57.真相2
まさか一発でハイフレードの精霊へルテラを仕留めてしまうとは思わなかった。思わずミルティとハイタッチをしてしまったが、まあ精霊なので当然透き透って感触はなかった。
「さあて、次はハイフレードお前の番だ! 自分のお気に入りの精霊がやられた気分はどうだ」
「な、成程、思えば魔王軍幹部を倒してきたのは君だったな。どんな手品を使ったのかと思っていたが、あながちその実力は本物だったと言える」
ハイフレードが構えを見せる。王国を追放された時は痛い目にあわされたけど今回はそうはいかないぞ。
「1つ君の勘違いを指摘させてもらおうか、俺は当然なことに魔王に戻ったため人間だった頃のハイフレードとは次元の違う力を持っている」
「そりゃまあ、そうだろうけど」
「フフフ、分かってないな、確かに今の俺でも十分君を倒すのには足りえるんだが、俺は徹底的に相手を追い詰めるのが好きでね、切り札を最初から見せようと思うんだ」
そう言うとハイフレードは手から石を取り出す。
「なんだそれは」
僕が持っている解魔石にそっくりであるが。
「ほらアセルビデドのカミトとの戦いを覚えているかい? 僕が何故カミトを狙ったのか、その秘密がこの解魔石の中に隠されているんだよ」
やはり解魔石だったか。
「そもそも君のスキルである【神の分析】はこの俺とセルファシアの力の衝突によって生まれたスキルだ。一般人であるはずの君が何故そこまで強いスキルを手に入れることになったのか。それは俺とセルファシアの衝突で分散した力が偶然君に宿ったからだ。君の力は元々セルファシアの物だった、どうやら俺の力も合わさりそれ以上のものとなったようだが」
この力は魔王と勇者セルファシアの混合なのか。
「セルファシアの特異性はその出力能力にある。自分の頭にある魔法陣のイメージを瞬時に出力するというものだ。これによってあいつはあらゆる想像した魔力を具現化することが出来た。只魔法陣自体を頭の中で明確に具体的にイメージするのはアイツでも至難の業だったように思えたけどね。比べて俺の能力は演算能力、普通は頭の中でイメージしても曖昧な魔法陣を明確にすることが出来る。その方法は君もご存じの通り数値化、並外れた演算能力により数値化した魔法陣はより明瞭に頭の中で理解できるのさ。これによって俺の扱う魔法は全てが練度100%のものとなる。人間時代の俺が強かったのもこの能力のお陰だな。魔法は魔法陣の認識によってその精度が何倍にも変わるから、人間とは言え他の奴では歯が立たなかったろうな」
相変わらず魔王になってから言葉をまくしたててくるハイフレード、これは演算能力から来ている性質なのだろうか。確かに言われてみれば2つの特性が自分の能力に当てはまる。
「そしてセルファシアとは対極にある俺の能力の弱点、出力能力を補うために作りだしたのがこの解魔石だ。これの効果は君も知っての通り、イメージした魔法陣を出力することが出来る……どうやらその様子をゼーネシアが見ていたようで、密かに独自開発したのが君のその解魔石のようだ。ゼーネシアの持ってた魔具が原料となってるようだけど、アイツが持っていた魔具は解魔石とは逆の効果、弱点である魔法陣のイメージ把握を明瞭化するというもの、これによってセルファシアは出力能力を使って多彩な魔法が使えていたと言ったところかな。ゼ―ネシアにはこの出力の特異性がなかったわけだが、どうも君がその特異性を引き継いでいたようだね」
この解魔石はゼーネシアさんが作ったのか。
「そうそう君とは違って僕の持つ解魔石は複数ある。そして今僕が持っている解魔石はその中でも最上級の力を持つんだ。ここでカミトの話と繋がる。解魔石の原材料はスカイ・ドラゴンの魔力、そしてこの世界のスカイ・ドラゴンの中でもカミトの側にいる固体は最上級の物、僕はそれを抜き取るためにあの場へ赴いたんだ」
ハイフレードは解魔石をこちらに見せながら頭の上にあげると解魔石が光だす。
「遂に完成したよ。この完全版の解魔石が」
凄い魔力を放つ解魔石、完全版というのも嘘ではなさそうだ。
「完全版となった解魔石は通常の解魔石の数倍の速度で出力を可能にする……つまり、君の物とは等級が全く違う解魔石を使った俺の放つ出力速度は君とは段違いってことだよ。圧倒的演算速度を持つ俺に君は勝てるかな?」
「……」
「どうした、黙ってないでなんか喋ったらどうだグラス君」
「……」
「あまりの戦力差に戦意を失ってしまったようだな! ハハハハハハハ!」
ふむふむ、随分と詳細まで説明してくれたものだ。そんな様子を見て僕は確信できた。
やっぱり目の前のこいつはおかしい。本来のハイフレードはもっとこう強者のオーラがあった。こんなに情報をぺらぺら放さないし、今喋っているのは確かに魔王であるのだろうが……ハイフレードではない。
「魔王さん? あなたが僕より強いのは分かったんで、早くかかってきてくださいよ」
「うん? ほう、さっきの話を聞いてもそんな余裕な口が利けるとは……まあまだやる気を出すに足りえないかな……いい事を教えてあげるよ」
何だハイフレードはここに来てまだ何か衝撃の事実を僕に伝えようとしていた。
「君をシュレッタ王国から追い出した元凶はこの俺だ」
「なんだって!」
ハイフレードの口からは衝撃の一言が放たれるのであった。
「面白かった、続きが読みたい!」
などなど思った方がいましたら下の☆☆☆☆☆から作品への応援をお願いします。
ブックマークも頂けたら幸いです。




