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14.分析生成

「魔道具がない俺らに何ができるんだ……」


 ここは第四支部の精神鑑定所、魔法道具を使ったことにより依存症を発症した者たちが集められている。


「随分と沈んだ雰囲気ですね」


「うへへへへへへへへ」


 檻の中に入っている第四支部の患者は僕達を見て怪しげな笑みを見せた。


「思ったより重症だよなこれ……へテレミレアさんはよくもまああんな平常心でいられたな」


「どうやら患者たちの事は他の人には話してなかったようですね。訓練という名の遠征に行かせているとおっしゃっていましたが、そんな嘘も時期にバレる、一刻も早く依存症を治したかったに違いありませんね」


「成程……あんな平然としていたけど、実は結構焦っていたのかもね」


 僕は状況を把握したのだった。


 しかし嫌な予感がするな。これは第二支部のシャスタべが何かよからぬことをしようとしていたのではないかと勘繰ってしまう。この依存症も計画の内だったり。


「シャスタべの所属していた第二支部は想像以上にヤバい事を考えてそうだね。まあ恨みをかっている僕の元へは近い未来に向こうから現れそうだけど、相当気お付けないといけないかもねレピティ」


「そうですね」


 そんなことを話していると第四支部の精神鑑定師が僕達の前に現れた。


「あなた方がへテレミテア様がおっしゃっていた、術師の方々ですか、よく来てくださいました。こちらへどうぞ」







「成程、この方がそのようなお方でしたか」


 精神鑑定士は早速僕達に今回の事情について話してくれた。


「ここのフロアにいる患者さんはかなりの重傷者な部類の方々です、重症な方以外にも問題を抱える方々はいますがそんな方たちも取り扱っていたら、大変ですしね。何か治療薬のようなものが作れればいいんですが」


「そうですね、一人一人の患者を診るのでは限界があるから、何か回復アイテムのような形でアイテムを生成するのがいいかもしれませんね」


「まあ、そんなことができたら苦労しないんですけどね」


「一先ず患者さんを見せてくれませんか」


「分かりました」


 こうして僕は精神鑑定士の一人に比較的おとなしい部類の患者さんを連れてきてもらった。





「精神鑑定士さん、今日は俺をどのように洗脳するおつもりですか。早くここから出して魔法アイテムを使わせてくださいよ。ずっと腕の震えが収まらないんです」


 現れていきなり危うい様子であるが、よく精神鑑定士の方は平然といられるものだな。すごく大変そうだ。


「落ち着いてください。今日は特別に治療師の方をお呼びしました」


「治療師?」


 患者は僕の方を向いてくる。全く信用していない。


「治療師のグラスです。今日はよろしくお願いします」


「……」


 なんか返事がなくて不気味なんだけど。


「と、とりあえず検査をしたいので大人しくしてくださいね」


 そう言うと僕は患者の分析を始めた。


「俺に何をするつもりだ」


「ちょっ! どうしたんだよいきなり」


 僕が分析を始めようとすると突如患者が暴れ出したのだった。いったい比較的おとなしい患者とは何だったのか。


「ストップ! 静まりなさい」


「うっ!」


 患者が暴れ出すと精神鑑定士が電流が流れるスイッチを押して気絶させるのだった。


「ま、とこんな感じなのよ」


「随分と刺激的ですね……」


 僕は思わずため息をつくのだった。




 別に分析は気絶した相手にも出来るわけで、これでも全然大丈夫な状態である。ただ一つ問題があるとすれば、第四支部の人を傷付けてしまうから出来れば気絶の手は使いたくないのである。


「それじゃあ引き続き始めますね」


「お願いします」


 僕は患者の魔法陣を分析した。


 成程、今回の依存症は魔道具の放つ副作用によって生じているみたいだな。術者に寄生して精神を蝕む魔道具、こんなものを作って第二支部の連中は何をしようとしていたのだろうか。


 構造を調べていけば行くほど第二支部の闇を垣間見たような気がする僕、とは言え構造解析を終えた僕はこれは行けると思った。


「鑑定士さん、見たところ患者の治療は出来そうですよ。僕なら特効薬アイテムを作れそうです」


「ええー凄い嘘でしょ」


「私はご主人様なら楽勝だと最初から思ってましたね」


 ここまで息を潜めて静かにしていたレピティであるが、なんだかいきなりまくしたててきた気がする。


「一体どうやって特効薬アイテムなんて作るの」


「そうですね、ただ元となる素材が欲しいので薬品室に案内してくれませんか」


「勿論だよ」

 

 こうして僕は精神鑑定士に薬品室に連れていかれた。僕の能力も流石に何もない状態で特効薬アイテムを作れるというわけではない。レピティを最初に助けた薬草の変化の様に、元となる素材の能力を変化させて効果的なアイテムを作ることならできるのである。


「成程、これは良いですね。早速始めますか分析」


 僕は薬品室の薬品の微小な魔法陣を分析した。かなり複雑な魔法陣が今回は組まれ、それが具現化して薬品室に出現している。


 その様子を見ている鑑定士は驚きの表情を示すのだった。


「うっそ、こんな複雑な魔法陣が組めるなんて、あなた一体何者なの」


「そうですね私から精霊会の方にとって分かりやすく解説いたしますと、ご主人様は大精霊様お墨付きの術師ですよ」


「大精霊様お墨付きですって!」


 薬品室に鑑定士の驚きの声が響き渡る頃に、すでに僕の手元には特効薬アイテムが生成され完成しているのであった。


「出来ましたよ!」


 瓶の中に黄金に輝く薬品、それを見て鑑定士は思わず眼鏡を動かしながらじっと見つめるのだった。


「凄い力を感じる……」


「それじゃあ早速使ってみますか」


 遂に特効薬アイテムの実践が始まったのである。


「あれ、俺は何をしていたんだ」


「おめでとうございます! 無事退院してよろしいですよ」


「あ、ああ」


 僕達は患者たちに特効薬アイテムを摂取した。変化は目に見えて現れている。そして次々と症状が収まった患者は退院していくのだった。


「す、凄い、これは完全に中毒症状が治ってますね」


「流石です!」


「良かった、効果あったみたいですね。引き続き接収して見ましょう」




 気が付けば精神鑑定士の空間から依存症の患者は全て消えていたのだった。


「それじゃあ、ありがとうございました」


「あなたの事は伝説として私の記録に残しておくわ」


「そんな大げさですよ」


 患者を治療し終えた僕達は精神鑑定士に凝視されながらその場を立ち去るのだった。


「なんだか精神鑑定士をやっているだけあってかなり癖の強い人でしたね」


「まあ、そうだね、知的好奇心が高いというか目新しいものに関する関心が人一倍強いんだろうね」


 知的好奇心が強いと言う点に関して僕にもかなり共通点があるのかもしれないと感じたのだった。


「それじゃあ行きますか第四支部へテレミレア様の元へ報告しに」



「面白かった、続きが読みたい!」


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