44.パートナー
「バタッ」
「うっ」
「お前はキルティオ?」
なんと中にいたのは動きを封じられたキルティオだったのだ。
「お前達か」
「どうしてこんなところにお前がいるんだよ」
「レネ様の指示で式典を妨害しようとしていたわけだ。お前達もどうやら俺と同じ魂胆なようだな。まあ結果はこのザマだが」
あのキルティオを抑えるレベルの見張りがカロンシュタールの屋敷にいたとは驚きである。
「誰にやられたか聞いていいか」
「ああ、そうだな、どうやら相手はカロンシュタールの専属護衛兵、凄まじく早い動きに俺はなすすべがなかった。お前もいくら強いとは言え気お付けろよ。多分この先にいる」
「お、おお分かったよ」
「しかしこのキルティオ一生の不覚、帰ったらレネお嬢様に深く謝罪しなければ」
すごく悔しそうなキルティオを見て僕はつい同情したい気持ちになるのだった。
「まあ、あいつのイライラは僕たちがすぐに解消してやるから任せとけ。そんな気を負ける必要はないぞ」
「お前達……すまんな、あとのことは任せるぞ」
「ああ」
僕たちはキルティオからレネの件を任されることになるのだった。キルティオは嫌な奴だが、そんな奴に頼みごとをされるのは不思議な気分だ。とはいえ悪くないと思った。
「じゃあ行くよ」
僕たちはさらに奥の扉を開けた。
「侵入者発見、カロンシュタール様の邪魔者は即刻排除する」
「なんだこいつはメイド? キルティオはこんな奴にやられたのか」
「グラス気お付けろ、あいつの足に凄い密度の魔力が集中している」
「なんだって?」
「遅いです」
「うわっ」
凄まじい速度で接近してきたカロンシュタールのメイドの攻撃を僕は間一髪でかわした。足にそう出力を促したのだ。
「何? この攻撃をかわすだと!」
「うーん素早い相手か、面倒くさいな」
「貴様、どうやって私の攻撃を……」
「ここは新しい能力を使わせてもらうよ」
次の瞬間僕は無次元の力を使った。
「あ、エルカさん見てください、あれがご主人様の新しい力ですよ」
「なんだあれ、あいつどこまでぶっ飛んでいるんだ」
「僕が手から出現させた無次元の力は、単純に今までにない魔力の感覚を相手に感じさせているのだった」
「ちょ、まってそんなんどうやって防げば」
カロンシュタールのメイドは無次元の魔力を見て戦慄するのだった。
「ふう、寸止めって結構大変だな」
「はあ、はあ、はあ……化け物め」
僕はカロンシュタールのメイドへの攻撃をわずかの距離で静止した。
「化け物とはずいぶんないいようだな。さて、先に進ませてもらうぞ」
「ま、まてっ! まだ私は負けて……っ!」
「勘違いしない方がいいよ。さっきは僕の気まぐれで寸止めしてあげたけど、今度はうっかりさっきの攻撃を当ててしまうかもしれない」
「ひっ!」
僕はカロンシュタールのメイドに威圧するようにそう言うと、カロンシュタールのメイドは引きつった表情でその場に立ち尽くすのだった。
「じゃあ皆行くよ」
まああてるなんてするつもりはなかったんだけどね。
「おいグラス」
「何だよエルカ」
「お前のさっきの表情凄まじい悪人面だったぞ」
「そうなの?」
僕は想像以上にヤバい威圧の仕方をしていたのだとエルカに指摘されてこの時初めて気づいたのだった。
「あれかな」
ついに式典の扉を見つけた。見張りの目をほぼ欺き遂にここまで来たのであった。
「どうやって入るんだ?」
「うーん正面突破!」
「は?」
「バタッ!」
考える間もなく僕は扉を開けたのだった。
「はいそこの二人ちょっと待ってね~!」
「何者だ貴様! 私たちの式典に割り込んでくるなんて許せん! 誰か早くこいつを捉えるんだ」
しかし見張りは来ることはなかった。というのもキルティオが空間結界を張ってこの部屋だけ隔離していたからだ。
「な、なぜ誰も来ないんだ? 貴様らなにをし……」
「あ、あなたは!? それに姉さまたちまで」
「うん? レネ様、この方たちとお知り合いなのですか」
「え……ちょっとまっ……」
「そうですよ。私はそこのレネお嬢様の相方です。正確には仕事のパートナー見たいな感じですが」
「ちなみに私はレネの姉だが?」
「ちょっ、誰があなたとパートナーになったんですか!」
「ほう、レネ様の姉君でしたか。これは失礼しました。ですがこのタイミングはいささか非常識とも言えます。しかしあなたはここへ立ち入ることを許しましょう……ですがそこのあなた、あなたは少し許容できませんね。仕事仲間だか何だか知りませんが、レネ様の反応を見る限りたいした関係ではないのでしょう? 」
「つまり、何が言いたいんだ?」
「おとなしく引っ込んでろってことですよ、私たちの式典に部外者はいりません。ねえレネ様」




