49.間接拒否~レネ(追放)サイド~
「はあ! ここは?」
どうやら近隣の森へ転移することになったようですが……転移失敗? 一体どうして……。
「お、お嬢様……すいません、転移間際にあの少女が放った衝撃でケガをしてしまったようです。転移はほぼ終えてますので私を置いて先へ行ってください」
「う、嘘でしょ……キルティオ、無事よね? あなたがいないと私は一人に……」
「安心してください、直ぐに治りますんで」
「馬鹿言わないでよ、私はここで治療に……っ!」
「グゥゥゥゥゥ」
こ、こいつは森のボスクラスA級魔物! 普段はどうってこともないですが今はこいつに構っている暇は……それにキルティオを庇いながらの戦闘は厳しい……。
「お嬢様……」
「キルティオ?」
「私を置いてここから目的地に行ってください……」
「何を馬鹿な事を!」
「転移」
「ちょっ、何をして」
「お嬢様、後は任せましたよ。王国に栄光を……」
「こ、ここは……あのギルドの近くの森……キルティオは渾身の力で転移を使ったのね……馬鹿なことを」
レジンさんシステラさん、そしてキルティオ、どいつもこいつもわからずやの馬鹿ばかり……ハイフレード様もいなくなってしまったし……本当に。
「どいつも、こいつも役立たずううううううううう!」
私は森林で思いっきり大きな声を張り上げて、ギルドへ走り出す。頼みの綱は後あの眼鏡の男、グラスだけ……こんなことはありえない……。
「はあ、はあ、はあ……着いた、やけに騒がしいですわね」
ギルド《オルトレール》に着くと周囲がやけに騒がしいことに私は気づいた。何やら討伐隊を編成しているんですかね。
「あれ? 姫様じゃないですか。なんであなたがここに?」
「誰ですかあなたは?」
「俺ですよ、俺、王国で冒険者狩りをやっていたエルゴルって奴、今は王国をクビになっていたんで、傭兵をやっているんですよ。何やら大掛かりな討伐が始まるらしくてここに来たんです」
「討伐? っていうか知りませんよあなたなんて」
「へへへ、まあそうですよね。僕は胸がえぐれるほどあなた達王族の事に関心があるんですが……」
「……っ?」
なにこいつ? 私を見つけたことを喜ばしいような怪しい目でこちらを見てくるのですが。傭兵、冒険者狩り、底辺の汚らわしいやつに私は身の毛がよだつのを感じた。
「そんなことより私は今から用があるんでした」
それから私はエルゴルを無視してギルドへ入っていく。中の冒険者は慌ただしく動き回っていた。
「バタッ」
扉を勢いよく開けると、皆の注目を私は浴びることになる。
「あ、あなたは?」
「私はシュレッタ王国の第一王女レネです! 至急冒険者グラスを呼んでほしいです」
「グラスさん? ちょっと今は席を外してて、今忙しいのですが……なんのようなんですか?」
グラスは今席を外している? 仕方ないとりあえず話だけでも……。
「皆様聞いてください! 私達王国への救援を、救援をお願いしたいで……」
私が救援依頼を冒険者の皆にお願いしようとした時、説明する間もなく背後から何者か大声で割り込んでくる。
「おいおいおい! 王国のお嬢様がまさかこんな所にまで一体何のようなんだい?」
背後からわざとらしい演技じみた口調で割り込んできたのはさっき会ったエルゴルという男だった。
「おい、傭兵、あまり介入すんなよ。これはグラスさんの案件だぞ」
「す、すいません冒険者様方、ですがこの王国のお嬢様には皆さまに密接にかかわっているある重大な真実があるのです……実はこのお姫様は皆さまのギルド遠征を壊そうとした主犯格なんですよ!」
「は? 何を訳の分からないことを……」
「こちらが証拠ですよ!」
エルゴルは記録魔法で、私が父上にアセトビデト突入を誘導した映像を出現される。
「ば、馬鹿なこんな映像をどこで……」
この世界の記録魔法はその性質状偽ることはできない。これは動かぬ証拠となる。
「な、何を馬鹿げたことを、こんな映像フェイクに決まってます!」
確かにこの世界の記録魔法は改竄できない性質を持っていて事実は確定されてしまったが、私はとっさにその場をごまかそうとしていた。
「み、皆さま、私の王国が只今危険な状態に陥っていて、だから助けに……」
その時話など聞くどころではないというほど、周囲の冒険者の自分に対する目が怒りの物に変わっていることに私は気づいた。怒りに震えるその視線に私は凄まじく動揺した気分になる。
「救援依頼でしたっけ? その提案ですが王女様、聞くまでもなくお断りします」
一人の冒険者の言動に周囲も頷く。
「っていうかこの映像は事実なのか説明しやがれよ!」
さらに冒険者の一人が私に怒りをぶつけてくる。言い逃れは厳しそうだから、ここは素直に……。
「そ、それは……事実です……」
私の言葉を聞くと、冒険者たちはさらに怒り出した。
「ふ、ふざけんなよ……俺達はあの時命を落としかけたんだぞ! お前の依頼なんて受けるわけないだろ!」
「そ、そんな……」
冒険者一同は怒り言い放つ……私の表情は気が付けば悲痛なものになり、目には涙が浮かんでいた。
さらにエルゴルがまた割り込んでくる。
「はい、謝罪! 謝罪! 謝罪! 謝罪! 謝罪!」
エルゴルは周囲の冒険者の怒りを噴き上げさせるかのように、謝罪コールをするのだった。
そして徐々にそれは冒険者達にも伝染することになる。
「そ、そうだ、俺達はギルド遠征の異変のせいで命を失いかけたんだ! 謝罪しろ! 謝罪! 謝罪! 謝罪!」
「……」
こうなってしまったからにはもうどうすることもできないだろう。許してもらえるとは思わない、それでも誠意だけはみせなければいけない、そう思いながら膝を曲げるのだった。
「大変申し訳ありませんで……」
「バタっ!」
「おい、これはどういうことなんだ!」
その時ドアから見慣れた顔の男が入ってくる。この人は……。
「グラスさんじゃないですか!」
冒険者達はグラスの登場によってがらりと雰囲気を変えるのだった。
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