54.黒幕
「終わったようですね」
あっけない最後だったな悪性ホルテラ、しかし最後に何か言いかけてたような気のせいか？
「ご主人様ああああ、ご無事でよかったです」
「グラスう、どうやらその調子だと終わったみたいだな」
「おお、レピティ、エルカそっちも無事でよかった」
「というかグラス、お前ほとんど何もしてなかったじゃないか！」
「ハハハハハ、そりゃそうだ」
まさにエルカの言う通り、ゼーネシアさんが参戦したためほとんど悪性ホルテラ戦では立って観戦していただけだった。まあ偶にはこういうのもありだろうと思う。
「おい、ゼーネシア！ お前って奴はしばらく見ないと思ったらこんな局面で美味しいところを持っていくとは相変わらずくえない奴だな」
「くえない奴とは心外ですね。エイマも闇の使徒4体も相手によくやりましたね」
「くうぅぅぅ、ボスを倒した奴が言うと嫌みにしか聞こえんな」
「それにしても皆無事でよかったよ。後は支援班と合流して終わりといったところかな……っ！」
その時光が現れて徐々に人の形になっていく。次第に光から元の姿に形を整えていき、それが次第に見慣れた人物であるということに気づいた、
「ハイフレード？」
「バタッ」
突如現れたハイフレード身体は倒れているレジンとシステラの側に落ちる。
「ハイフレード様！」
「ん？ うん？ ああレネお嬢様か、僕は今までどこで何をしていたんだ」
「よかった無事だったのですね」
「無事？ あれ確か僕は魔王軍幹部のロシュナビスと戦った後に、うっ頭が！」
「ハイフレード様？」
「う、うがあああああああああ」
「レネお嬢様お離れ下さい！ ハイフレード殿の様子がおかしいです」
「や、やめなさいキルティオ！ ハイフレード様が苦しんでいるから助けなくては……」
「うをおおおおおおおおおおおお」
その時ハイフレードの身体から膨大な魔力が放たれる。
「この魔力……エイマ直ぐに皆さんを外に避難させてあげてください」
「うん？ ああ分かったぞ。おいお前ら私と一緒に来るんだ」
「僕も手伝いますよ」
「分かりました。そしたらグラスさんもここに残ってください」
「私もご主人様と一緒に……」
「馬鹿がレピティ、ハイフレードの魔力を見て見ろ、あれは私達では足手まといになる類のものだ。今すぐエイマさんと一緒に逃げるぞ」
「は、はい……」
エルカのお陰でレピティも何とか納得してくれそうだな。ただそう言っているエルカ本人の足は今にでもこっちに来たいかのように逃げ道とは反対の方向を向いていた。エルカもかなり我慢しているようだ。
「おい、グラスとゼーネシア！ くれぐれも無理はするんじゃないぞ」
「ああ任せとけ」
「ええ」
エイマさんはレピティとエルカを連れて王国の外へ退避していく。
「レネお嬢様、ハイフレード殿からお離れ……グハッ」
「なっ」
レネに駆け寄るキルティオが突如ハイフレードに切り裂かれる。
「うあああああああああああああ……ふ、ふうう」
直後ハイフレードの身体から出ていた魔力が収まりだし、同時に悲鳴も止む。
「き、キルティオ？ い、いやあああああああああああ……うっ」
キルティオが倒れて悲鳴を上げるレネを突如ハイフレードが剣の鞘で気絶させた。こいつやっぱり……。
「うるさいんで、少し眠っててくれないか」
「……」
何だ、少し目つきが今までのハイフレードとは違うようだ。
「さて、この茶番劇を終わりにしようか」
深紅の瞳を煌かせて、ハイフレードは怪しく微笑みながらそう言い放つのだった。
「ハイフレードとあろうものが随分と手荒な真似をしますね」
「ゼーネシアさんとグラス君か……嫌なところを見られちゃったな。ちょっとレネお嬢様はこれからの儀式に必要な存在になるんで寝ててもらったよ」
「儀式とは？」
その時、ハイフレードが手から黒いマントを出現させて、背中に羽織りだす。
「ほら、そこを見てくださいよ、シュレッタ王が常日頃大事にしていた鑑定システムα、実はねあれ、俺が操っていたんだよ」
いつの間に一人称が俺になっているハイフレード、指をさした先には鑑定システムαがおいてあった。さっきまであそこには何もなかったはずなのに。
「何を言って……」
「後ね……シュレッタ王を葬ったのもこの俺だよ」
普段温厚な性格のハイフレードだが、この日はその姿のまま衝撃の一言を放つ。本当にこいつが黒幕だったのか。
「いやあ、王はもう駄目だと思ったよ。すっかりシステムに取り込まれて、俺のおもちゃを壊そうとしたんだからね」
「どういうことだよ」
「いやね、全ては最初から仕組まれたことだったのさ、そう鑑定システムの選定から全てが俺の仕業さ。ある計画を達成させるための……あの王様の無様な断末魔だが君達にも聞かせてあげたかったな。確かあれはアセルビデト任務終了後の時だったっけ」
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
「もう貴様らは使えんから、選抜冒険者パーティは解体じゃ！」
時アセルビデド任務終了後に遡る、シュレッタ王の王の間にて怒鳴り声が鳴り響いていた。そんな中肩を落とす冒険者3人が王室を出る頃の事、シュレッタ王は鑑定システムαに釘付けになっていた。
「クソどいつもこいつも本当に使えんの、このシステムだけが頼りだが……おかしいのう、最近鑑定システムαが壊れておるような」
「国王様どう致しましたか」
「おお、ハイフレードか。いや実はのう、鑑定システムαが動かないんじゃよ」
「成程、鑑定システムαがですね。そしたら、こうしたらどうですか」
ハイフレードは突如剣を抜き鑑定システムαを吹っ飛ばす。
「な、なんてことするんじゃお前わあああああ」
「愚かな国王ですね。あなたにはもう必要ないものだと思いつい、それにもうあなたは用済みのようだ」
「ぐはっ！ き貴様何を……バタッ」
ハイフレードが吹っ飛ばしたシステムが起動するとシュレッタ王の魂を抜き取る。
「何をも何も、あなたは最初から間違えていたんですよ。このシステムの意味を」
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
「全く誤算だったよ。あの王様が選抜冒険者解体なんて言い出すんだもの。あれがなかったら俺の計画は達成されないのに」
「計画って何のことだよ」
「この際だから明かしてもいいかな。俺こそ伝説で言い伝えられている《魔王》なんだ。勇者セルファシアとの戦いで力の大半を失ってしまったんだけどね。失った力はこの世界各地のあらゆる場所に分散してしまった……そこでこの鑑定システムαを作ったのさ」
ハイフレードが今これまで起きた出来事の真相を全て明かそうとしていたのだった。
「面白かった、続きが読みたい！」
などなど思った方がいましたら下の☆☆☆☆☆から作品への応援をお願いします。
ブックマークも頂けたら幸いです。
