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35.堕精霊

「さてこれからどうしたものか、一先ず精霊会の修復作業に挑みたいところであるな」


「随分とロイデミレタにしてやられましたからね」


 建物はもうボロボロである。


「まあ修復作業は私たちに任せてくださいよ。それよりあいつはどうしますか」


 コルネへタが指をさした先にいたのは木陰に隠れてこちらを見ている第二位のヘンリレネである。


「あいつはロイデミレタに操られていて今回の戦いでも足を引っ張っていたからな、罰を与えるべきだと思いますわ」


「ふえええええええ」


「あっ、ちょっとまて!」


 へテレミレアが少し威圧した言葉を放つと、察したのかヘンリレネは逃げていった。


「どうしますかシェヘレラフォード様」


「ふむ、放っておくがいいあやつは操られていただけだからな。罪には問うまいよ。今後の身の振り方次第だな」


「寛大な決定ですわね」


 ヘンリレネは許されたようである。


「それよりグラスよ、お前はこれからどうするつもりなんだ」


「僕は皆の元に戻りますけど。精霊会は去るつもりですね」


「ふーん、そうかせっかくならとある闇落ちした精霊の話を聞いてこないか。お主の力の謎がさらに明らかになるぞ」


「そ、そんな話があったのですか」


「ああ、今回の騒動で興を乗らせてくれたお礼だからな」


「またそんなことを言って」


「まあ聞いていくといいよ」


 そういうとシェヘレラフォード様が話を始めるのだった。














































 魔王の力、それは演算能力である。その源となった力がロイデミレタの力、そもそもなぜロイデミレタがそんな能力を持っているのか。


 それはロイデミレタが闇落ちした精霊だからである。


 原初の精霊シテリィセリア、原初の闇落ち精霊ロイデミレタ、二つの能力は似て非なるものであるが共通点として精霊という点が挙げられたのであった。


 ロイデミレタは秀でた精霊であった、シテリィセリアと同等クラスの魔法力を持っていて、その能力が開花したとき、同等の出力能力を持っているはずなのであった。


 しかしロイデミレタはすでに秀でた能力を持っているシテリィセリアとは同じ道を行きたいと思わなかった。相反したいという意志の元次第にその力は反転した。


 出力から、入力を促すための演算能力、内に秘めた思想がそうロイデミレタを変化させたのである。


 精霊の闇落ちといってもロイデミレタのそれはあくまで抽象的な表現に過ぎない。原初の精霊であるシテリィセリアに反したい、そう強い意志があった結果極限的に反対の能力を手に入れたのである。


 ロイデミレタは思った、いくら自分が現状のまま自らの力を伸ばしてもそれは、原初の精霊であるシテリィセリアの後続になることでしかない。


 自分こそが精霊で最も才能ある存在である、そう自負していたロイデミレタにとってこの事実はあまりに受け入れがたいことであった。


 反対の強い意志によって概念的ではなく自発的に生み出された力、それこそ魔王の演算能力の元となるロイデミレタの力なのであった。


 ロイデミレタは決意する。この力でいつか超えてやると。






「俺がこんなところで負けるわけねえだろおおおおおおおおおおおお!」


「なんだこの地響きは!」


 修復作業に入ったはずの精霊会すべてに地響きが鳴り響く。そしてあたりにロイデミレタの大声が響き渡るのだった。



「奴が動き出したようだな」


「やつとは」


「今に見ておけ、私がお前を招いて精霊会に呼び寄せたのも、あ奴の底知れなさを凌駕しうる存在がお前しかいないと踏んでいたからだ。グラス、最後の戦いになるぞ」


「最後の戦い!?」


「私の力を明かそうぞ。私の力は調和、二つの力を調和させる能力、これをグラス、お前に授ける、演算と出力の力を調和させてすべての魔法陣を新たなる次元、いや次元を超越するレベルにまで押し上げるのだ」


「この力……確かに受け取りました。シェヘレラフォード様」


「なんだか突然の展開ですが検討を祈るぞ」


「ありがとうございます」


 シテリィセリアと僕とレピティとミルティはスワラリフォードさん達にも見送られてロイデミレタの元へ向かった。


 僕はロイデミレタの元へ向かった。







「久しぶりだなシテリィセリア」


「ロイデミレタ……話は伺いましたよ。あなたにそんな動機があったなんて」


「ふん、今更知ったところでもう遅いんだよ。俺は力のリミッターを外した。この俺の力はお前と同等レベルであるが、リミッターが外れた俺はさらにその上を行くということだ」


「しかしあなたはすでに弱体化している。もうこれ以上暴れるのはやめておとなしく罪を償いましょう」


「ふざけるなあああああ!」


 ロイデミレタは凄まじい魔力を放った。


「あれ? これ弱体化している割には魔力が凄まじすぎないか?」


「いや? これは……」


 シテリィセリアは焦りの様子を見せる。


「どうやらリミッターが外れたことで、弱体化の影響を無視できているようです。あまりにも恐ろしすぎるロイデミレタの潜在力、これがシェヘレフォード様が警戒していたものなのかもしれません」


「そうか成程、だから僕に力をくれたんだね。そう簡単にはいかないさ」


「ご主人様!? いつもと少し雰囲気が違いますが」


「契約精霊として私でもわかります。グラスさんの魔力の質が明らかに違っていることに」


 シテリィセリアによって極限にまで引き出されて演算能力と、出力能力、これにシェヘレラフォード様の調和能力が組み合わさった今の僕の力を引き出そうとするのは今が初めてである。


「みんなも凄く驚いているけど、正直僕にもどうなるかわからないな」



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