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22.遠征クエスト

 僕も声でしか会っていないから初めてとなるゼーネシアさんとの対面、清廉された黒髪長髪に、背丈はかなり高く、透き通った青色の瞳にその姿は僕が声から想像していた容姿とぴったり一致していた。


「初めての方がほとんどでしょうが、ゼーネシアといいます。一応これでもここの冒険者をやってます」


「いや全然知ってますって。歴戦のトップ冒険者でギルドマスターゼーネシア、このギルドでは知らない人はいませんよ」


 1人の冒険者がそう主張すると、周囲の人々も合わせるように頷きだした。


「皆さん私の事をご存じで頂き大変感謝です。今日なんですが2人目のグランドマスターが誕生したと言う事で、ギルド遠征を企画したいなと考えここに来ました」


「おいおいゼーネシア、ずいぶんと大胆なイベントを考えたな」


「ええエイマ、魔王軍の動きが早まっているのと、皆さんのやる気にちょっと感化されちゃったんですよね、この熱気を当てる舞台を用意したいと考えた次第です」


 遠征って何をするんだろうか。かなり大規模なものとなっているには変わりないと思うが。



「グラスさん、実際に会うのはこれが初めてですね。先ずは《グランドマスター》取得おめでとうございます。あなたなら必ずここまで来ると分かっていましたよ」


「ありがとうございます! 自分もゼーネシアさんに会えて、しかも褒められるなんて光栄です」


 思えばゼーネシアさんに出会った時から今に至るまで彼女の実態を掴むことが出来なかった。今なら分かる、こんなに凄い人と僕はやり取りをしていたんだ。


 その時とても自分が誇らしい気持ちになったのを感じた。


「さて、それでは遠征についての説明を始めますよ。皆さんよく聞いてくださいね」


「かしこまりました!」






 ゼーネシアさんの遠征の説明が終わるとギルドの皆は活気に溢れていた。なんといっても初の試みである遠征、普段は同じ組織に所属しながら違う場所で活動する者同士、共にパートナーになるというのはかなり刺激的なものであったと言える。


「ご主人様、こっちですよ」


 ギルドのメンバーは総勢50名近くいるらしい。僕が普段あっている奴らも一部にすぎずまだ見ぬギルドメンバーがいることから凄くワクワクしてきた。


 そんな中早速レピティ案内の元、僕もパーティーに振り分けられるわけだが、果たしてどうなるやら。


「よ、ようグラス、待ちくたびれたぞ」


「え、もしかして僕たちのパートナーってエイマさんなのか……」





 おいおい、戦力分散ってどうなってんのこれ。僕とエイマさんって偏り過ぎじゃないだろうか。


「何か不満であるか? 私自らお前のパートナーに志願してやったぞ」


「あ、そうなんですね」


 ずいぶんと気に入られちゃったみたいだな。


「私も忘れないでよねー!」


「あれ、セイラさんも! 受付の仕事は良いんですか」


「全然大丈夫よ! そのための遠征ですもの。ギルドメンバー総出での出動、その間本部は閉めることになるのよ」


 なるほどなあ、でも一時はどんな面子になるかと思ったけど、結構なじみ深い面子が集まってよかった気がする。


「おいセイラとやら、お主は戦えるのか? 受付嬢なんだから全く前線向きとは思えんのだが」


「やだねえ、エルカちゃん、こう見えて私も元冒険者なのよ。エイマとは昔からのパーティーメンバーで相性ばっちりなの」


「ふむ、私が前衛でアタッカー、セイラが後方支援って感じで回していたな」


 成程なあ、かなり予想通りの組み合わせである。やっぱりエイマさんは前衛だとは思ってたし、セイラさんはアタッカーには見えんしな。しかしどんな後方支援をするんだろうか。


「まあ、実戦になったら直ぐわかることですよ。それでは早速目的地に行きましょうか」






【ババババンッ!(クエスト難易度S)ギルド遠征 魔王軍幹部ヘイズを倒せ】


 今回の遠征の目的地は魔王軍幹部の出没可能性がある雲の都市である。討伐対象は前回のシャキラと双璧をなすと言われている魔王軍幹部ヘイズ、種族はヴァンパイアで眷属を大量に生み出せるだとか。


 シャキラは単体での強さが問題視されていたわけだが、ヘイズはその頭数が厄介だとされている。そんなわけで今回の多人数の討伐戦はヘイズ対策に持って来いというわけである。


「しかし雲の都市とは、ずいぶんと難解な場所を標的にしたものですね」


「どういう事だ、レピティ」


 毎度のことながら知識がやたらと優れているレピティ、僕の解説係担当の位置になっている気がするのだが。


「雲の都市には《カミト》と呼ばれる絶対的な力を持つ人物がいるんです。その実力は並大抵のものでは勝てず、王国も手を付けられないとか。ただ話は分かる人物なので今王国とは停戦中みたいですね」


「ふむふむ、それじゃあなんで依頼なんか出したんだろうな」


「さあ、私にはさっぱり」


「《カミト》も一枚岩ではないからな」


 エイマさんが何か思うことがある様に呟く。


「うーん、まあ詳しい事は現地に言ったら分かりますかね」


 こうして僕たちのパーティにエイマさんとセイラさんが加わった遠征パーティーで雲の都市アセルビデトへ向かうことになったのである。


 それぞれ別ルートでの移動となった、他のギルドのみんなは何やってるのか気になるところ。




「着いたぞ、あれが雲の都市アセルビデトだ」


「す、凄い……」


 エイマさんが指をさした先には、巨大な雲が塔状に連なっていて、その中に多数の建造物が確認できた、壮大な景色はまさに《雲の都市》に相応しい光景として広がっていたと言えるだろう。


「あれ誰か来ましたよ」


 レピティが言うように何者かがこちらに向かって上空から近づいてくる。空を飛んでいるあたり現地の人の気がするが。


「ちょっといくら何でも多すぎる気が」


 ざっと20人くらいか。


「貴様ら何者だ!」


 空中を飛行して凄いスピードでこっちへ接近してきたワイバーン、その上に乗っていた兵士達に僕達は気が付けば囲まれていた。


「それはこちらのセリフですね。他人の領域に侵入してきて、何のつもりでしょうか」


 兵士の代表らしき人物がこちらに質問を投げかけてくる。


「うちらは冒険者ギルドで討伐依頼を受けてここに来たものだが、そちらの把握ミスではないか」


「冒険者ギルドねえ……」


 エイマさんが冒険者ギルドであると表明したものの、全く信用してくれるそぶりを見せない兵士の代表、なんだか雰囲気が殺伐としてきたような。


「一先ずご同行願いましょうか」


「ジャキッ!」


「なっ……」


 代表が手を挙げると周囲の兵士たちが手持ちの槍を向けてきた。これは流石にまずいと思った僕たちはすかさず臨戦態勢を取る。


「待つんだ!」


 しかしそんな僕たちをエイマさんが静止した。


「みんなここはおとなしく従った方がいいかもしれない。どうにもアセルビデトの情勢が平常ではないようだ」


 仕方なく兵士代表の指示に従い連行される僕達、これは開始早々波乱の予感である。他のギルドの皆は大丈夫なのだろうか。



「面白かった、続きが読みたい!」


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