43.勇者の魔力
「す、凄い」
「ハア、ハア、ハア、その力は勇者セルファシアのものだな。そしてよく見たらその容姿はゼーネシア、お前はあの時セルファシアの側にいたガキか」
「思いだしていただいて何よりですよ。セルファシア様は私の師匠です。私の本名はゼーネ! 現在いなくなってしまったセルファシア様の意思を引き継ぎし者、師匠に変わりあなたをお迎えしました」
ゼーネシアさんはそう言うと剣をホルテラ様に向けて構える。
ゼーネシアさんの師匠が勇者セルファシア? 信じられない衝撃の事実だ。でもそれならあの強さも納得がいく。ホルテラ様は勇者セルファシアの契約精霊とされているし、ではゼーネシアさんとも知り合いなのか。
「その魔力懐かしいな。セルファシアのものを感じる、思いのほか楽しみになってきた」
「ここからが本番ですよ」
「理解した。私も全力をだそう」
「はあああああ」
「ズドドドドドドドドドドドドド!」
更に激しくなった戦闘により凄まじい攻防が広げられることになった。さっきまで全くホルテラ様の相手にならなかったぜーネシアさんであるが、今は互角の戦いを繰り広げている。それほどに勇者セルファシアの魔力が凄いのだろう。
「いいぜ、いいぜ、ゼーネシア! 認めてやるよ、お前は確かにセルファシアの力を引き継いでいる」
「でしたら、セルファシア様の様に私の精霊になるつもりはありませんか」
「残念ながら私はもうセルファシアには興味がないんだ。魔王と同士討ちした時に奴の力の底はすでに把握した。それに今は別の者に興味があるんでな」
「ぐはっ!」
「ゼーネシアさん!」
拮抗していたと思われていた、打ち合いもホルテラ様の速さが更に上がったことで直ぐに崩れることになる。ホルテラ様の打撃によりゼーネシアさんは壁に吹っ飛ばされてしまった。
「残念ながらゼーネシア、お前はまだセルファシアの力を使いこなせてないようだ。それにまだまだ粗くて波がある。タイミングを突けば脆いものよ」
「……」
「あ、意識失っちゃたみたいだね」
ゼーネシアさんが戦闘不能になった事に気づくと、ホルテラ様は次に僕の方に視線を向けてくる。
「さてと、グラスっていったか? ここからが本題なんだが分身体から読み取ったお前の力は驚異的なものだった。正直驚いたよ、お前の力は勇者セルファシア以上のものを感じる」
「いや、僕が勇者以上は流石に盛り過ぎでは?」
「さっきゼーネシアの奴にセルファシアの力を使いこなせていないと言ったが、実は8割ほどは形になっていた。あいつの実力は限りなくセルファシアに肉薄していたといえる」
いや、それじゃなんで、ゼーネシアさんがあんなに一方的にやられたんだ……。
「今の私の力はな全盛期の勇者セルファシアの力を大幅に超えているんだよ」
「な、なんだって! 魔王と相打った勇者を大幅に超えているってそんなこと……というかなんでそんな力があるのに精神世界に閉じこもっているんですか」
「単純なことだよ。私の正体は精霊であるから、誰かと契約しないと外の世界には出れることが出来ない。だから私と釣り会うやつを探していたんだ」
「は、はあ」
「おいグラス! 私はお前を気に入っている。今から強制的に私と契約だ!」
「……っ!」
ホルテラ様が手を僕にかざすと赤い光が周囲を照らした。その眩しさに思わず手で光を目から遮る動作をしてしまう。
「あれ、光が突如消えた? 特に身体に異常はないみたいだけど」
ふと目の前を向くとホルテラ様が倒れていた。
「いってえええええ、お前! このホルテラ様に立てつくなんて何処の末端精霊か知らねえけどただじゃ済まさないぞ」
「末端精霊? ホルテラ様はいきなり何を言い出したんだ……ッ!」
その時背後に慣れ親しんだ気配を感じた。この静かで優しいオーラはもしや……。
「グラスさんの世界に土足で入り込もうとするなんて許せませんね! この私こそグラスさんの契約精霊ですよ」
「ミルティ!」
なんと現れたのはミルティだった。
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