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21.グランドマスター

 それから僕達はギルド《オルトレール》に戻った。


「みんなグラス君が帰ってきたよ! なんと魔王軍幹部シャキラを討伐に成功だって!」


「す、すげええええ! 流石術析師グラスさんだぜ」


 ギルドに戻ると凄まじい熱狂の渦に僕は包まれた。まるで英雄の凱旋のような気分である。


「ちょっと、やめてくださいよー」


「遠慮するなよ、お前ら行くぞ。そおれ!」


「うわああああああああああ!」


 始まった胴上げ、ギルド総出で歓迎してくれるのは嬉しいがこれ気持ち悪くなるんだよな。


 元気な事でなによりだな……。


「レピティよ、これは中々面白い光景だな」


「そうですねエルカさん、我らがご主人様として凄い誇りに思います」


 おいおい、レピティとエルカがこっちを笑顔で見ているんだが……止めてくれたっていいんだよ。


「ストップ、ストップ、すとおっぷ!」


「……っ!」


 まさかの胴上げを止めてくれたのはセイラさん? みんなを止めるなんて珍しい、いつもはノリノリだったのに。


「胴上げはここまでにしてもらい、ここらへんで皆さんに重大発表をしたいと思います」


「なんだ、なんだ、セイラ嬢ちゃん胴上げを止めたってことは、凄い重要な事なんだろうな」


「勿論ですよ、これは素晴らしい事です。なんと本日の依頼達成により冒険者グラス君のランクが《グランドマスター》に到達しました!」


「うおおおおおおおお!」


 凄まじい歓声がギルド中に響き渡る。



《グランドマスター》とはいったい何だろう、とにかく凄い事は確かであろうが。ここは探りを入れるか。


「えええええ! 僕が《グランドマスター》に?」


「ええ、当然でしょうね。だってこのギルドにグラス君より活躍した人はいないもの」


「ややめてくださいよ、セイラさん、そんな大したことしてないですって」


「馬鹿いえよ、ギルドの中に誰がグラスさんより魔王軍討伐でここまで貢献した人がいるんだよ!」


 周囲の冒険者のみんなを見渡すと、どこか怪我をしている人が多かった。


「俺もよう、頑張って魔王軍に立ち向かってみたんだよ。だけどさ、相手が強くて普通の魔物にも勝てなかった。皆もそうだよな」


 周囲の冒険者がみんな頷く。


「やっぱりグラスさんはそれほど凄いってことが身に染みたよ。それはこの場にいるみんなが身をもって体感しているはずだぜ」


 な、なんだろう凄いしみじみとした空気になってきたぞ。魔王軍ってそんなに強かったのか。あんまり実感が湧かないけどここは周りの流れに乗るとするか。


「ハハハハハ、そうか僕はそんなに凄いことをしていたのか」


「《グランドマスター》は本ギルドで2人目だな」


「エイマさん!」


 突然すぎる登場、普段は執務室から出ないエイマさんが珍しく表に出てきた。


「なあグラスよ、もう1人の《グランドマスター》が誰か分かるか」


 誰だろう、全然検討がつかないけど。


「分からないです」


「ゼーネシアだよ」


「な、それは本当ですか!」


 ゼーネシアさんって飛躍しすぎじゃないか僕が同じなわけ……。


「事態の凄さに気づいたようだな。お前のギルドでの立ち位置は私を超えたと言ってもいい。なんてったってあのゼーネシアに並ぶ功績を得たのだからな」


「そんな、何かの間違えですって、僕があのゼーネシアさんと肩を並べるなんて……」


「私も正直悔しかったよ。後輩に一瞬で立場を抜かれたからな。だけど私もまだまだ負けられない。お前にある意味感化されたのかもしれないな」


 何だろう今日のエイマさんはいつものふわふわした雰囲気とは違って、凄くギラギラしている。まるで内に静かな炎を燃やしているような。


「ここに宣言する! 私も魔王軍討伐クエストを受注する。グラスだけに活躍させてられるか!」


 エイマさんの声は凄まじい覇気を纏っていて、支部長としての風格を感じるものとなっていた。思わずかっこいいとさえ思ってしまった。


「俺も、俺達もまだまだ負けられないぜ」


「うおおおおおおおお!」


 凄い、エイマさんの意思表示の覇気に感化されて、冒険者の皆の士気も上がっている。この人やっぱりただものじゃない。


「驚いたでしょ、エイマはああ見えてかなり負けず嫌いなのよ。グラス君の急激な活躍をいつも気にしていたんだけど、今回の件で完全に彼女のやる気に火つけてしまったみたいね」


「ハハハハハ……凄い人に目を付けられちゃった気がします。直ぐに追い越されそうですね」


「グラス君、もう少し自分に自信を持った方がいいよ。君は自分が思っている以上に、何倍もたくさんの魅力を持ってるんだから」


「は、はい」


 な、なんだろう、セイラさんの顔が少し赤くなっているような気がする。


「実はエイマをやる気にさせてくれて、私も受付としてではなく、個人的にグラス君に凄い感謝しているのよ」


「あ、そういえばセイラさんはエイマさんとは古い付き合いでしたね」


「そうそう」


 さっきからやけにセイラさんが自分に絡んできているような気が。


「あ、あのね、グラス君……今度私と一緒に」


「グラスうううううう! そろそろ行くぞ」


「うっ……お前エルカ、凄い酔っぱらってるけどどうした」


「すいませんご主人様、私は飲み過ぎないように止めたのですが、エルカさんが話しを聞いてくれなくて」


「いいじゃないか、凄く働いたんだからここらへんで、ぱあっと息抜きをしないとやってられんのだ」


「はあ……お前な、息抜きって言っても限度があるだろう」


「ふふふっ」


 何だ、いつも受付としての表面的な一面しか見せてくれないと思っていたセイラさんの態度が、この時の笑いだけ凄く素の状態のもののように感じた。


「あっセイラさんすいません。うちの者が騒がしくて。さっき何か言おうとしていませんでしたか」


「うん、うん、ごめんなさい、何でもないわ。私がどうかしていたみたい」


 何だろうこの時のセイラさんはとても満足した表情の様に感じたのであった。





「皆さん大変盛り合ってますね」


「あ、あなたはゼーネシアさん!?」


「な、なんだって!」


 ゼーネシアさんの突然の登場に周囲の空気は一気に変わった。支部長エイマさんぐらいしかその姿はほぼ見たことがないものの、その功績は計り知れずに誰もが認めるギルドマスターとして知られている。


 そんな普段は姿を現さないギルドマスターの登場はこれからのギルド活動に大きな波乱を生むのであった。


「面白かった、続きが読みたい!」


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