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32.報酬の使い道

 あれからカミトさんの様態は落ち着いたようで、今回の討伐遠征の依頼報酬の話をギルドの皆とクリープキャッスルの部屋で話すことになった。


「すまなかったな、ここまで助けてもらえて本当に感謝している」


 ギルドの皆がカミトさんに感謝されている。体中に包帯を巻いていてカミトさんの様子は痛々しい、かなりハイフレードにコテンパンにやられたんだな。


「らしくもないことを言いますね」


「私も今回の戦いで己の傲慢さに気づいたのだゼーネシア。まさかここまでハイフレードとの力の差があったとは」


「ハイフレードとは、そこまで圧倒的な力を持っていたのですか」


「ああ、お前達もスカイ・ドラゴンの力は身をもって知っているだろう」


 ギルドの皆はトラウマを思い出したかのように顔を青白くしながら首を縦に振る。スカイ・ドラゴン、今回の討伐クエストでの宿敵であのオーラは忘れられるはずもない。


「我がアセルビデトに存在する全てのスカイ・ドラゴン、計20体をハイフレードに私はけしかけた。しかし奴はものともしなかった。軽く遊びをするかのように全ての攻撃をいなし、反撃をせずに涼しい表情をしていたのだ」


「1体でも戦慄するのに、それを20体ってとんでもないな」


 ギルドの皆から驚きの言葉が漏れる。


「その程度ではまだ私も想定内だった。何せ私の実力はスカイ・ドラゴン20体より上だからだ。そして遂に奴と対峙することになった」


 スカイ・ドラゴン20体より上の実力って、さらっと凄いこと言っているんだが。


「まあ、結果は見ての通りだ。あの力は数として捉えるのは間違いと言えるかもしれない。それくらい底知れぬものだった。いくら数を増やしてもそれは無と化すような深淵なる何かを私は目撃してしまった」


 戦いの事を思い出しているカミトさんの表情は、徐々に青ざめているのが分かった。


「私はもうしばらく戦えない。奴に身体を機能停止に追い込まれたようだ。アセルビデトはしばらく場所を移して身を潜めることになるな」


「ずいぶんと弱気になりすぎじゃありませんか」


 ゼーネシアさんが少しだけ強い口調になる。


「まあ、ここから先は私たち雲の都市アセルビデトの問題だからお前達には関係のない事だな。報酬だったか、約束通り金貨は支払うことにするぞ。受け取ってくれ。」


「……」


 報酬を前にギルドの皆は何かを決めていたかのように互いに顔を見合わせながら頷きあう。


「悪い正直よ、俺達は何もできなかったから報酬は受け取れねえわ、やっぱり今回の報酬はグラスさんが受け取るべきだな」


「なっ! 僕が報酬を?」


「当たり前だろ、結局魔王軍幹部も倒したのもグラスだしな、当然の権利だ」


「えええエイマさんまで!」


 困ったぞ、あまりにも膨大すぎるこの金貨、扱いきれないぞ。


「ふふふ、実は我がギルドの遠征ルールなんですが、報酬は遠征で一番の功労者が受け取ることになってるんです。なのでグラスさんが貰うのは合法ですよ、ただギルドの面子を背負ってることを忘れないでくださいね」


「えええ、そんなルール知らないですってゼーネシアさん!」


 何だこの状況は皆が僕の方をじろじろ見てくるのだが、というかゼーネシアさんの最期のセリフに凄い含みがあるぞ。


 報酬の使い道を期待されている感が凄い。全部ひとり占めだあ、なんていった日には総バッシング受けるに違いないな。


 少しの沈黙が流れた後僕は報酬の使い道を決める。




「そ、そうだな、じゃあ報酬の使い道なんだけど、やっぱりアセルビデトの復興に当てて、残り分はギルドの皆で山分けという事でどうかな」


「なっ、グラスとやら、うちは全然間に合っているので、そんな心配はいらないぞ」


「いやでも結局王国の侵攻を僕達が止められなかったわけですし、自分達にも責任はあります」


「いえいえ、とんでもないですって……本当にいいんですか」


「当たり前じゃないですか!」


「な、なんという温情を……私はあなたを見誤っていたかもしれません。グラス様と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか」


「っ!ちょっどうしたんですかカミトさん! キャラ崩れすぎですって」


「グラス様グラス様!」


 セイラさんがお馴染みのヤジを飛ばす。


「流石俺達のグラスさんだぜ、報酬を自分の利益にするだけじゃなく、しっかりと状況にあった有効な利用道を示す、正にグラス様だな。今度から俺達もグラス様って呼ぶことにするぞー」


「うおおおおおおおお! グラス様グラス様!グラス様!」


「……ダメだこれは、もうどうしようもないな」


「ふふふ、流石グラスさんですね、ギルドの威厳を保つ100点の解答です。私も誇らしいですよ」


「ははは……ゼーネシアさんは流石に普通に呼んでくれるんだな」


「どわああああああ」


「グラス様の胴上げするぞお前ら! そおれ、そおれ、そおれ!」


「だから、それやめろろおおおおおおおお!」


 こうして長かった僕たちのギルド遠征は幕を閉じたのであった。





 それから遠征組は現地解散となった。そして今僕はレピティとエルカと一緒にアセルビデドの城門前にいる。


「おいおい、グラス遅いぞお前、待ちくたびれてしまったよ」


「ご主人様お疲れ様でしたー!」


「すまんすまん、ちょっと手続きに手間取って、遅くなってしまった」


「よっし帰るかああああ!」


「おい待てグラスお前走るな、早すぎて追いつけない」


「待って下さいご主人様ああああ!」


 長い遠征から解放されて爽快感を感じた僕は、一気にアセルビデトの大地を立ち去るために走り出したのであった。


「面白かった、続きが読みたい!」


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