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15.不気味な提案


「これは! 見事としか言いようがないね。私も低く見ていた気はないが、まさか依存症患者を全員治療してしまうなんて」


「自分でも驚きでしたよ、こういった経験は初めてですので」


「……流石大精霊様が提示をするだけの人物というわけか」


 へテレミレア様は少し考えこむ。


「しかし第二支部が作っていたあの魔法道具は随分と危険なものでしたね。これはやはり大精霊様に報告した方がいいのではないでしょうか。絶対何かよからぬことを考えていますよ」


「やめておいた方が身のためだよ」


「え?」


「第二支部は得体が知れないのだ。我々も確かに危険なことは把握しているが、やはり下手に刺激をするのは好ましくない。それに大精霊様は我々に慈悲を与えると考えないことだ。我々はあくまで信者、大精霊様が干渉することは無く、ただ大精霊様の強い信仰を示すという共通理念の元、調和して成り立っているのだ」


「つまり、第二支部の悪行もその共通理念の中に入っているという事なのですかね」


「そうなるな……グラス、お前には私は可能性を感じた。署名の件だが了承させてもらうとしよう」


「本当ですか!」


「ふん、当たり前であろう。ここまで成果を見せてもらって対価が署名だけというのはかなりの好条件だ。またお前とは友好的な関係でやり取りできる機会を願うよ」


 僕は二つ目の署名を手に入れたのだった。







「シテリィセリア、お前の待ち望んでいた男が遂にここまで来たな」


「シェヘレラフォード様、何故あの方に私の情報を話さず、あのような試練を課したのですか」


「ふふふ、それはな余興だよ。精霊会は私が複雑に調和を壊すように組み込んだものとなっている。その先にあるお主という全ての結果の開示、見事に私のシナリオが作りあげられたというわけだ」


「……私には難してよくわかりません。只初めて会ったときからあの方は私と共通点があると思っていたのです」


「その気持ちを忘れぬことだ。私にも真相は分からぬが、超常的な親和性というお前の直感はいずれ相応しいものを引き付ける。あの者が再びお前の元に出会うとき、私の試練を経て素晴らしい事態が起こるであろう」


「凄い楽しそうですね。第二支部の悪行をわざと見逃し、彼らは予想以上に拡大した悪意を見せています。あのものが潰されなくては良いですが」


「ふふふ、戦いというのはギリギリの物ではなければ面白くない。あのものが第二支部の悪意をどう乗り越えていくか、それを見るのがここ最近で一番の楽しみなのだよ。あ奴に待ち受けている試練はまだまだあるがな」









 二つの署名を貰った。第三位スワラリフォード様の署名と第四位へレネセリア様、あと一つも貰わなければいけないわけであろうが。


 第二支部は僕の事を敵視しているだろうから署名は難しい、かといって第一支部、第五支部は両方とも当てが全くないし、これはかなり難航しそうな予感である。


「中々難しそうですねご主人様」


「うーんそうだよな。どうした者か」


 これからの行動に悩んでいる僕らの前に見知った奴が話しかけてきた。


「グラス様お久しぶりですね」


「お前はシレネへリン!」


 シレネへリンは怪しげな笑みを浮かべて僕達の前に現れたのである。


 



 シレネへレン、こいつは最初に僕が精霊会に飛ばされたときに大精霊シェヘレラフォード様の元へ連れて行ってくれた恩人である。


 がしかし僕がシェヘレラフォード様に気に入られていることが癇に障ったのか、別れる直前では口調が敬語になり僕を競合相手として敵視するようになったのである。


「なんの用だよお前、僕達は競合相手じゃなかったのか」


「ええ勿論ですよグラス様、あなたは私の競合相手、ですのでこうして私普段の商業的態度で接しさせてもらっているのです」


 やはり普通に話していた相手がいきなりこういった口調になると薄気味悪いし不快な気分になる。


「あなたの活躍は耳に伺ってますよグラス様、第三支部と第四支部の幹部の方とも好意的な関係を気づいたようで」


「よく知っているな」


「ええ、こちらの情報網をなめないでいただきたいですね。しかし私の情報網から分析するにあなたは次の動きを決めあぐねている。つてがないからですよね」


「……そうだけど」


 何だこいつ気持ちが悪いな。全てお見通しかよ。



「私は条件をビジネスとしてあなたのお手伝いをして差し上げようと思ってここに来たのです」


 シレネへリンは手を差し出して提案を持ちかけてくる。


「どうですか、私ともう一度一緒に行動してくださいませんか。今度は気に入った仲間という関係ではなくビジネス関係としてです。そうすれば私の情報を提供して差し上げましょう」


「……」


 何だこいつの表情は、シレネへリンと最初に会ったときは人の良さを感じたが、商業という仮面をかぶった時ここまで胡散臭くなるのか、全く好感度が感じられない。


「ご主人様! この方どこか怪しいです。今回は断りましょう」


「うーん……」


 確かに明らかに裏があるが、断ったところで次の行動も定まらないままだ、僕はこういった進展を待っていたのだ。


「いや、ここはあえて承諾した方がいいかもしれないかも、やっぱり進展すべきところはすべきだと思う」


「確かにそうともいえますね」


 レピティは僕の意見に同意してくれた。


「決まりのようですね。それでは早速本題に入りましょうか」


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