27.下がってて VS追放パーティー
あいつら、レジン救出に来たというわけか、レネとシステラとハイフレード、他2人はともかくハイフレードは不味い気がするのだが。
この混沌とした状況が展開される中で、真っ先に僕たちは目の前の4人への臨戦態勢を取る。その時だった、ハイフレードがすかした態度で口を開く。
「あれ? ひょっとして君はグラス君か? まさか本当に生きてたなんて驚きだよ。そんなことよりさ、凄い身構えているようだけど……いやいや誤解しないでね。今回はレジン君を助けに来ただけだから、別に君達に危害を加えようってわけじゃないんだ。それに君への追撃命令はとっくに終わっているからね。敵対するつもりはない」
「我が感知を無効化するとは、まさか貴様はハイフレードか、王国最終兵器を我の前に差し向けてくるとはやはり図ったな!」
どうやら僕の追撃命令は終わっているためハイフレードと戦わなくて済みそうだ。なにやらハイフレードはレジンを助けに来ただけのようだけど、なんでカミトさんがこんなにピリついているんだろう。
そんな疑問を抱きながら僕は、レネが悪だくみをしているような悪い笑みを浮かべていることに気づいた。
「ぐあああああああ」
「なっ……」
おいおい、どういうことだ、さっきは危害を加えないって言ったのにカミトさんがハイフレードに吹っ飛ばされたぞ。
「あなたは別ですよ。我々の目的はレジン君の救出とカミト、あなたの討伐です。ここが正念場となってきそうですね」
「成程な、遂に協定を破って我が領域を侵略しに来たというわけか。許せんな」
吹っ飛ばされたカミトさんは空中で態勢を立て直す。高速でハイフレードも空中浮遊を当然の様にやってのけながらカミトさんと対峙していた。
その時カミトさんが手を挙げると、塔の中から凄まじい轟音が鳴り響いた。
「グゴゴゴオオオオオオ」
中から数十体のドラゴンが出現し、カミトさんの周囲に集まったのである。
「我が領域に進行したことを後悔しろよ! 行くぞお前達!」
ハイフレードとカミトの凄まじい実力者同志の衝突が始まったのである。
「痛ってって、カミトの奴、全く手加減しやがらねえ」
「いつも調子に乗ってるから日頃の罰が当たったと言えるな」
「なんだとシステラ、お前らも救援が遅いんだよ」
「すいませんレジンさん、少々立て込んでいまして、魔王軍の誘導が遅れてしまいました」
誘導って、もしかしてレネ達が一連の事態の黒幕なのか。
「貴様ら! 魔王軍の誘導だと。どういう事か説明してもらおうか」
最初に疑問を呈したのが、エイマさんだった。他の皆も同様の事を思っている様子。
「さあ、あなた達には関係のない事ですね。今回あなた方に私達自ら危害を加えるつもりはありませんがこれ以上深入りすれば実力行使もやむを得なくなりますが」
「なんだと」
レジン、システラ、レネの選抜冒険者3人と、エイマさん、エルカ、レピティ、セイラさんと僕のギルド遠征メンバー5人、双方の対立構造が今出来上がろうとしていた。
頭数も戦力的にもこちらが有利だとは思うけど、こんな状況だし戦闘だけは避けたいところである。
「おいレネ、もうお前やめにしないか」
意外なことに真っ先に口を開いたのはエルカである。この2人は確か姉妹関係で因縁があることが判明していたが。
「何を今更、ヘタレの姉様は引っ込んでくださいます」
「……っ!」
「おいレネ、姉様ってあいつが失踪した第一王女様なのか」
「そうですよ。役目から逃げ出した臆病者です」
「クッハア! これは凄い戦犯を見つけてしまったぞ、おいシステラ逃亡した隠居王女様がこんなところにいるぞ」
「ハッ目も当てられぬな、高貴な身分ながら役目を放棄し、ギルドという低俗な事でお遊びをしながら惰性をむさぼる、シュレッタ家の負の象徴であるな」
「……」
「おいおい、逃亡姫さんよ! あんた王国で俺の身内になんて言われているか知っているか?『恥姫』だってよ。役目から放棄した臆病者にはお似合いのあだ名だよな!ぎゃはははははは!」
「ふっ、おい、そんなん初めて聞いたぞレジン、笑ってしまうからやめてくれ……フフフ」
「いや、さっき俺が考えたあだ名なんだけどね。ガハハハハハ!」
「フフフ……なんだそれは、傑作じゃないか。久しぶりに冗談が冴えわたっているぞレジン」
「うっ」
エルカは何も言い返せずに目を潤ませながら俯いている。見たところ会話内容を理解してないものの、ギルドを馬鹿にされエイマさん達のイライラもかなりのもののようだ。これは当然であり何より一番怒っているのは僕だ。
「おい、貴様らよくもギルドとエルカを馬鹿に……ん?」
僕はギルドや仲間を馬鹿にされて激昂するエイマさんを静止する。
「エイマさん少し下がっててくれませんか?」
「お、おう分かった」
「おい、お前らそろそろ黙れよ」
「パキパキパキパキ」
解魔石の魔力を放出させる、しかし今日の出力はいつも以上である。
「は? おいおいグラス如きが俺に口答えしてんじゃねえよ」
「王国選抜冒険者を追放された雑魚如きがこのレーラ家当主の私に意見を言っていいとでも?」
全くどいつもこいつも自分達の立場の優位性立てに反吐が出る。
「これは! まずいです。レジンさん、システラさん退避してください! 今回私達は直接ギルド冒険者への干渉はしない予定ですよ」
「おいおいレネ、雑魚グラス相手に何ビビってんだよ、ちょっと実力差を教えてやるだけだし、そもそもこの俺が退避なんかするわけねえだろ」
「そうだぞ、お前としたことがらしくもないことをいうなよ」
「いやそう言う事じゃないですって! グラスはまずい……ちょっっと!」
レジンとシステラはレネの話を聞く前に僕の方に攻撃を仕掛けようとしてきた。
「グラス如きが俺に歯向かってんじゃねーよ! サンダーブレイク!」
「私は王国名門のレーラ家の当主だぞ? 身の程を弁えさせてやる! サンダースラッシュ!」
雷鳴轟く魔法と剣撃が僕に向かって飛んでくる。以前ならその魔力を見るだけで身体が硬直して動くことが出来なかった筈であるが、今は全く怖く無かった。
「……」
瞬時にシステラとレジンの雷攻撃を分析する僕、解魔石の力を使い消滅の出力を促した。
「ば、馬鹿な! 俺の魔法が消え去った!?」
「ば、馬鹿な! 私の剣撃を消しただとお!?」
「仲間を馬鹿にしたお前らにはちょっと痛い目に遭ってもらう! 悪く思うなよ」
その後僕は大気中の魔力の微小な魔法陣を分析、数値化してレジンとシステラの身体を全力でぶっ飛ばすように出力した。
「ぐはああああああああ……こんな馬鹿な……ぐはっ!」
「うわああああああああ! 何が起きたんだ……がはっ!」
気づけばレジンとシステラは凄まじい勢いで、塔の壁を突き破り気絶した状態で空中に放り出されたのであった。
「流石だな」
「ですねだからこそのご主人様です」
「スカッとしちゃった」
エイマさん、レピティ、セイラさんの三人もかなり不愉快な思いをしていたようで、爽快ともいえる表情をしていた。
「おい、エルカ悪かったな。ちょっとゴミが僕達を遮っていた」
「あ、ああ……グラスはよくやってくれた」
エルカは涙目で微笑んだ。
「面白かった、続きが読みたい!」
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