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50:仲間以上.

「……師匠」


「ゼーネシアさん大丈夫ですか」


「ええ、大丈夫ですよ。いつもの事ですので師匠は、いつの間に私の手の届かないところに消えてしまうんです」


「それは中々大変ですね……」


「まあ、過ぎたことを悔やんでも仕方のない事ですし……それにグラスさん、本当にあなたはよくやってくれました!」


 直ぐに気持ちを切り替えてくゼーネシアさん、流石ギルドマスターだという気持ちに僕はこの時なった。


「間に合ってよかったです」


「そうですね……あと少しグラスさんが遅かったかと思うと、とても恐ろしい事だと思います」


「本当にその通りですね!」


 その時レネが僕達の会話に割り込んで、僕に指を突きつけてくる。


「グラス! あなた遅いんですよ救援に来るのだが。私達がどれだけ耐え忍んでいたか分かっているんですか」


「おいおい、助けに来てあげたのに随分ないいようだな。そういえばいつもの介護要員の転移騎士はどこいったんだ」


「介護要員ですって! 私は介護されるほどお子様ではありません! キルティオの事ですよね。私は彼に頼り過ぎていると最近思っていたので、今回は一人で業務をこなそうと思っただけですが……」


「そうなんだ……レネお嬢様も随分と成長したんだな」


「なんですかその上から目線は、あなた本当に変わってませんね。魔王迄倒したのに全く活躍に対して人格が伴ってません。ハイフレード様の立ち振る舞いの足もとにも及びませんわ」


「いや、別に足もとに及ばなくて構わないんだけどな……」

 

 しかし未だにハイフレードの話題を出してくるあたり本当にあいつのことをレネは慕っていたんだな。


「なんだ、なんだ2人とも随分と仲がいいじゃないか」


 その時エイマさんが僕たちの会話に混ざってきた。


「な、何を言うのですか支部長さん。私がこの男と仲がいいわけがないじゃないですか」


「そうか、でも私と二人の時はよくグラスの話をしていたよな」


「そ、それは……もういいです。無事魔王は掃討できたのでここから立ち去ろうと思います。それではお先に失礼いたしますわ」


 エイマさんの言葉に動揺したレネは兵士達を連れて早々に立ち去っていくのだった。


「素直じゃない奴だな」


「あいつは昔からあんなもんだぞ」

 

「流石姉様が言うと説得力があるな」


「そうだろ?」


 エルカがレネの評価を語るとエイマさんは納得して頷くのだった。


「みんなあー!」


 この声はセイラさんである。無事そうでよかった。


「良かった、無事魔王を倒したのね。一時はどうなるかと私は思ったのよ」


「そりゃあねえ、まあグラスさんですから当然の事だろうが」


 エイマさんが軽口を叩く。


「やめてくださいよ! エイマさんそんなこと言う人でしたっけ?」


「お、おう、まあもうなんか既視感を覚えてな、ついつい言ってみたくなってしまったんだよ」


「はあ……」


「しかしエイマの言う通りだよね。毎回グラス君が何でもやっちゃうからさん付けしたくなっちゃうかも」


「いやセイラさんがさん付けするのは流石にやめてほしいですって」


「分かってるわよ」


「それじゃあ、そろそろ帰ることにしますかね」


 そんな感じで僕は一通り魔王を倒してから、皆の無事を確認することになったのであった。勇者セルファシアの復活により勇者パーティーに入ることになった僕であるが、いきなり悪夢のパーティー追放を言い渡されて一時はどうなるかと思った。


 とにかくいろんなことがあり過ぎた気がするのであるが、何とかここまで普段通りの状態に戻せたのではないだろうか。


 いくつかひっかかる点があるのはまだまだ、考えどころではあるだろうが、一先ずはそんなことを忘れて、なんでもない日常を過ごしたいなと思う。


 


 


「ご主人様―!」


「ようレピティ、調子はどうだ」


「私は絶好調ですよ。ですがエルカさんの体調があまり思わしくないようです」


「エルカが?」


 ふとエルカの方を見ると顔が青ざめて如何にも体調が悪そうであった。


「これは一体どうしたっていうんだよ」


「いや、どうやら私は食あたりをしてしまったようなんだよ」


「ああ、やっぱりそうなったのか」


 魔王を倒したことによって宴を先日ギルドで行った僕達、エルカはその宴で凄いはしゃいでいで暴飲暴食を繰り広げていたのを覚えている。


「そりゃあ、あんだけ暴れてたら体調も崩すわな」


「何も言い返す言葉がないわ」


「それじゃあ今日はエルカは留守番ということでいいか。僕とレピティで依頼は受けることにするけど」


「ああ、それで頼む。今日は休ませてもらうよ」


「分かった」


 魔王を倒して僕達の日常は元に戻った。今僕は変わりないギルドでの生活を送っている。冒険者としてギルドに来た依頼をただこなすだけの生活。ただこの何とでもない日常が溜まらなく心地がいいのである。


「では今日私はご主人様と2人でギルドの依頼を受けることが出来るのですね」


「まあ、そう言うことになるね」


 何だろうレピティは凄く嬉しそうな表情をするのだった。


「おいレピティ! 私がいないからってさっき喜んだだろ!」


「いえいえ、そんなことはありませんよ。しっかりとエルカさんの事も心配しています!」


「そ、そうか、だったらいいわ。2人でせいぜいギルド依頼を楽しんでくるんだな」


 そんなことを言いながら肩を落とすエルカ、少し可哀そうになってきた。


「おいエルカ、何かお土産でも持って帰ってくるから、待っててくれよ」


「はい私からもエルカさんにお土産を考えておきます」


「ほ、本当か! ありがとう」


 エルカは調子を取り戻したように見えたのだった。





 それから依頼をこなした僕とレピティはギルドに戻る前に見通しがいい場所で休憩をしていた。


「ご主人様……遂に私達は魔王迄倒してしまったんですね」


「そうだね……まさかこんなことになるなんて思わなかったよ。僕はただ普通に平凡な生活を送りたかっただけなんだけどね」


「意識せずに凄い事をやってのけてしまうのがご主人様の凄いところですからね、それに平凡な生活ならまた手に入りましたよね」


「そうだね……また何か起きなければいいけど」


「まあ、その時はご主人様が軽く障害を退けてしまうのではないでしょうか」


「レピティの期待が重いのだけれど……」


「私もその時はずっとついていきますよ」


「それはとても頼もしい心意気だよ」


「私たちここ数年で本当に頑張ったと思いませんか。やはり最初にご主人様と出会ったあの出会いは私にとって運命的なものだったと今でも思います」


「あの頃は自分も運命的だなんて大げさだと思っていたよレピティ、でも今なら僕も大げさではなかったと思う。僕が今こうして充実した生活を送れているのは、本当にレピティに会ったからっていうのがデカいよ」


 本当にそうなのである。もしレピティや信頼できる仲間が居なかったら、なぜ今こうして生きているのかすらわからない。それくらい本当にみんなの存在は自分にとって大切なものとなっていたのであった。


「……」


 そう僕が言うとレピティは猫耳をたたんで顔を赤らめる。


「凄いい表情になっているけどレピティ」


「やめてくださいよご主人様……」


 僕は思わず可愛いと思ってしまった。


「レピティには凄くお世話になってるからな、そろそろ仲間以上の関係を気づきたいなんて思ってたり」


 あれ、何言ってだ僕は、レピティの挙動につられて思わず口を滑らせてしまった。


「ご主人様!」


 その時レピティが僕に目掛けて抱き着いてきた。あれ、いままでレピティが僕に向かってこんなに積極的に来たことがあっただろうか記憶にないな。


「ちょっ! どうしたんだよレピティいきなり」


「す、すいません、仲間以上の関係になっていいと伺ったのでつい体が動いてしまいました」


「そ、そうだよね……仲間以上の関係だし何も不思議な事じゃない」


 思わず動揺してしまったが僕はこの時覚悟を決めた。


「遠慮なくいいぞ」


 そして僕はレピティに手を広げて歓迎した。


「ご、ご主人様!」


 その後レピティは僕目掛けて勢いよく抱き着いてくるのだった。



二部終わりました。明日から最終部を毎日投稿します。

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