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5.誘導


 さて、一先ずつきましたけど。少々私は野暮用ができましてお先に失礼させていただきます。ここからは自由行動ということでお願いします。


「は? おいふざけんなよ。僕を初代様のところまで連れてってくれるんじゃないのか」


「私が命じられているのはあなたを精霊会拠点付近の街まで連れていくこととのみですよ、自力で頑張ってたどり着いてくださいね」


「は?」


 そういうと案内人Aは消えて僕達は取り残されたのだった。


「これからじゃあどうすればいいのかねレピティ」


「私もわかりません!」


 さっきっからずっと黙っていたレピティ、すごい空気の読みっぷりである。


「いやあ、こんにちは」


「誰?」


 その後知らない人物に話しかけられるのだった。







「ふふふご苦労だったな案内人A」


「その呼び方はやめてくださいよ、本当に私の話をされているのにあたかも他人のようにふるまうというのは、気持ちが悪いものですね」


 案内人Aがローブを取ると、その姿を現す。


「そりゃあ、そうだろうなシテリィセリア。ただあいつを精霊会へ案内する役割は全ての事情を知るお前にしかできない役割だったのだ。よくやってくれたぞ」


「はい、しかし本当にあの者はシェヘレラフォード様の元まで来れるでしょうか」


「ふふふ、心配するな。運命はすでに決まっているのだ」


「流石の安心感です」


「まあ、一先ず向こうからこちらに来るのを待とうではないか」


「はい」









「私は精霊会の会員を募集しているものだ。お兄さんたちここら辺ではあまり見ない顔だけど興味ないかい?」


「いやいや、僕達は別に会員になろうとしてここに来たわけじゃ……」


 いや待てよ、案内人は自分の方から初代の元へたどり着けって言っていたから、こういった誘いは少しでも受けたほうがいいのかもしれない。


「そうか、残念だ、せっかく新人が増えると思ったのに」


「待ってください、やっぱり入ります」


「本当に? ありがとう! 私は精霊会会員Aと呼んでね」


「え? それ名前なんですか」


「いやコードネームだよ。私は精霊会勧誘係として雇われているだけだからね。勧誘した人数によって報酬がもらえるのさ。だから何者でもない」


「そ、そうなんですか」


 それから僕は誘われるまま会員Aの案内を受けた。


「精霊会では信徒たちがたびたび集まって精霊を崇めているんだ」


「連中は一体何が目的でそんなことしているんですか」


「たぶん崇めたその先に幸福があるだろうという考えの元、常日頃行動しているみたいな感じかな。精霊会の崇める精霊は他のものとは性質が違くて崇めるに値するものとなっている原初の精霊らしいからね。まあ普通の人は不気味で理解しがたい感覚だろうね」


「そうなんですか、それは中々不気味な奴らですね」


 やはり原初の精霊がここにいるのか。


「君たちは精霊会に入って一体これからどうするつもりなの」


「え? 僕達? そうだなー分からないけど、とりあえず何も考えてないですね、一先ず信者の誰かに話しかけてみようかなと」


「君達は気楽でいいね。実に羨ましい事だよ」


「そんなこと言うんだったら、そっちはどうなんですか」


「え? 私のことかい? 私は食い扶持が勧誘だからね、日々身を削られる思いだよ」


「なるほど……まあ頑張ってください」


「ふふふ、お気遣い感謝だよ」


「しかしこの場所にも人が訪ねてくるんですね」


 てっきり精霊都市から転移したから異次元かなんかの異質な空間に来たのかと思っていた。


「精霊会拠点は複雑な場所に位置しているからね。三重構造の魔法陣によって、地図には隠されているんだよ。君は何かしたいという欲求にかられたことはあるかい。地図にはない未知の場所、そこを追い求める冒険者がたびたびここに訪れてくるんだよ。私もそんな人の一人、ただ流れ着いた人がこの精霊会を熟知するには時間がかかる。早すぎる決断によって撤退されるというのも惜しいからね。私はそんな人々に精霊会のすばらしさを教えてあげるんだ。気づけば勧誘係に任命までされていたわけ」


「成程、すごく共感できる話だ」


 ということは冒険者だった人も精霊会の会員となっているのか。方法は違えど僕も知識の好奇心でここへ流れ着いたわけだからな。


 思いのほか非常に面白い話が聞けた気がする。結果としては精霊会の全貌が分かってきたぞ。


「それで精霊会の会員の集団は何処から現れるんですか。見たところ周囲に一見普通の人しかいなくて、どう動けばいいか判断するのが、とても難しいものだと感じているのですが……」


 案内人Aが僕たちを置いていった場所を見渡すと一見普通の人しかいない。この人たちが精霊会の会員というわけでもないだろう。


「そうだねご名答だよここにいる人たちは一般人だね。別に精霊会に入らない人でも全然ここで過ごすことはできて、むしろそれは歓迎されている……とはいえこうまで人が増えると精霊会の会員を見つけるのは非常に難しい判断の材料となってくるよ」


「そうなんですね」


「精霊会には師団なるものが存在するんだけど、噂ではある師団は自分達の行事を完遂するために定期的に会合を開いているそうだ。その会合らしき集まりなら目立つからすぐ見つかるんじゃないか」


「随分と雑な勧誘ですね」


「まあ私はいつもこんな感じさ、ここへ来た人へ適切な情報を与えるただそれだけのね」


「成程」


「分かってくれたかい? 君はなかなか物分かりがよさそうだな。ということで追加情報だ。師団には師団を取りまとめる幹部たちが複数人存在している。彼らの力を利用することこそ、最も精霊会で有利に立ち回れることができるぞ。君に幹部たちの力を利用する覚悟はあるのかな……なあんて、ぶっ飛んだスケールの話を最後に行ってみたけど、ほぼ平会員しかなれないけどね。君らもよくて上会員になれた御の字じゃないの? 現実は甘くないからね」


「成程幹部か」


「やれやれやれ、思ったよりいっぱい話してしまったな。それじゃあ私は引き続き勧誘を続けるけど、君たちも精霊会会員新人としての生活を頑張ってくれよ」


「おう分かった」

 

 それから会員Aは僕たちの元を去っていくのだった。


「大体事情が把握できてきましたねご主人様」


「ああ、一先ずその会合とやらを見に行こうか」








「マリオネットですか」


「ふふふ、面白いだろ。私の操術は今度の設定は会員Aだ。これでグラスの奴は精霊会の全貌を知ることができたというわけだ」


 グラスから離れた会員Aは過ぎに転移してシェヘレラフォードの手元へアイテムとして還元された。


「それは案内人A役の私がやればよかった気がしますのですがシェヘレラフォード様」」


「甘いなシテリィセリアこういった誘導には自然さが大事なんだよ。演出だよ演出、それに嘘はついてないぞ。まぎれもないここは街だし、精霊会会員もその一部でしかないしな」


「そうデザインしたんですもんねシェヘレラフォード様が」


「デザインというのは表現が悪いではないか」


「すいませんでした」


「さてこれで準備は整ったな。あとは腰を据えて待つとするか」


「そうですね」


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