58.プロローグだった話1
「いいかいグラス君、君が鑑定システムで選抜冒険者に入る前から、俺は既に選抜冒険者数代分の魔力を手に入れて5割ほど記憶を復元できていた」
確かにハイフレードは俺が入った時から、王国で聖騎士長をやっていたな。
「懐かしいな、あれは君が入ってきた時の最初のダンジョンでのことだ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「馬鹿な! 僕の分析通りに敵の身体強化魔法の中の微小な魔法陣を数値化して、これをうまく形にすれば対抗魔法が出来るはずなのに」
選抜冒険者グラスの最初のダンジョンの敵は反逆者の魔導士セッタローであった。
「おいグラス、火炎魔法が飛んできてるけど躱せよ」
そうグラスに話しかけるのはレジン、表ではまだグラスの事を仲間の様に振る舞っていたが、鑑定レベルEという事で完全に内心見下している。
「分かってるって、でも身体が追いつかな……ぐああああああああ」
グラスに容赦ない火炎魔法が襲い掛かる。
「おいおい、大丈夫かよグラスの奴、仕方ない俺が隙を作るから後は頼んだぞシステラ」
「ああ」
「私もサポートします。身体強化魔法付与」
「すまんなレネ、後は任せておけ、はあああああああ」
「馬鹿が正面から来るとは、火炎魔法をくらえ! 何にいいいいい?」
魔導士セッタローに白の鎧を来た騎士システラが打撃を加える。
「ぐはあああああああああ」
システラの強力な打撃は魔導士セッタローの意識を奪った。
このように選抜冒険者は魔王軍襲来前は主に王国の離反者や外部の反逆者、そして協定違反を犯した者への執行を任務として取り扱っていた。
しかしグラスは全くお荷物の状態であった。
「くそっ、術析師として僕はこんな所で止まっていられないのに。頭では理解できていたんだ。あの火炎魔法は数値上ではうまく書き換えれば、もっと違うアプローチで攻略できた」
クエストの不満を流すグラスを他の選抜冒険者3人も見ている。
「けっまたあいつ一人で、ぶつぶつ呟いてるよ」
「気にするなレジン、そのうち消える奴の事だ、くれぐれも面倒だから表向きは良好に振る舞うんだぞ」
「ああ分かってるよ……うん? おいレネ、どこに行くんだ」
「ちょっと、グラスさんに話しかけてきます」
「ふーん、もの好きなこったな」
「くそっこの数値さえ、うまく表現できれば」
「数値がどうかしたんですか」
「君は、確かレネか、聞いてくれよ、僕はさっきのセッタローとの戦いで火炎魔法を友好的に対処する魔法陣を思いついたんだ」
「へえ、凄いですねそれはどんなんですか」
「それは……うまく説明できない」
「なんで説明できないんですか」
「それは頭では数値化できているんだけど、数値化してあるだけだからうまく言葉で表せられないんだ……。ごめん、やっぱ僕は何の役にも立たない奴なんだ」
「そんなことはありませんよ」
「へ?」
「頭の中で魔法陣を数値化、そんな話は聞いたことがありません、本当にそんなことが出来たんだとしたら、いつか凄いことが出来そうです。是非諦めず引き続き頑張ってください」
「あ、ありがとう! レネ、そんなこと言われたのは初めてだ! これからもよろしくな!」
「はい!」
レネはグラスに満面の笑顔を見せた。
「おっ戻ってきた、話は終わったのかレネ」
「ええ、まあ」
「それで? どんな事話したんだ」
「別に、ちょっと話を聞いて肯定してあげたら、直ぐに喜んじゃって、雑魚らしい反応でしたよ」
「キャハハハハハ、単純な奴、俺達がお前の事期待するわけねえってのになあシステラ」
「ふん、お前に話を振られたくないが、弱い奴にはとっとと消えて欲しいのには同意だな」
「君達」
「ハイフレードさん!」
「王様が呼んでいたよ、至急戻る様に」
「かしこまりました」
「やれやれこれは凄いことになってきたものだな」
ハイフレードは一連のやり取りを聞いて、状況の異常さに気づく。
魔法陣を数値化だって、そんなことが……しかもヘルテラの鑑定システムαが選抜冒険者に評価Eを出すか、これは決まりじゃないか。
冒険者グラス君に宿っているセルファシアと魔王混合の演算能力は鑑定システムαの機能を狂わす、だから彼の表記もEエラーを表記した。王国の住民全員には鑑定システムαと魔力がパスとして繋がるよう僕が細工したんだが、もしこのままグラス君が王国にとどまっていた場合、数値化の演算を行うたびに鑑定システムに不具合が生じて僕の復活計画が途絶えることになりそうだ。
もしこのまま王国に彼がとどまっていた場合、確実に僕の妨げになる。これは排除しないといけないな。
「面白かった、続きが読みたい!」
などなど思った方がいましたら下の☆☆☆☆☆から作品への応援をお願いします。
ブックマークも頂けたら幸いです。




