37.不気味なカリスマ性~レネ(追放)サイド~
シュレッタ王国王宮内にある王の間には現在ハイフレード様が王座に座っていた。
「お嬢さま先日は何処へいらっしゃったのですか」
「そうですね、少し偵察に行っていましたの」
「偵察とはどのような事ですか」
「……」
ハイフレード様が王座についてからは近辺調査がより厳重になった気がします。少しでも怪しい動きを見つければ徹底的に追及を行う方針のようですね。
ただ以前の父上の様な鑑定システムαに対する狂信的な固執はないため、誰もがハイフレード様が王様になった今の方がましだったと肯定している。
いつの間にか復活していた鑑定システムα、現在その能力算出はあらゆる人に行われて、多くの人が彼の元、適切に管理されるようになりました。どうやらそんな状況でもハイフレード様のカリスマ性から疑念を持つ者も現れなさそうです。
「それは魔王軍偵察ですよ。あれから収まったとは言えまだまだ安心できませんからね」
「成程、確かに安心はできませんね。次からお嬢様は偵察しなくて大丈夫ですよ。私が兵を増員させます」
「それなら安心ですね」
これ以上単独行動は難しそうですね。
「そうそう、僕が王座についてから決めたのですけど選抜冒険者のパーティは継続と言った形になりましたよ。レネお嬢様には引き続きレジンとシステラと共に活動してもらうことになるからね」
「あの2人の失態は許されたと言う事ですか」
「勿論さ、そもそもあの2人は何も悪い事はしていない。ある意味前国王の行き過ぎた癇癪が原因だったからね。僕は全く気にしていないさ」
「大変のご温情に感謝しますハイフレード様」
ハイフレード様の言っていることは最もである。今まで理不尽でも父上の意向に沿ってきたが、当たり前のことが今のハイフレード様の元なら当然の様に理解してもらえる。この話のスムーズさ思ったよりハイフレード様が王座につくのは全然悪くないのかもしれない。
それから数か月が経過して、驚くほど順調に王座についたハイフレード様による活動が進行していった。
偶に出現する魔王軍もより鑑定システムαを使いこなし効率化されたハイフレード様の防衛戦術によって直ぐに排除、正に歴代最高クラスの王としての実力とカリスマ性をハイフレード様は示したのである。
「私の心配しすぎのようでしたね」
流石はハイフレード様、グラスの奴に頼みごとをした私が馬鹿でしたわ。
「何か言ったか?」
「いえ、何でもありませんレジンさん」
「ふーん、しかしよお、ハイフレードさんには恩しか感じないぜ。シュレッタ王が俺達に選抜冒険者解体をすると激情した時にはどうなるかと思ったけどよ、今ではこうして立場も保証されて元通り選抜冒険者よ。なあシステラ、お前もそう思うだろ」
「ああそうだな、私も危うく没落貴族にされるところであった。この私がそんな没落した生活に耐えられるわけがなかろう。こんな生活がもう一度出来るなんて、夢のようだ。ハイフレード殿には感謝をしても仕切れぬ温情がある」
レジンとシステラさんはすっかりハイフレード様に心酔してますね。まあ二人に父上がしたことを考えればそれも無理もない事と言えます。
現に今の私もハイフレード様への疑念は少しずつ晴れて、今の生活に甘んじています。ハイフレード様が魔王軍かもしれない? そんな馬鹿な事を考える必要は全くありませんでしたわ。あの時の私は馬鹿でした。なんでグラスなんかのギルドに行ったのでしょう、恥をかいただけでした。このままただ私はハイフレード様の圧倒的カリスマの元で平穏な生活を送っていればいいだけの話……素晴らしい事じゃありませんか。
「とにかく、2人とも今日も選抜冒険者としての責務を果たしますよ」
そんなことを思いつつも私の心の片隅には、果たして本当にこれでよかったのであろうか、という小さな違和感が残り続けている。私の中の聖女としての勘が何か違和感を感じているのである。
父上の突然の豹変、そしてハイフレード様の就任、それにあの時に見た彼の普段とは違った残虐な表情、全てにおいて怪しい疑念が残る。しかし今の私には何一つ真相を知る力はなかった。
そしてそんな疑念は本当に心の片隅程度で、実行するに至るにはあまりにも小さすぎる些細な考え、一瞬で忘れては偶に思い出す程度のものだったのである。
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