29.共闘
真っ先に前戦に飛び出した僕、ゼーネシアさんの前方に現れた眷属を魔法で粉砕していく。
「ゼーネシアさん手を貸します」
数百の眷属を前に一騎当千しているゼーネシアさん、見たところ傷一つない。ギルドの皆も援護はしているが極力後衛の遠距離攻撃が主軸のようだ。
「グラスさん、よく来てくれました。みんなも無事なようですね」
後ろでは大丈夫だと親指を立ててニコニコしているエルカがいる。レピティとセイラさんも手を振って僕達を見送ってくれていた。あれエイマさんは何処に……。
「私も忘れて貰っちゃ困るな」
その時周囲の眷属が切り刻まれる。
「ギュアアア!」
「エイマさん!」
「あらエイマも来てくれたの。これでずいぶん楽になったかしらね」
前衛に僕とエイマさんが参戦、他の皆は後衛支援に加わる形となった。
「それじゃあ一気に行きますよ!」
僕は解魔石の力を解放して戦闘モードに入った。
「ズドドドドドドドドドドド!」
「面白くなってきたな。誰が一番最初にヘイズの元まで行けるか競争しないか」
「そういうのあまり好きじゃありませんね。エイマが一人でやっていればいいんじゃないかしら」
「なんだと張り合いがない奴だな。グラスはどうだ」
「ははは、僕も遠慮しておきます……」
こう喋っている間にも動くたびに眷属が消し飛んでいく、グランドマスターのゼーネシアさん、支部長のエイマさん、ギルドの2大トップであるのは知っているけど、改めてとんでもない強さだと感じる。
「うおおおおおお3人共、いけいけいけええ!」
後衛支援をしているギルドの皆はこの光景にすっかり大はしゃぎである。ギルドの3大トップが魔王軍相手に全く引かない凄まじい強さを見せている。
まさにこの状況はギルドの威信を守る事に繋がり、皆の誇りになるというわけか。
「かなり、やる気が出てきたかな」
周囲の期待が僕に掛かっている。そう感じた時とても胸の中が熱くなった気がした。
「グラスさんも身体があったまってきたようですね。そろそろ見えてきますよ」
眷属の群れを相殺していく先に見えたのは魔王軍幹部ヘイズ、他の眷属とは全く比にならない魔力量である。
「なんだこいつらは、私の眷属を次々と許せぬ、お前達私の側に来ないか」
ヘイズの隣には側近のサキュバスが2人いた。魔力量もヘイズには及ばないがグレイ相当の者でかなりの強敵である。
「ええとそろそろヘイズの元に着きそうですが、誰が戦いますか」
「うーんそうねえ、じゃあグラスさんにヘイズは任せようかしら」
「え? 僕がですか」
「ふん、見たところあいつの魔力は相当なものだ、私からも今回はグラスに譲ってやるとするぞ」
いやエイマさんの場合単純に勝てなさそうだから僕に任せた感じだよね。
「……分かりました。そしたらお二方はヘイズの側近2人の相手をお願いします」
「決まりね」
「任せろ」
眷属を完全に倒しきった、僕たちは遂に魔王軍幹部のヘイズと対面することになったのである。
「きっ貴様らああああ! 我が眷属達をよくもこんな醜い目に合わせてくれたな。この代償は高くつくぞ」
ヘイズの周囲に凄まじい魔力が巻き起こる。
「ああ、ご主人様が力を解放しなさった。これはとても不運なことです。あなた方にこのシニバは鎮魂歌を送らなくてはなりませんね」
「がたがたうるさいぞ、お前の相手はこの私だ。一瞬で終わらせてやるから覚悟しろよ」
ヘイズの左側の側近メイド姿のサキュバス、シニバはエイマさんが相手をすることになった。
「ああ、あなたの生き血をすすれば、シエラはよりヘイズ様に認められることになる。私達は人の血を吸う事で力を増す、あなたの血の味は如何なるもの哉」
「フフフ興味深い話ですね。そしたらあなたの返り血をすすったらどうですか」
ヘイズの右側の側近メイド姿のサキュバス、シエラはゼーネシアさんが相手をすることになったようだ。
「なんだ、お前が私の相手か? まだそこのゼーネシアというやつの方が嚙み応えがありそうなんだが。グラスっていったか一方的な残虐ショーになるが文句はいうなよ」
それで僕の相手がこの魔王軍幹部ヘイズ、オーラの感じだとやっぱりシャキラくらいありそうだな。以外なことに側近の2人もグレイくらいのオーラ。僕は大丈夫だろうけど他の2人は大丈夫なんだろうか。
「はいはい、ショーになるのは分かりました。そしたら早速始めましょうか」
解魔石に手をかけると、大量な魔力が身体の周囲を纏う。ただ今回はいつもと違う感覚が現れた。
「バチバチバチ」
「ほう、その魔力、少しはできるようだな」
「いやいや、そこまで大層なものじゃないんで、ご安心してください」
「ぬかせ」
シャキラが凄まじい突進を繰り出してくる、いつもだったらここで分析からの出力を使うところなんだが、今回は少しだけ試したいことがあってね。
「ミルティ! 出てきてくれ」
その時周囲に薄紫色の光が宿る。神秘的な魔力を纏った光は、僕の魔力を帯びて壮大なものになっていた。
「グラスさん私を呼び出してくれてありがとう」
黒髪長髪に隻眼の瞳、初めてアセルビデトで合った時から更に神秘性を帯びた、精霊ミルティの初陣が始まるのであった。
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