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48.完結話 光


「ふう、これはなかなかに厳しい感じだな」


「はあ、グラス、あなた約束はしっかり守っていただきますよ」


「おいおい、なんかしゃべり方がもとに戻ってないか、あの時の笑顔は何だったんだ」


「うるさい! 普段からあんな態度をしていては周囲の人々に示しがつきません」


「まあ、それもそうだね」


 僕たちはあの後、王国を離れてギルドへ向かった。レネがいったん王国を出るというのはすでに話をつけてあるのだった。


「あなたとの冒険者生活、楽しみにしていたんですからね」


「分かってるよ」


 そして僕たちはギルドの中へ入っていくのだった。


「ご主人様お待ちしていましたよ!」


「おいグラス、約束の時間が来たぞ」


「へ?」


「よお、みんな約束通り集まったてきてくれたな」


「ちょっ、ちょっと待って」


「おいレネ、お前しっかりと役に立ってもらうからな」


「いやちょっと、なんでこんなにいっぱい同行者がいるのよ!」


「え? 最初からみんなで行く話じゃなかったか」


「私と二人っきりで行くのかと思ってたんですけど」


「すまんすまん、またあとでな、じゃあ皆行くよ」


「グラスさんレネ様はかなりお怒りのようですよ、私が鎮静の干渉を施して差し上げます」


「誰よ、あなた!」


 そういえばレネがシテリィセリアを見るのは初めてだったな。


「私はグラスさんの契約精霊、原初の精霊シテリィセリアといいます」


「あなたが原初の精霊? 成程、グラスは原初の精霊も手名付けたのですか」


「手名付けるって、ひどい言い方だな」


「ちょっと待ってください」


 そんな中続いてミルティが現れた。


「グラスさんの契約精霊はこの私ですよ。いつからあなたが契約精霊になったんですかシテリィセリア」


「あらそうでしたか」


「エルカさん、今日はクエストの活躍では私が勝ちますからね」


「何を言っているんだレピティ、私を甘く見るなよ」


「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ」


 気づけば掲示板の周りでは僕のパーティーメンバーの騒がしい会話が始まっていたのだ。


「グラス君、依頼はこれでいいの?」


「あ、セイラさんそれでお願いします」


「ふふふ、随分とお仲間が増えたわね」


「まあ、そうですね」


 受付嬢のセイラさんに依頼を渡す僕、思えば精霊会に行っていたためこの情景も久しぶりに感じるのであった。


「……ああああああ!」


「っ!」


 その時レネが大声を張り上げるのだった。


「私帰ります!」


「え? ちょっと待てってレネ」


「こんなつもりじゃありませんでした。やっぱり私たちは以前のような関係があっています」


「ちょっ、まっ」


「キルティオ来なさい!」


「は! お嬢様」


「おい、キルティオ、お前いつの間に現れたのか」


「ということだグラス、お嬢様は以前のような関係をご所望のようだ」


 キルティオはまんざらでもない嬉しそうな表情で僕にそうつぶやくのだった。


「おいおいおい、せっかくクエストも人数分確保したんだぞ」


「知りません!」


 そういってレネはキルティオの転移陣で去っていくのだった。


「がははははははは、グラス、レネと何があったか知らんが振られたようだな」


「うるせえぞエルカ!」


「くふふ」


「ちょっ、レピティまで笑うなよ」



 こうして僕達とレネが冒険者パーティーとして一緒に行動するという異例の事態は実現することなく無難な形で幕を閉じるのだった。



「がやがやがや」


「はあ、相変わらず騒がしい奴らだな」


 そんな中で支部長のエイマさんが現れた。


「エイマさん!」


「おい、グラス、久しぶりにギルドに帰ってきたのに、何も挨拶はないのか」


「確かに、私もそれずっと気になってたかも」


 セイラさんもエイマさんに続ける。


「いやいやいろいろと立て込んでいたんですよ」


「そうだろうな、それで何か言うことはあるだろ」


「分かりましたよ。 ただいま」


「おかえり」


 こうして僕は無事ギルドとしての何気ない生活に復帰することができたのだった。


 本当に本当に僕のスローライフが始まるのである。














 

 はあよかった、あれがグラスさんを最初に能力覚醒へと至らしめた。レネ様、ベクトルが違えば恐ろしいことが起きていたかもしれません。


 しかしみたところお二人の関係は非常に良好です。


 グラスさんは演算能力に飲み込まれることはありませんでした。別に飲み込まれたところで私たちの生活にどうこう影響するわけではありませんが、つらいのです。


 私は原初の精霊シテリィセリア、干渉の力は対象の感情を必要以上にくみ取る。私が常にそばにいるグラスさんが……復讐にとらわれた姿なんてみたくない。


 契約の賭けは私の勝ちですよシェヘレラフォード様。



















 ふむふむ、シテリィセリアの干渉能力は勇者の起源の出力の力、これを光とたとえてみよう。ではロイデミレタの演算の力、これは魔王の起源の力でありこれを闇とたとえてみよう。闇と光、これはおそらくだが能力の所持者の人格にも作用すると私は考えている。


 闇と光の力を持つグラス・グラィシス、二つの能力は奴の人格への作用を及ぼすかと思っていたが、私が見たところいたって普通の光の部分にしかなかった。奴が闇の人格を持つならば追放された、負の感情による復讐心、これが増大して闇の人格を備えているのかもしれないなと思っていたのだが、どうやら見たところその感じはなさそうだ。いたってつまらぬ最後よの。シテリィセリアの奴もそんなことを話しかけてみたら私がそんなことはさせずにグラスが負の感情は自分が抑えるといって出ていったが、その必要もなかったみたいだな。


 最後にシテリィセリアとグラスの人格の闇の部分があるか否かで契約の賭けをしたものだが、これは私の負けみたいだ。実に実につまらない、けど負けは負け、今度シテリィセリアの奴に土産とどけ座をしなくてはなるのう。はあ、まあこれも一興というものかの。


 まあ負けは負け、まあ逆もしかりだがな。



「あははははははははっ」


 精霊会の一室で一人大精霊は人外じみた笑いを見せるのだった。


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