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32.決着~後半追放サイド~


「たっくなんなんだよ、シテリィセリアの奴さっきまで酔っていたのにいきなり風格を見せだして、しかも空間転移するなら行ってくれよ」


「聞こえてますでしょうかグラスさん」


 その時姿が見えないのにシテリィセリアの声が聞こえた。


「聞こえてるよ。これはどういうことなんだ」


「それはよかったです。ここは習得の間、意識を同調させることができる効果があります。これによってグラスさんには今から出力の力の練度を私と同じレベルである干渉レベルにまで引き上げます。まさにここは習得の間というわけです」


「そんなことができるのか」


「早速始めましょう! まずは目を閉じてください、私と意識のリンクをして能力のイメージを共有します。これで練度が上がりやすくなるはずです」


「こうか?」


 僕は目をつぶると頭の中で電撃が走ったことに気づいた。



「こ、これは!」


 なぜだろう、まだ意識を同調させて少ししか時間がたってないのに、かなり自分の能力の練度が上がっている気がする。今なら以前の出力限界値を大きく超えられそうな気がする。


「はわわわわわ!」


 それになんだろう、さっきからやけにシテリィセリアの奴が焦っているような気がする。


「グラスさん……」


「なに?」


「終わりました」


「何が?」


「練度100パーセント達成……にわかに信じがたいですがグラスさんは私の練度100の出力能力である干渉をものの数秒で習得してしまいました」


「へ?」


 その時シテリィセリアの空間が解除された。


「え? どういうこと」


 一瞬の出来事で状況が変化したため僕は一体何が起きたのか、あまり理解できなかった。そのさなか僕の目は少しだけ光を放っていた。まるで勇者と戦いを終えた時のように。


「すごいです今のグラスさんは私の干渉の力を使いこなせるはずです。出力のさらにその上位に位置する干渉の力、出力の精度もさらに上がっているに違いありませんよ」


「そうなのかな」


 試してみないことにはよくわからないが、そもそも今までの能力で充分であったから試す場所がないのである。


「そしたら今のイメージを魔王の能力の方の演算能力の方にも当てはめてみてください、きっと面白いことができるはずですよ」


「こうか?」


 僕はシテリィセリアから習得した出力練度100である干渉の力のイメージを、自分の演算の方の能力に当てはめて頭の中で反芻した。


「お、おおおおお!」


 すると感覚的であるが不思議と自らの演算能力が上がっていることに気づいた。これは魔王の演算能力からロイデミレタの練度100のレベルにまで上昇しているのであはないだろうか。


「出来てます、出来てます! これは私はすごい人物を目の前にしている気がしますね。やはりあなたは特異点、シェヘレラフォード様のおっしゃる通りでした。それでは早速ギミックへ能力を当てはめてください」


「こうか?」


「真なる力を示せ」


 僕はそのような声が聞こえるギミックの方へ、今の演算能力のイメージを当ててみた。


「これは!」


 するとギミックの中にあった球が光を放ちあたりを照らし出すのであった。









「これが第三形態」


「もうそれでいいや、このロイデミレタの究極の演算能力でお前たちを吹っ飛ばしてやるよ」


「来るぞ構えるんだ」


「かなり力が上がってそうだね」


「倒し買いがまた上がってきた気がするぜ」


 力を全開放したロイデミレタをスワラリフォードたちが迎え撃つ。


「これがこの俺の必殺技。最強の演算能力から生み出される、時空がゆがむエネルギー砲こいつをくらいな」


 ロイデミレタが片手を前に出して構えると、その目の前に高密度のエネルギー弾が生み出された。


「あの魔力はかなりやばそうだぞ」


「一先ずこちらも防御魔法を固めよう」


「俺防御魔法ないんだけど」


 スワラリフォードたちもロイデミレタが出現させたエネルギー弾を前に危機感を抱く。


「遅いんだよ」


 そして準備する間もなくエネルギー弾が放たれるのだった。


「しまった! これでは間に合わない……っ!」


「パアアーン!」


「何!?」


「何が起きたんだ……」


 なんとロイデミレタが繰り出そうとしたエネルギー弾は本人が意図せずに突然消え去ったのであった。


「ば、馬鹿なこんなことが……」


「不発!?」


 スワラリフォードたちはこの状況に困惑しつつもすかさず自分たちのチャンスだととらえる。


「なぜだかは分からんがどうやらロイデミレタの奴力が使えないみたいだ。今のうちに畳みかけるぞ」


「任せとけ」


「了解」


 その後三人でロイデミレタに一斉攻撃をした。


「うをおおおおおおおお」


「これで終わりだー!」


「まだだ!」


「何!」


 その時ロイデミレタは体の魔力を開放して周囲に瘴気を放った。瘴気は体の感覚を麻痺させてスワラリフォードたちの動きを封じるのだった。


「これは動けない」


「くそっ体が」


「2人とも……」


「はははははは、この瘴気は身体の機能を麻痺させるだけではなく有毒成分も含むぞ、お前たちはおしまいだ。Mp消費が激しいからあまりこの技は使いたくなかったんだがな。ここまで追い詰められては手段は選べない」


 ロイデミレタの瘴気の影響は特にへテレミレアとコルネへタに大きかった。スワラリフォードだけは偶然耐性が少しながらあったため何とか動けるようではある。


「スワラリフォード、私の代わりにあいつを倒してくれ」


「俺からも頼むぞ」


「2人とも」


 自分たちの身体が動かないことを認めたへテレミレアは自動回復を、コルネへタは攻撃パフを自らの残存Mpを消費してスワラリフォードに与えたのであった。


「託されてしまったな」


「貴様、なんで動けるんだ!」


「私には自己修復の加護が付与されているんだよ。こういったデパフには耐性がある。しかも今は2人からパフ強化を受けているから、この程度なんてこともない」


「ふざけんなよ。力が使えればお前なんか!」


「どういうわけか力が使えないようだな。こちらにとっては好都合、くたばってもらうぞ」


 スワラリフォードは一気にロイデミレタに接近して剣で切り裂こうとした。


「ふざけるなあああああ」


「くっ!」


 ロイデミレタがさらに瘴気を強めたことで、スワラリフォードの耐性を上回り始めてダメージが入るようになった。


「このまま押し切る」


「やめろおおおおおお!」


 しかし攻撃と勢いを得意とするスワラリフォードはダメージによるひるみに強く、そのままロイデミレタへと攻撃の構えを続行するのだった。


「うわああああああああああ」







 結果ロイデミレタはスワラリフォードの斬撃連打を食らって力尽きることになる。


「ふう、危なかった……あと少しで体力がゼロになるところだったぞ」


 ロイデミレタの身体は消滅して、周囲の瘴気は晴れてスワラリフォードは強敵を倒した達成感の元たちつくすのだった。



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