38.不本意なプロポーズ
「あ、そうだグラス」
「うん?」
精霊会からギルドへ帰ろうとなった時にエルカが突然僕に何かを話そうとしてくる。
「王国での仕事をしていた時なんだが、少々面倒ごとが生じたようなんだ」
「え?」
また面倒ごとに巻き込まれそうな予感を僕はこの時感じたのである。
「レネが隣国の王子様と?」
「ああ、数日前にレネの奴の手伝いをしていたら、突然使節団を連れて訪ねてきたんだ。カロンシュタール、この大陸でも随一の剣術を持った王子と言われているのだが、以前はハイフレードの存在に劣っていたため身を潜めていたが、本格的に動き始めたらしい」
「カロンシュタールか、でその王子様が以前からレネのことを狙っていてプロポーズをしてきたと」
「ああ、王国をよりいい条件にするためにはカロンシュタールのプロポーズを受けるのは悪いことではないのだが……レネの奴がそんなことを本心から望むわけもないだろうに」
「つまりレネの奴が不本意なプロポーズを受け入れなければいけない状況になっているということなのか」
「まあな」
「それじゃ、それでいいんじゃね?」
「あ?」
エルカは僕を威圧してきた。
「嘘だよ、それじゃあ早速レネの奴を助けに行くぞ!」
「流石グラスだ!」
僕たちは一先ずギルドへ戻る前にレネのいるお城に行くことにした。
「そういえばゼーネシアさんはどうしたんですか?」
帰り道の途中で知らぬ間にゼーネシアさんは消えていた。
「また用事があるからどっかに消えたな」
「ああおなじみの奴ですね」
神出鬼没のギルマスである。
「さてさてさて、今度の依頼としてはなんだ? レネの奴にプロポーズをしてきた王子様を自然な形で追い返すというミッションだな……難しくね?」
「あはははは……」
「グラスなら大丈夫だろ」
言ってくれるなエルカ。
「まあ支部長としてまたもやお前達の健闘を祈るばかりである、それじゃあ頑張ってきてね」
「はあ……」
僕達はエイマさんに軽いノリで見送られることになったのであった。
「隣国の王子様ねえ……」
「正直言ってしまいますと楽勝だと思いますよ。この私もいることですし」
「うわああああ、いきなり出てくんなよ」
シテリィセリアが突然僕の前に現れた。
「ちょっと! 何勝手に出て行っているんですか? 契約精霊はグラスさんの呼び出しなしで基本勝手に出て行ってはなりませんよシテリィセリアさん」
続いてミルティも現れる。どうやらもめている感じだ。
「私は契約精霊ではなく、付属精霊ですよ、強制的に干渉能力でグラスさんにエンチャントする形で同行を可能にしているのです。まさにハイブリッドの精霊契約ですね」
「なんですか、それは!」
「はあ」
随分騒がしくなったものだ。この二人は仲がいいのか悪いんだか。
「まあ、いいよ、僕が呼び出さなくても二人とも自由なタイミングで出てきて」
「もちろんですよ!」
「もちろんですよ! じゃありませんよ。少しはグラスさんに気を使いましょうね」
「はい、気お付けますミルティさん」
なんだ、ミルティがシテリィセリアにかなり先輩のような態度をとっているな、原初の精霊を前にかなりの肝の座りようだ。
「さて話に戻るのだけれど、その王子様はいつに来るかわかるか」
「ああ、もちろん調べているぞ」
エルカは胸を張ってそういうのだった。
一先ず王国を訪ねてみるか。
「無事だったようですね。どうやらさらに力を手に入れたようで」
「まあな」
早速僕はレネのいる王の間へと向かったのであった。
「姉様もすっかりそっちへ戻ってせいぜいしますわ。私の足をすぐに引っ張るのですもの」
「なんだと?」
開始早々毒を吐いてくるレネなのだった。
「で? あなたがたは今日は何の用でここに来たのですの」
「おい、レネ、隣国の王子の件について突っ込ませてもらうぞ」
「……」
レネはエルカの一言を聞いて黙り込むのだった。
「あまりその話はしたくありません。帰ってくれません」
「お前も不本意なんだろ? だったら少しは力になってやってもいいなんて」
「ふざけないでください!」
「は?」
「余計なお世話ですね。キルティオ来なさい!」
「は! お嬢様」
こいつキルティオか、すごい久しぶりに見た気がする。
「その者たちを転移魔法で自宅へ帰還させてあげてください」
「ちょっ、それはいくら何でもないんじゃないか? というかキルティオ久しぶり」
「ふん、随分と馴れ馴れしくなったものだな。お前のことは数々の功績で認めているが、今回はお嬢様の命令だ、悪く思うなよ」
「おいおい、ちょっと待ってて!」
「転移陣」
「おいいいいいいいい!」
僕たちはキルティオの転移陣で王国近くの拠点に強制送還されたのだった。
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