23.物理追放(追放三週目)
「ついに正体を表しやがったな」
高まる大精霊の魔力に僕は本気を出さねばやられることを察知した。
「レピティ下がっててくれ。少し本気を出さないといけないかもしれない」
「分かりました」
「ふふふ、随分と身構えているな。だが安心するがいい、別に力を少し見るだけだ。私が本気になったら、それこそお前は一秒たりとも持たないであろうからな」
「言ってくれますね。そんなことを感じられるのも今のうちですよ。来てミルティ!」
「はい」
「精霊術出力60パーセントで行くよ。最初から全力だ!」
「かしこまりました」
僕は本気で精霊術を放とうとした。
「精霊術・ラグナロク」
「面白いそうでなくては」
凄まじい光があたりを包み辺りに衝撃が走るのだった。
「やったか?」
煙が晴れたころ、大精霊シェヘレラフォード様は床に倒れていた。
「へ?」
「え?」
「もしかして、僕たち勝っちゃった?」
「えええい! ええい! 大精霊である私に何たる無礼を。お前のその力は勇者とも魔王とでも違うではないか! では一体どのような工程を担ってそこまで来たのだ!」
なんだ、想像以上に弱かった大精霊、癇癪を起しているあたり僕の力を図り損ねていたようだ。
「しかしこれは見事だな。お前になら任せられるかもしれん」
「何がですか」
その時辺りが揺れだす。
「来たようだな」
天井から何者かが現れた。
「えええ? うそでしょシェヘレラフォード様負けたんですか。そんなわけのわからないやつに」
黒い羽根、黒いオーラをまとっている男、さながら姿は堕天使のようだった。
「ロイデミレタ、何しに来た、ここへは私の許可なし出来てはならぬはずだが」
「負けておいてあなた様にそんなことをいう権限はないのでは?」
「言ってくれるな、ほんの小手試しの力比べで負けただけだが」
「言い訳は結構ですよ。これからの精霊会は俺の時代です」
ロイデミレタってことは第一位の幹部か。
「おいグラスって言ったか」
「なんだよ」
「お前は第二支部のラボを破壊して、俺の従者であるシレネへレンを壊した。シェヘレラフォード様の戯れに勝っていい気になっているところで悪いが、ここらへんでくたばってもらうぞ」
「何をいきなり、上等だよ」
「裁きの転移」
「何!」
その時ロイデミレタの攻撃によって僕とレピティは異空間に飛ばされてしまったのだった。
「貴様はこの組織から追放だ」
ロイデミレタにより僕は物理的に組織を追放されたのであった。
「ここはどこだ」
真っ暗な異空間に飛ばされたようである。
「みんなは無事か」
周囲を見渡すとレピティとミルティが倒れていた。
「これは大変なことになったな」
「安心してください、お二方はご無事ですよ」
「……っ!」
突如僕に声をかけてきた人物はうす暗い中で姿が良く見えなかったが、その声で誰だかすぐに分かった。
「シテリィセリアか? どうしてこんなところに……君も僕たちと一緒に飛ばされたのか」
「正確には私が自らの意思でここに飛んできました。シェヘレラフォード様にもその旨を伝えましたところ背中を押されましたよ。力を貸して行けって」
「そういうことなのか……シェヘレラフォード様は大丈夫なのか? ロイデミレタは相当危なそうだったが」
「シェヘレラフォード様の心配をするというのはまったく無駄というものです。あの方はすでに最先端をゆきます。ロイデミレタごときに遅れをとることはないでしょう。私の背中を押してくださったときも、この場所は任せてほしいといっていましたよ。それにさっきのことであまり悪く思わないでください。シェヘレラフォード様には考えがあって悪意があるように見せていました。さっきのもその目的のためにグラス様の力を試すよう誘導しただけです」
「そうなのか……」
「それではここから先へは私が案内しましょう。私はあなたとこうして一緒に冒険したかったのですよグラスさん」
「え?」
僕はまさかのシテリィセリアと一緒に飛ばされた空間で冒険することになるのであった。
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