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3.見送り

僕たちはレネから借りた部屋で一晩泊まっていいということになった。


「しかしエルカさんがいきなりレネ様のお仕事をしたいだなんて驚きですね。私はかなり悲しいです。一回の旅だけとは言えエルカさんと旅ができなくなるなんて」


「それはすごく同意、でもあいつの決断だから止めることはよくないと思うんだ」


「またすぐに会えればいいんですがね。これは長旅になりそうな予感がするので……」


「そうだな、またすぐに会えるということを願うしかない」


 そんなことを話しているとミルティが出てくる。


「皆さんセレネティリア様と連絡をしてきましたよ。明日精霊都市に来ていいとのことです。またなんかグラスさんに話があると使節の方が以前いらっしゃったみたいですよ」


「使節の方?」


「ええ、精霊会という組織のようです」


「精霊会? ミルティの方が詳しそうだけど」


「いえ、私もまったく知りません」


「そうか分かった」


 なんだか進展しそうな気がするぞ。


「まあ今日は休もうまた明日」


「また明日ですね!」


 みんなは休息についた。




「おはようみんな」


「エ、エルカ!?」


 僕たちが目を覚ますと王国のドレスを着たエルカが迎えてくれた。


「おおい! お前ら、何こっちをジロジロ見てくるんだ」


「いやっ、ごめんつい見入ってしまって、ねえ……」


「大変お似合いですよエルカさん」


「うっ、そ、そうか、ならよかった」


 エルカは恥ずかしそうな表情をするのだった。


「そうだお前達はもう城を出るのか」


「ああ、そうだな。セレネティリア様にあってくる」


「ほーん、確かに奴なら何かしらの手がかりを持っているかもな」


 しばらく黙り込むエルカ、僕たちも何となく空気が重たいことに気づいた。



 とはいえ時間は刻々と過ぎるものである。僕たちは身支度をしているととうとう王国を出る時間になってしまった。


「な、エルカ、業務はしなくていいのか」


「うん? 業務か? ああ、レネの奴に今は任せてるから大丈夫であろう」


「おいおい……」


 今頃レネの奴がエルカが持ち場を離れて怒り狂っている光景が目に浮かぶ。


「ま、まあ、あと少しだけど僕もお前と一緒に入れてうれしいよ」


「お、おう」


 さっきから浮かない表情のエルカ。なんだかこっちも悪い感じがしてしまう。


「じゃ、じゃあそろそろ行くなエルカ、王国のお仕事がんばれよ」


 そういって部屋から出ようとすると、エルカが突然手をつかんできた。


「ま、待ってくれ」


「うお! どうした?」


「いやっ、すまないなんでもない。元気でな」


「あ、ああ」


「エルカさんもお元気で」


「あ、ああレピティもじゃあな」


 そういって僕たちが部屋から出ようとすると何者かが部屋の前で待ち合わせしていた。


「まったく! お姉さまは旅の見送りもろくにできませんの」


「う、うをおおおおお! お前はレネ!」


 現れたのはレネであった。


「お姉さま、あなたグラスと離れて一時的でも私のもとで働くと決意したんじゃありませんの、なのに何なんですかその醜態は」


「レ、レネ! こっち見るなよ。なんでお前がここに」


「あなたが持ち場を抜け出してグラスの元へ行くことなんて想定済みですわ。一体どんな顔をしていくと思ったら、何ですかその姿、私はがっかりしました」


「な、なんだと!」


「覚悟を決めたんですから、しっかりしないさいよ!」


「うっ、分かったよ」


 エルカの表情が引き締まると僕の方を向いて、少しやけになった表情で迫ってくる。


「ど、どうしたエルカ、そんなに睨んで」


「絶対また戻って来いよ。約束だからなグラス」


「お、おう、当たり前だろ!」


「ふん! ニヤ」


 その後エルカは突然笑顔になった。


「また会える日を楽しみにしているからな!」


「お、おう……当たり前だろ!」


「エルカさんもどうかお元気で、また会いましょう!」


「ああ、わかってるよレピティ」


 その後なんだかこっちがエルカを引き戻したくなる気持ちになったが、僕たちは部屋を出る扉に手をかけるのだった。


「ありがとうなレネ」


「ふん、お礼を言われる筋合いはありませんは。そっちこそ姉さまのためにもすぐに用事を済ませて戻ってくるんですね」


「ああ、わかってるよ」


 こうして僕は王国を出て、精霊都市へ向かったのであった。


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