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13.大量依頼

 ギルド《オルトレール》執務室でエイマさんと魔王軍とシュレッタ王国の戦いについて、話し終えた僕は、廊下で待機していたエルカに話しかけられた。


「おいグラス、エイマ支部長に何言われたんだ」


「いや、別に大したことは言われてないよ、そう言えばあれは何かあったのか」


 ふと掲示板の方を見ると、人だかりができていた。ただ事ではなさそうだが……。


「ご主人様、さっきクエストが大量に追加されたんです。エルカさんと私はまだ見れてませんが、あっという間に人が集まってきていましたね」


「成程、じゃあちょっと見てみるか」


「ザワザワザワザワ」


 こりゃあ近づけそうにないな、誰か道を譲ったりしてくれないものか。


「お、グラスさんじゃないっすか! 見てくださいあれ、おいお前らグラスさんに道を譲ってやれ」


「グラスさんだって? どうぞ、どうぞ、どうぞ」


 ずいぶんと素直な事で、調子狂うなあ……。


「お、おう」


 開けてもらった道を進み、ギルドの掲示板を見ると、そこにはいつにもまして膨大な量のクエストが立ち並んでいた。そしてその内容の殆どが魔王軍の魔物討伐についてのものだった。


「物騒な世の中になったな」


 シュレッタ王国と魔王軍の激突の話はエイマさんから伺った。結果は王国軍の勝利ではあったが、魔王軍はまだまだいて、魔王復活を虎視眈々と狙っているという噂があるようだ。


 だから王国は管轄外の地域にも兵や冒険者狩り含む傭兵を送っていて、僕はそこに遭遇したわけだった。しかし近々動きがあるとは聞いていたが、こんなにも早くだなんてね。


「とはいえ一先ず目立つ動きはしたくないから、今日は薬草採取とかでどうだレピティとエルカ」


 そんなことを言って振り返ったものの、凄まじい視線にさらされて僕は目のやり場に困った。


「はあ、お前空気が読めないのうグラス」


「ご主人様! 見事な溜めですね。思わずこの後の言葉に期待が掛かってしまいました」


「…………」


 やれやれ、これはハメられたな。


依頼名  魔王軍幹部を倒してほしい

 依頼主  アルト・コルバルテ

 場所   レヴィナルト  

 難易度  S

 依頼内容 魔王軍幹部シャキラを倒して欲しい

 報酬   金貨1000枚

 一言   奴らを殲滅してくれ


「わ、分かったよ、そしたらこの一番懸賞金が高い魔王軍の幹部シャキラの討伐に行くか」


 いかん、かっこつけて一番強そうな奴を選んでしまった。お前らこれで満足かよ。


「……」


「イエーイ! みんなグラス君コールを始めるよー」


「ちょっセイラさん突然何を……」


「うおおおおおおおおおお! グラスさん最高!」


「おい! やめろお前ら」


 何だ、この状況は、ギルドの皆に気づけば胴上げをされてるわけだが、痛いからもう少し丁寧にやれよと思う。





「で? 事情を説明してもらおうか」


 僕はセイラさんとレピティ、そしてエルカを座らせて事情を問いただした。


「いやね、いきなり魔王軍討伐のクエストが大量に送られてきたんだけど、みんなこんなの手に負えないって沈んだ雰囲気になってたのよね。そんな時レピティがご主人様なら余裕ですがって言いだしたの」


「すいません、空気を変えたくてつい」


「まあ、嫌な流れを断ち切れたなら良かったけど、いやそれだけじゃないだろ多分」


 僕はそっぽを向いているエルカに視線を送った。あからさまにしらばっくれた表情はかなりの煽り力を感じる。


「いやねえ、みんなノリに乗っていたものだから気持ちよく言ってしまったわけよ」


「何をいったんだよ」


「グラスが魔王軍のクエスト全部請け負っちゃうよって」


「やっぱりお前が元凶じゃないか!」


「す、すまない」


 冗談じゃないぞ、こんなの絶対に無理だ。今更戻って撤回するのは、ちょっと厳しいし、面倒くさいことになってきたぞ。


「どうするんだよ、クエスト全部は先ず無理だし、皆の前で幹部倒すって言っちゃたし」


「ま、まあ流石に全部は無理だと思ったし、少しくらい皆も分かってくれるよ。ただ幹部の件については擁護できないかも」


「セイラさん……」


 フォローになっているような、なっていないような感じ。


「それじゃあ、今回のクエストは魔王軍幹部シャキラの討伐でいいかしら」


「ま、まあそうなりますね」


「了解したわ。早速グラス君の登録を済ませてくるね!」


「お願いします……」


 ずいぶんとあっさり進めてくれるものだな。魔王軍幹部ってもう名前からして強そうなのだけど、僕は一体どうなってしまうのだろうか。


「面白かった、続きが読みたい!」


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