43.王女様の八つ当たり~元追放サイド~
「やりましたねグラスさん!」
「ああ」
なんだろう、不思議と一度放った出力のパーセンテージは身体に馴染んでいくような気がする。今回僕が放った出力は60%ではあるが、これは初めてで、今身体ではいつでもその出力を放てるような感覚である。
「どうしました、どこかグラスさんの魔力が高まっているような気がするのですが」
「そうか? 気のせいだろきっと」
「そうですか! それではまた何かあれば私を呼んでくださいね」
「分かったよ」
僕はミルティと再び別れることになったのであった。
しかしこの力の高まりはもしかしたら気のせいではないのかもしれない。次に力を使うときいずれにしても分かりそうだな。
「ご主人様~!」
「グラス~!」
「良かった無事だったのですね」
「心配したんだぞ」
「ありがとう、皆も無事でよかった」
「やっと終わったんですね」
「私の感知でも魔王の魔力は消えているぞ」
「はあ、しつこい奴だったよ本当! もう流石に倒したと思いたい」
「それじゃあ、ギルドのみんなの増援に行きますか!」
「そうだね……今から僕達もそっちへ向かおう!」
ハイフレードを慕っていたレネは数年前の戦いの後に後悔をしていた。
「あの時もっと私に本質を見抜ける力があれば、彼を止められていたかもしれない、それもこれも全部魔王軍のせいです! この数年ぶちの苛立ちをここでぶつけさせてもらいますよ!」
集中魔弾砲は精霊都市の魔力を使って放たれている。精霊都市では魔力が半永久的に生成される仕組みのため、その力を使えば打ちたい放題なのである。ちなみに言い伝えでは加護によりこの魔力生成が生まれるとされているそうだ。
「了解しましたよレネ様! 発射」
「ブヲオォォォォォォン!」
「ぎゅああああああああ」
「やりますねセイラさん」
「当たり前でしょ! こういった武器の操作はかなり得意なのよエイマと違って」
「エイマさんもかなり頼りになりましたよ。セレネティリア様との交渉の時、私に最後までついてきてくれたのですから」
「ああ、あれはやばかったわね。今にでも精霊女王様が私達を葬りかねなかったもの。エイマはいつも通りそう言うの気にしないたいぷだけどレネ様こそ凄かったですよ!」
「私には覚悟がありましたからね。ハイフレード様の時の後悔を払拭するっていう」
精霊女王セレネティリアへの協力を取り付けるよう密かに勇者セルファシアから任されていたメンバーがレネとエイマ、そしてセイラを含む数十名の使節団であった。
交渉はかなり熾烈なもので、頑なに協力を拒むセレネティリアの説得をする間に、レネとエイマそしてセイラの間の絆はかなり高まっていたのである。
「しかしエイマさんは何処へ行ったのですが。こちらで魔力砲の手数が欲しいのでこちらにいて欲しかったのですが……」
「ああ、エイマはね前戦が好きなの」
「前戦が?」
「そうそう、いっつも戦いでは最前線に出て行って次々と敵を倒したいっていう思想の持ち主でね、今頃は前戦に出て行って勇者様やゼーネシアさんと合流しているんじゃない?」
「なんと! 総大将2人の元迄ですか? それは凄い気迫ですね。あそこは一番熾烈な戦場……生半可な実力では命を落としかねないというのに」
「凄いでしょ、エイマはこう見えてうちのギルドの№2だからね……いやっ今は№3でした!」
「なんで数字が変わったのですか……あ、成程アイツですか」
「そうアイツがいきなり現れたからね」
レネとセイラはいきなり現れて英雄並みの活躍を凄まじい強さで見せ出した眼鏡をかけた男を思い出す。
「ふん、興が覚めましたね。余計な雑念が入りました。引き続き魔道砲発射!」
「ズドドドドドドドドドド!」
「ぎゅわああああああ」
レネが放った魔道砲が次々と魔物を蹂躙していく。
「まだまだ!」
「ドドドドドドド!」
「ぎゅわああああああああ!」
いきなりスイッチが入った見たレネを見てセイラは苦笑いする。
「ちょっと、どうしたんですかレネ様? グラス君の話した瞬間いきなりスイッチが入っちゃって」
「は、はあ? 別にそういうわけではありませんよ。たまたま話がキリのいいところまで言ったから戦闘を再開しただけの事です」
「えええ? そうなんですか。かなり意識しているようにみえたんですが」
「は、はあ? なんでそういう風につながるんですか! そう言う思考に至る時点でセイラさん、あなたの方はどうなんですか?」
「へ、へえ! 私! 私はちょっと、その……」
「はい?」
思わぬ返答をレネから受けたセイラは慌てふためく。一方で何故慌てているのかレネは全く理解できずに困惑した表情を見せるのだった。
「とにかく、引き続き戦闘を続けますよ!」
「わっかりましたよ!」
「ドドドドドドドドドド!」
「ぎゅわああああああ」
レネ達の砲撃隊は順調に敵を倒して言った、しかし異変が生じていることに気づく。
「ちょっと……あれ何なのデカすぎない?」
「こ、これはヤバそうですね」
魔物の大軍の遠方に凄まじいデカさの魔物の影が映る。辺りは霧で覆われているため姿は見えないが、影のシルエットからこの世のものとは思えない巨大さになっていた。
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