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49.封印

「終わったのか……」

 

 あれだけ絶望的な魔物の大群が今では全て消えることになった。辺りは閑散としていて、勝利に気づくと歓声が巻き起こることになる。


「うをおおおおおお!」


「流石グラスさん!」


「これはもう、私はグラスに頭が上がらんわ」


「あいつなら絶対やってくれると思ってました」


「ご主人様―! やりましたね」


「ああ、しかしあれだけの魔物と対峙するのは本当にきつかったな……」


「またまた、そんなこと言いつつも直ぐに殲滅してしまったじゃないですか!」


「そ、そうだよな……はははははは!」


「グラスうううう! よくやってくれたぞ。感知したら魔物の反応は全て消えた! 私たちの完全勝利だ!」


「ははは! 良かった……それなら出向いた価値があったというものだ」


 意識がくらついてきた。連日の能力仕様でかなり疲労がたまっていたのかもしれない。


「ごめん、僕はちょっと休ませてもらうよ……」


 僕は視界がふらつくと、倒れそうになるほどの脱力感に襲われるのだった。



「いや、まだ終わりじゃなさそうだぞ」


 え? セルファシアさんはこの局面で何を言っているんだ。もう魔物は僕が全部殲滅させたじゃないか。この局面で終わりに決まってるんじゃ……というかしばらくもう僕は力を使えなそうだし、まだ終わりじゃないなんてことがあればいよいよヤバい気が……。


「嘘……」


 あれなんで魔物を全部倒したのにゼーネシアさんは戦慄しているんだ。


「グラスさん逃げてください!」


 逃げて? レネの奴は何を言っているんだ。魔物の奴はもうすでに殲滅したはずじゃ……。


「ぎゅわああああああああ」


 その時僕は背後に凄まじい魔力を感じた。この魔力は魔王ブォネエセテラのものである。


「ああ、なんだよ……あいつまだ生きていたのか……まずいからだが動かなくて」


「ぎゅわあああああああ!」


 この場で動けるものは恐らく誰もいない。このまま僕がブォネエセテラの攻撃を受ければ完全にアウトであろう。これは遂に僕の人生も終わったのか……。


「バキバキバキ!」


 その時ブォネエセテラの攻撃をなにものかが防ぐ……あれはプレセネリテ?


「よく魔王軍の大群を殲滅したね。その様子を見ていて心が動かされたよ。流石に君の勝ちでいいと思う。今更本体の出る幕じゃないよね」


「おい! 断片のくせにこの本体である私の邪魔をするな!」


「いやいやいや、もうあなたはここで終わりですよ」


 プレセネリテはブォネエセテラの足止めをしてくれているようだ。でも足止めだけでは何も進展がない気がするのだがどうなのだろうか。


「勇者はいるか」


「私が勇者だが、誰だお前は?」


「私は魔王ブォネエセテラの断片魔王プレセネリテだ。お前に頼みがあるんだが、もう一度魔王ブォネエセテラに封印の術を使ってくれないか」


「な、何を言い出すんですかあなたは! 師匠!? そんな奴の言葉聞いてはいけませんよ! せっかく戻ってこれたのに」


「ふん、やっぱりこういう役回りか」


「師匠? 何を言っているんですか」


「ゼーネ、短い間だったけどお前と新たな仲間たちを見ることが出来て良かった。私は長い間封印されていただけに久々の外の世界は凄く新鮮だったよ。お前達を見ていて思ったのは、私が居なくても十分世界を守ることぐらいは出来るだろうなという事だ」


「そんなこと言わないでくださいよ! 師匠だってまだこの世界にいていい筈です!」


「私はとっくに言い伝えではなくなった人物であるのだ。今更復活して勇者であるという事を公表しても違和感しか残らないだろうからな。魔王と対峙して好みを再び封印する、これは私にとって理想の結末と言えるだろう」


「そんなはずがあるわけないじゃないですか!」


 ゼーネシアさんは初めて涙を見せて勇者セルファシアに寄り添った。


「セルファシアさんがまた封印を使うのか」


 それは勇者らしい決断ではあるとは思うけど、やっぱりゼーネシアさんは辛いだろうな。


「さらばだ、ゼーネとその仲間たち、私は再び魔王と共に封印されることになる。今回はかなり魔王が弱っているから制約はなくて済みそうだ。ゼーネもあの時みたく制約を背負うという心配をしなくて大丈夫だぞ」


「本当に、行ってしまわれるのですね……短い間でしたが……残念ですが、これしかやはり方法はないのかもしれません。最後まで師匠は立派でした」


「ふん……もう魔王は復活しないだろうから私も最後という事かな……ボーナスタイムともいえるこの期間中々楽しむことができた」


 そう言うと勇者セルファシアが僕の方を去り際に見てくる。


「グラスと言ったか……お前なら私の意思を継げるに違いない。まだまだ未知の事が直面してくるとは思うが、その時は私の生きざまでも思い出して、奮起することをお勧めするぞ」


「相変わらず凄い自信ですね」


「当たり前だろ、私は勇者セルファシア、伝説足りえる存在であるから、それくらいの心掛を持ってやらなくてはならない」


「分かりました、セルファシアさん! 僕は基本的に使命とかそういうのに縛られたくないたちなんで、あなたの意思を継ぐつもり話ありませんが……ゼーネシアさんの安全は僕が保証するんで心配しないでください」


「ふん……勇者の意思からはかけ離れた見解だな……。相変わらず私はお前が苦手だ」


「それは僕も同意見ですね」


 そんな会話を繰り広げるとセルファシアさんは魔王の方へ振り向き封印の出力を上げていく。


「さあ魔王ブォネエセテラよ。私と再び永遠に封印されて行こうじゃないか」


「ふざ、ふざけるなよ! また貴様か!」


「よくやったぞ勇者セルファシア、私もその封印に同行しよう」


 プレセネリテもセルファシアの封印に共鳴して補助を始めるのであった。


「うわああああああああああああああ!」


「さらばだゼーネとその仲間たち」


 辺りは光に包まれて行って、プレセネリテとセルファシアは魔王ブォネエセテラを自分達と共に封印することに成功するのであった。





次回で2部終わりです。


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