表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

146/173

22.箱庭と悪意


「それじゃあ勇者の魔力はやはりあなたが作ったものだったのですね」


「ええ、そうですね。私が生み出す魔力は形を変えて勇者へと引き継がれました。真相をセルファシアは突き止めて彼は私の元へ赴いてきました。契約をしてくれと」


「契約を?」


「ええ、勇者の魔力は荒々しく制御能力が必要になる、しかしセルファシアはそれを制御の精霊ホルテラを使っていて補っていた。しかし復活したときはホルテラはいませんでしたよね」


「確かにそうですね」


「だから私が契約をしてあげることにしました。長い封印の中で彼もいろいろと思考していたのでしょう、封印前の時点で彼は私のことを知りませんでしたが、解除後真っ先に私の元を意図せずに訪ねてきました。魔王へと対抗したいという意思だけをみせて誘われたかのように」


「だからセルファシアさんの精霊になっていたのか」


「よくもまあ知らないはずの原初の精霊である私を勘で訪ねようと考えたものですね。本人も気づいていないのに普通なら思いつかない、だけどその異質さがあったからこそ私が出現させた勇者の魔力の適合者になったわけですが」


「そうなんですね」


「さてもう一つの本題に入りましょうか。グラス様、あなたが知りたい勇者の魔力、そのきっかけを作ったのが自らに宿る魔力の一部が勇者の魔力なのだからでしょう」


 やはりお見通しのようである。


「そうですね」


「これで勇者の魔力の真相については分かったはずですが何か気づいた点はありますか」


「僕の能力は神の分析というらしいのですが、本当に神様のような方による力だったということが知れたのは大きいです。原初の精霊、世界が作り上げた贈与能力が派生して出来上がったのが勇者の魔力、僕の知的好奇心はとても満たされました」


「それはよかったです」


「しかしまだ気になる点が一点だけあります。僕の能力は勇者の魔力ともう一つ、魔王の魔力も混ざって生まれたもののようなのです。すべての魔法陣を数値化する演算能力、つまりは魔王の魔力なのですが、こちらもシテリィセリアさんの能力なのでしょうか」


「……」


 その時少しだけにっこりと笑顔を作るシテリィセリア、隣にいた大精霊シェヘレラフォード様と顔を合わせている。


「やはりその話になったか」


 そして先に話を始めたのがこれまで静観していたシェヘレラフォード様である。


「魔王の演算能力、その話題が出ることを私は待っていたぞグラス」


「そうなんですか」


 すでに予期していたかのような発言に僕はあっけにとられてしまった。


「実はな、勇者の魔力とシテリィセリアの立ち位置の関係性はその魔王の能力において私の精霊会第一支部の幹部ロイデミレタのものとなっている」


「へ?」

 

 いや精霊会第一位ってことは大精霊様の手下なのではないか。その人物が原初の精霊と同格、そして魔王の元の力を持っているなんておかしくないだろうか。格というものが違う気がするのであるが。


「ふふふ、何か違和感に気づいたようだな。それもそうだろうな」


 またまた心を読まれた感覚、シェヘレラフォード様は全てがお見通しのようだ。


「精霊会第一位ロイデミレタ、奴だけこの精霊会においてアブノーマルな存在なのだ」


 今までベールに包まれていた精霊会第一位の話が明らかになろうとするのだった。





「ロイデミレタさんには署名活動の時もあっていませんでした。しかし名前は聞いたことがあります。第五位コルネへタさんとの戦いのときに妨害をしてきた第二支部のヘンリレネさんとシレネへリンの奴もロイデミレタさんの思惑の元動いていたことを知っています」


「ほう、そこまであやつは手をまわしていたか」


「それはどういうことなんですか」


「まずお前には精霊会の仕組みを教える必要がありそうだ」


 大精霊シェヘレラフォード様の難しい話がまた始まるのだと僕はこの時感じたのだった。




「精霊会はそもそも私が人と人との感情の揺らぎを観測するために作り出した組織だ。私の周囲に起こりうるあらゆる変化を私が興味本位で観測するそんな組織なんだよ」


「どういうことなんだ……」


「だから私はあえてロイデミレタのやつを精霊会に潜ませた。奴は底知れない原初の精霊に匹敵する底知れないものを持っているが、その底知れなさをどう使うか見てみたかったのだ」


「何を言っているんですか……それって巻き込まれた人はどうするんですか。第一支部の連中が第二支部の連中を使って悪いことをしようとしていました。魔道具で依存症になった第三支部の人だっていた。そんなのはあまりにも非人道すぎます」


 僕は即座に違和感を感じていて、それをすぐにはなってしまった。


「ふふふ、いいぞ、そういう反応が見たかったのだ。お前に精霊会であれこれ署名を取らせた甲斐があるものよ。この精霊会は私の箱庭だ。私が何をしようがそれは私の勝手ではないか」


「何を言っているんだ、普通の人間の考えを逸脱している……」


「何を言うか今更。私は人ではないぞ、大精霊シェヘレラフォード、この精霊会の頂点に君臨する、神のような存在だ」


「何を馬鹿なことを」


「ご主人様! 大精霊様の視線が怖いです」


「……っ!」


 その時大精霊シェヘレラフォードの周囲に殺気が放たれる。


「ふふふ、私はお前とずっと会いたかったのだぞグラス。魔王と勇者の能力の融合した神の分析……その力は凄まじいもので、私が目にかけていた原初の精霊シテリィセリアと魔王の演算能力の元となる力を持つロイデミレタの力があわさったといっていい。私の好奇心をさらに増幅させてくれるよ。ここでぜひ手合わせしてみたいところだ」


 巻き起こるさっきと灰色の魔力に僕は緊張感を増幅させた。



「面白かった、続きが読みたい!」


などなど思った方がいましたら下の☆☆☆☆☆から作品への応援をお願いします。


ブックマークも頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ