12.嬉しくない~レネ(追放)サイド~
「いやはや、ハイフレード殿無しではこの王国はお終いだよ。これからも王国を頼むぞ」
「勿論ですとも、シュレッタ王、敵勢力殲滅こそ私の至上の命です」
「お前達も俯いてないで、次回もハイフレードの支援を任せたぞ。何今回も十分やってくれていた、ま、ただハイフレード殿だけで十分だった気もしたがな……ガハハハハハハ!」
「……」
レジンさん、システラさんが無言で俯くのも仕方がない。私たち選抜冒険者のあれだけ自信があった自らの技は魔王軍幹部の前では全く無力だった。これから先の戦いで自分達はお荷物なのではないか、そんな疑心が生まれているに違いない。
「みんな今回も凄い助かったよ」
愛しい筈のハイフレード様が励ましてくれるも、何故か全く喜ぶことが出来ない。自分達の不甲斐なさもあるのだが私にはもう1つの感情が芽生えている。
「は、はい……」
私には無力だったことよりも更なる疑心が密かに生まれていた。私が信仰していたハイフレード様は果たして味方なのだろうか。魔王軍幹部ゲオルガーを倒したあの時の笑み、それはまるで命を弄ぶかのような残虐さを秘めていたような。
それから私たちは肩を落としながら、王の間から立ち去ることになった。
「……今日の打ち合わせはどうしますか」
重い空気の中、私はレジンさんとシステラさんに話しかける。
「うーん悪い、今日は1人にしてくれないか。ちょっと俺気分がのらなくてさ」
「き、奇遇だな、私もどうも本調子になれないみたいなんだが」
「分かりました、今日はこれで終わりにしましょう」
今日は早々に解散することになった私達。
しかしちょっとこの状態はまずいかもしれません。私の聖女としての勘がそう言っている。
「レネ様!」
「キルティオ、よく戻ってきました」
キルティオは第二王女である私の専属執事補佐、王国内でもずば抜けて隠密行動に優れており、私への絶対的な忠誠心を持っている。そんな彼には普段から密かに王国外の情報を集めさせている。
「今回ちょっと気になる情報を入手致しました、元選抜冒険者グラスについての情報です」
グラス……あの使えない愚図が生きていましたか。ハイフレード様の攻撃を受けて生きているなんて悪運のいい奴……。
「そんな奴がどうしたんですか」
「現在冒険者グラスはギルド《オルトレール》に所属しています。してそこのクエストを次々にこなしてクラスAまで駆け上がってるようです」
「あの鑑定レベルEの雑魚グラスがクラスAに……妙ですね」
「更にですが、あのトーラス聖堂の闇を祓って聖女エテラカネルカ様を仲間にしたとか」
「な、なんですってええええー!」
「――あ、あの報告は以上です……」
「ご苦労でした。引き続きグラスの監視をお願いします」
「分かりました」
「それと……近々私も彼に会いに行くかもしれません」
「レネ様それはつまり……」
「ええ、緊急極秘作戦です!」
聖堂の闇は闇の欠片だと報告があった筈、魔王軍幹部クラスに匹敵する力、奴はその力を抑えたと言う事なのか。しかもあの女も仲間に加入とは、つくづく気になる存在、私が自らの目でこれは確かめるしかありません。
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