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19.勧誘拒否

 僕はアルトさんから報酬を受け取った後、レヴィナルト城門前で待機しているレピティとエルカに合流した。


「ご主人様ー待ってましたよ」


「おおー今そっちに行くぞ」


「……」


 あれエルカの元気がないような、いつもだったら「早くこっちにこい」とでも言いそうなわけだが。


 早速僕達はレヴィナルトの都市を離れることになる。


 しかしまだ懸念点が残っていた。


「さて、ここらへんでいいですかね」


 後ろを歩いていたレネが口を開く。


 そう懸念点とはアルトさんの理事長室を出てからずっと僕についてきたこのレネの奴のことである。まさか都市を出ても付いてくるなんて。


「積もる話がありそうですねグラスさん」


「ああ、僕もお前に言いたいことが山ほどあるな、よくも、よくも僕をあんな風に王国から追い出しやがったな」


 そう僕はあの時以来未だにレネから受けた屈辱を忘れていなかった。信じていたレネ達に裏切られた心の傷はまだ癒えていない。


「ああ、まだあなた根に持っていたのですか」


 当たり前だ、あんな屈辱を受けたのは本当に生まれて初めてだ。よくわからない鑑定システムで僕を選抜冒険者にしたと思ったらすぐにクビにした挙句、僕を裏切りボロクソにして王国追放しやがって。


「レネお嬢様お下がりください、この男臨戦態勢に入りやがりました」


「まあ待って、キルティオは下がってていいわよ」


 不敵な笑みを浮かべるレネ、この表情またよからぬことを考えているのか。


「今度は、お前の口車には乗らないぞ!」


「ご主人様私もサポートします」


 一触即発の空気の中、レピティも状況を察したのか僕を援護してくれるようだ。


 しかし唯一いつもと様子がおかしいのがエルカである。さっきからずっと違う方向を見て黙っているが、まあ巻き込むわけにもいかないしここはそっとしておこう。


「ミルティの件は感謝する、だからと言って僕はお前がやったことを許しはしないぞ」


「ふーん、そんなこと好きに思っていればいい事ですね。ただ状況はあの時から変わりました。今日はあなたに話をしに来たんですグラスさん」


 レネはそう言うと僕に手を差し伸べてくる。



「私と共に王国の選抜冒険者に戻りませんか」



 少し沈黙をすると僕はまた直ぐに返答を返す。というか言う事は決まっている。


「……は? 馬鹿かお前はこの状況でよくそんなことが言えたもんだな。今更もう遅いんだよ、絶対お断りだが」


「なっ! はあ? この王国第二王女の私自らがあなたを誘っているんですよ? 冗談は良いですから、大人しく私の提案を受けいれなさいよ!」


「は? そんな提案受け入れるわけないだろ。またお前ら僕を騙すつもりなんだろうが。分かりきってるんだよ。それに僕にはもうエルカとレピティ、ギルドの皆がいるんだ、今更あんな場所に戻りたいわけないだろうが」


 そう僕が言うとレネは驚いたと言わんばかりの目を見開いて唖然とした表情をする。こいつ姫様だから、今まで甘やかされて育ってきたんだろうな。そんな提案普通通るわけねえだろ。


 少しの沈黙が流れると再びレネが話し出した。


「ちっ……ふ、ふうん、そうですか残念ですね。少しは私あなたの事を見直していたんですよグラスさん」


 何をいきなり言い出したんだこいつは、あれだけ僕をいらないと突っぱねたくせに今更戻ってこないかなんて、あまりにも都合がよすぎるんだよ。


「そんなことのために僕を尋ねてきたのか」


「ええ、そうです」


 ずいぶんとあっさりしすぎてないかレネの奴。思えばミルティの件で助けてくれたし、そこまでこいつは悪い奴ではないのか。


 いや分からん頭がこんがらがってきた。一旦落ち着くんだ僕。


「……もうやめた。訳が分からないし興ざめた。皆行くよ」


 僕はレピティを連れて少し離れた場所で、反対方向を見ているエルカの元へ向かう。


「もう行ってしまわれるのですね。私の提案を断るのは構わないのですが、一言だけいいですか」


「駄目だどーせろくな事言わないだろう」




 次の瞬間今まで落ち着いて話していたレネがいきなり、大声を張り上げた。


「エテラカネルカ姉様ああああああ! 王国が、王国が危険にさらされています。いつまで隠居を続けるのですか。いい加減戻ってきてくださいよおおおおおお!」


 突如大声を上げるレネに僕はビビる。普段控えめなこいつはこんな大きな声を発せる人物だったのか。


「っ! な、なんだって?」


「言いたいことはこれだけです。それではまたいつか機会があればお会いしましょう。フフフフ」


 怪しく微笑んだレネ、意味深なことを言い残すと、キルティオという連れと共に僕たちの元を離れていった。




 それから僕は少し距離を置いて1人で俯いていたエルカの元を尋ねた。


「な、なあエルカ、お前レネとは、王国とはどんな関係なんだ」


 エルカの表情はさらに暗くなり、どこか怯えているようであった。


「……」


 これ以上の深追いはやめておいた方がいいかな。


「やっぱ何でもないから、気にしないでくれ。さあこれからどうするかな」


「レネは……私の妹だ」


「え?」


「済まなかったグラス、ずっと隠していたんだが、私の本名はエテラカネルカ・シュレッタ、シュレッタ王国の第一王女だ」


「な……なんだってえ?」


 衝撃の事実に僕の思考は停止した。



「面白かった、続きが読みたい!」


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