今のハイフレードさんは恐れるに足りない存在な筈なのだ、なのにこちらが押されている。


 ただ明らかに魔王と戦っている時とは、戦闘技術が違う……これが王国最強の聖騎士ハイフレードの実力……やはり自分が追放された時に感じたあの、威圧感は本物であったと僕は今再認識した。


「こうじゃなきゃね……」


「おいおい、笑ってないでしっかりしてくれよグラス君、これは遊びじゃないんだよ。やってる感じ、王国を僕が追放した時と比べ、まだ君から何も成長を感じられてないけど……君に僕を葬ってもらわないと、世界を僕が壊すことになっちゃうよ」


 言ってくれる……追放された時の僕と今も同じわけがないだろう。あれからどんだけ色んな強い敵を倒してきたと思っているんだ。こういう無意識の煽り能力は相変わらずハイフレードさんは高いものだな。俄然やる気が出てきた。


「分かってますよそんなこと! 来いミルティ!」


「はいグラスさん!」


 ハイフレードさん自身の魔法陣が分析して数値化できず、更に周囲の魔力干渉攻撃でも歯が立たないなら、ミルティの精霊術こそ最適解だと瞬時に僕は察した。


「精霊術・滅だ」


「了解です」


 今回はハイフレードの魔法陣が分析できないため、以前分析したのヘルテラの数値をイメージしてミルティの手に集約した魔力へと出力する。記憶した魔法陣の数値のストックは自力ではできないがミルティが顕現した時のみ、精霊術として出力できるのだ。


「ハイフレードさん! この攻撃は本当に本気ですよ。これを受けたら身体は消滅するかもしれませんが、嫌だったら避けてくださいね」


「やれやれ、そんな心配する必要はないよグラス君、いいねこの魔力、僕も全身全霊で受けて立とうじゃないか」


「避けるつもりはないんですね……それじゃあ仕方がない、行くよミルティ最大出力だ」


「了解ですグラスさん!」


「来い!」


「はああああああああ」


 ハイフレードさんに放ったのは最大出力のミルティの精霊術、あの魔王の精霊ヘルテラも一発で倒した技だこれを受け切れるわけがないだろう。


 凄まじい閃光がミルティの手に集約された魔力から放たれ、辺り一帯には凄まじい空気の振動が起きた。


「ドドドドドドドドガガガーン!」

 

 閃光が直撃して凄まじい爆発と共に粉塵が周囲に巻き起こる。この威力なら確実にハイフレードさんを倒した筈……。


「やったか」


「シュッ」


 精霊術の爆発で巻き起こった煙が突如払われることになる。


「そんな! 馬鹿な」


 ハイフレードさんにはヘルテラを倒した精霊術も通用しないのか……。


「グラスさん! この方は危険です。今すぐ撤退をしましょう」


 ミルティがかつてない焦った表情で僕に撤退を促す。


「そんなことできるわけ……っ!」


「ホーリーレイ」


 その時ハイフレードさんの剣から放たれた光が一斉に僕目掛けて降り注いできた。


「ぶんせ……駄目だ早すぎて間に合わない!」


「ドドドドドドドドド!」


「ぐああああああああ」


「グラスさああああああああん」


「ドドドドドドドドドド」


 ハイフレードの放った光は完全にミルティと僕に直撃したのであった。


 馬鹿な速度が間に合わなくても、普段なら自動発動する神の分析も発動しない。これはどういう事なんだ。


「いやあ、グラス君駄目そうだよこれじゃあ、もう世界はお終いなのかもしれないね」


「嘘だろ、こんなこと今までは一度だって」


 いくら何でも強すぎるハイフレードさん。解魔石を使いこなすようになってからこんな苦戦したことは正直始めてだぞ。


「覚えているかい? 君が王国を追放された時、僕にこの技で吹っ飛ばされたよね。あれからどれだけ成長したか見せてくれよ。今度は本気だけどね」


 ハイフレードの剣に更に凄まじい光が宿る。この構えはあの時の……。


「これは……まずい」


「ホーリー・ライトニングオーバーレイ!」


 まずい、本当にこれは、あの時以上のハイフレードの剣閃、いくら分析してもハイフレードの攻撃の魔術構造が分析できないし、【神の分析】の自動発動効果も期待できそうにない。


 これは…詰んだのか……。


「うわあああああああああああああ」


「グラスさあああああああああん」


 辺りに巨大な爆風が巻き起こる。ミルティと僕の悲鳴と共に、シュレッタ王城の最上階は全て決壊することになった。








 煙が晴れた頃、僕は無事な一方でただそこにはハイフレードさんが膝をついて倒れていた。


「よくやったね。君の勝ちだグラス君」


「どういうことだ」






「面白かった、続きが読みたい!」


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