26.レイアウト
「大精霊であるあなたも随分と落ちたものだ」
「言ってくれるなロイデミレタ、私をこれからどうするつもりだ」
「別にどうとでもしませんよ。こうなってしまった以上これから俺の以前から進めていた目的を果たそうと思います。精霊会征服、こういった組織を俺は以前から掌握してみたかったんですよね。あなたには普段通り過ごしてもらって精霊会が俺の手中に収まるさまを見ていてもらいます」
「果たしてうまくいくかな。お前ひとりでほかの幹部を倒せるか?」
「まあ見ててくださいよ。すでに第二位ヘンリレネはこちらの手中にあります。順位が格下の奴らなど容易に蹴散らして見せます」
「ふん、大口が叩けたものだな」
「いい加減うっとおしくなってきました。俺はここから去りますよ。そこでおとなしくしていてくださいね」
ロイデミレタにシェヘレラフォード様は封印の檻に閉じ込められていた。場所は変わらず大精霊の建物の中、これによりロイデミレタの精霊会征服を自ら阻止することができなくなっていたのだった。
「ふう、大精霊である私をこんな目に合わせるとはつくづくロイデミレタの奴そばにおいていて面白い奴よ。しかしそろそろシテリィセリア達が役割に気づくころな気がするな。面白くなってきた」
「しかしロイデミレタの作り出した空間内部に自らの弱点を置くなんて言うのは随分と抜けているんじゃないのか
な」
「そうわ言いますけど中々気づけるものではありませんよ。それに空間というのは創造主の癖によってレイアウトが決まるものです。創作者の痕跡が残ればそれはいずれ弱点になりうる、概念的な話として避けられぬ話なのです」
「ふーん」
僕はシテリィセリアの話があまりにも抽象的過ぎて何を言っているのか理解できなかった。
「さて、つきましたね。ロイデミレタの魔力が多く宿る第一スポットです。まずはここで魔力解析のついで魔力分解もしていきましょうかグラスさん」
「え?」
シテリィセリアが指さした先には水中生物がたくさんいて水族館のような情景が広がっていたのだった。
「何だこの生物は?」
空間に隔離された中にいる水中生物、見たことがないから魔物の類であるに違いない。
「それはロイデミレタの意志の具現化ではないでしょうか。この空間はロイデミレタがレイアウトしたもの彼の記憶の中にいた水中生物が綿密に具現化されているのだと思います」
「意味が分からん……」
「こういったものは眺めているだけでもなかなかに癒されるものです」
そんなことを言いながらしれっとシテリィセリアは僕に手をつないできた。
「おいっ! いきなり何するんだよ!」
「すいません! 私の情景的センスからしてこう言った場面ではこの行動が一番合うのではないかと思ってしまいました」
「偶然なのかその推理は正しいけど、僕の気持の方を考えるべきだと思うぞ!」
どういうわけか情景的センスだけでシチュエーションを予測したシテリィセリアの感覚はすごいものだとはこの時の僕は思った。しかし人の気持ちを考えるということを少しはした方がいいとも思いさらに突っ込みを入れた。
「人の気持ちですか……私はこうして契約や物事の進行以外で何気ない会話を思えばしてこなかったかもしれません。そういった意味で私はまだまだ学ぶべきことがあるのですかね」
「そりゃあまあ、その境遇ならたくさんあると思うぞ」
「成程」
「それにレピティやミルティにそのことを話せば、もっと学べるかもしれないぞ。二人ともいい奴らだからね」
「それは楽しみですね。お二方が目覚めたらぜひ話してみたいものです」
原初の精霊シテリィセリアは膨大な知識を持ってわいるもののこういった、心情のやり取りには疎いという意外な発見があった。
さらに本人からみんなともっとかかわりたいという意外な気持ちも知ることができるようになり、お互いを知り絆がさらに深まった気がした。
「そういえば本題にそろそろ入りましょうか。ロイデミレタの水中生物のギミックを解くことで彼の力は弱まります。シェヘレラフォード様の指令である内部からの弱体化を実行しましょう」
「分かったよ、しかしギミックか、どうやってとくとか知ってたりするか?」
「いいえ、そのような方法は把握しておりません。グラスさんが自力で考えてくださいね」
「そうなるのかよ……」
僕はまさかのギミックを解くことになり、頭を抱えるのだった。
「えーとまずはこういう場合情報の整理からした方がいいかもしれないな」
まず水中生物の種類は数十匹だ。その中に色違いの同種のもの、大きさが同じもの、個体が同じだが大きさが違うものなど様々である。
「やっぱりここまでばらけると共通の奴をどうこうするというわけではなさそうだね」
「……」
それからしばらく考え込んで時間がどんどん経過していった。
「あっそういえば」
沈黙が続く中で突然シテリィセリアが何かを思い出したかのように話し出した。
「何だよ急に」
「ロイデミレタと以前私はお話したことがあるのですが、その時に好物について伺ったことがありました。その時彼はこう答えていました。水を吸収して膨らむ魚が好きだと」
「水を吸収して膨らむ魚……」
目の前を見るとまさにその特徴を持った魚がいることに気づいた。
「こいつじゃない?」
「そうみたいですね……」
「もっと早くいってくれよ!」
僕は長い間ギミックについて真剣に考えただけにそう思わずツッコンでしまうのだった。
「そんなに怒らないでくださいよ。私もロイデミレタにさほど関心がなかったのです」
「別に怒ってないよ」
僕のツッコミがかなりつよかったようで、シテリィセリアは怒っているととらえたようである。
「しかし何もお無沙汰ないな」
あれから僕が魚に魔法を加えたものの何の反応もなかった。とはいえシテリィセリアが言うにはこれでギミックは達成したというのだった。
「当然ですよ、影響が出るのは外部にいるロイデミレタ自身です。私たちがギミックを解いたところで、その影響をしるよしはありません。しかし確実に貢献はしているはずですよ」
「そうなのかなあ……」
せっかくといたギミックも反応がなくてはなんとも味気ないものである。
「一先ず次のポイントを探しましょう! 魔力解析も欠かさずにですよ」
「まだあるのか」
魔力解析は引き続き行っている。まだ解析の気配は全くないが、レピティやミルティを一刻も早く目覚めさせるためには、手を抜いていられないのである。
「しかしこの空間の魔力はロイデミレタとは関係ないのかな、まったく変化が見られないけど」
「そうですよ、ロイデミレタが作った空間とは言え、そこで完結しているわけで、彼に影響があっても空間には影響はないです」
「じゃあ、今回のギミックで解析が早まるということもないんだな」
「ええ」
少し残念な気持ちになったのだった。
それからしばらく時間が経過した。
「見えてきましたよ、次のポイントです」
「面白かった、続きが読みたい!」
などなど思った方がいましたら下の☆☆☆☆☆から作品への応援をお願いします。
ブックマークも頂けたら幸いです。




