42.掃討
「すっかり静かになってしまいましたね」
僕達は魔王ブォネエセテラを倒してダンジョンの出口をついに出ることができた。
「そうだね」
あっけない終わりだったけど、本当に僕達はブォネエセテラを倒すことができたのであろうか。
「まあ無事魔王を倒したことですし、このままゼーネシアさん達の所で援軍に行きましょう」
「そうだな」
すべて終わったかのように話を進める僕達であったが、その時異変が起きた。
「グラス……」
「うん? どうしたエルカ」
「魔王の魔力をまだ感じるんだが」
「なんだって……」
「バチバチ」
その時目の前に光が現れた。
「さっきはよくもやってくれたな」
目の前に現れた魔王ブォネエセテラの姿は人型に戻っていたが、黒い翼を生やして更なる形態へと進化していたのであった。
「嘘……」
「喰らえ!」
ブォネエセテラは僕達に黒い魔法をぶつけてきた。
「危ない!」
引き続きブォネエセテラの魔法は無効化することが出来なかった。だから外部の魔力に干渉して防ぐことになったのだが、今回はかなりの出力を要することとなった。
「これはかなり強化されている気がするな」
「きゃああああああ!」
エルカとレピティの分も攻撃は防いでいるが衝撃派が多少飛び移っている。2人を守りながらこのまま戦うのは厳しいかもしれない。
「こうなったら、本腰を入れさせてもらうよ! 来てミルティ!」
外部干渉において僕にとって一番強いのが、ミルティを呼ぶことである。かなり本気を出すことになったが、魔王のこの形態ともなれば不足はないのかもしれない。
「グラスさんお呼び出しありがとうございます」
「ああ、早速だがアイツを倒してくれ」
「分かりました! 中々強そうですね」
「気にする必要ないさ、すぐ終わる」
魔王ブォネエセテラはミルティの姿を見て自分もかつて対峙していたことを思いだした表情をする。
「その精霊あの時を思い出す。許さんぞ、私をここまでコケにしやがって」
「いくら内部への干渉ができなくても、精霊術の威力はあなたを一瞬で吹き飛ばしますよ。あの時の二の舞にしてあげます!」
「精霊術・ジャッジメント」
「うわああああああああああ!」
魔王ブォネエセテラにあの時の様にヘルテラをふっと飛ばした精霊術が炸裂したのであった。
「よし、やったぞ。やっぱり流石ミルティだぜ」
「そんなことはありませんよ、私もグラスさんがいたから力を発揮できるんですから」
やっぱり勇者セルファシアのひずみの問題のせいで中々ミルティの力を使うことが出来ずにいたが、ここに来てまた一緒に戦うことができたのはかなり嬉しい。
「やっぱり、ひずみの問題が解決してよかったな」
「そうですね、私もグラスさんとこうして身近に会えることが出来て凄く嬉しいです」
「それはよかった……っ!」
「ぐ、ぐをおおおおおお!」
「なんだって!」
かつてヘルテラを一瞬で葬り去った精霊術を受けても尚魔王ブォネエセテラの第三形態は生きていた。やはり魔王、勇者セルファシアとの戦いの様に本気を出さないといけないのかもしれない。
「これはいよいよ本腰を入れないとまずいかもな」
「ええ、そうですね」
「よくも、よくも、やってくれたな! 許さないぞ!」
「これは……」
その時魔王ブォネエセテラが更なる輝きを内部から放ちだす。そしてみるみる内に魔力が拡大していき、その質はこれまで見たこともない異質なものへと変貌していた。
「ふ、ふう……少し平常心を取り戻したようだ。第三形態は第二形態の高揚感が色濃く反映されているから、どうも扱いにくい」
「……」
なんだ、魔力だけじゃなくて魔王ブォネエセテラの風格が更に増した気がする。姿は人型でさほど変わってはいないが、冷静さが反映されてかなり厄介になったのかもしれない。
「さて、始めるとするか」
「ハハハ、あんまり気が乗らないんですけど」
僕は異質な魔力に加えて冷静さを取り戻した、魔王ブォネエセテラを前にして、これはいよいよ本気を出さなくちゃいけないという気だるさを感じることになったのであった。
「出力を上げるしかないな」
「グラスさん? アレを使うんですか」
「うん、もう一回出力50%で一気に倒す」
「分かりました。負担が凄いですが覚悟をしないといけませんね!」
「そうだね」
「それじゃ、行きますよ」
僕はミルティに出力50%の分析を施した。
「精霊術・ラグナロク!」
凄まじい光がブォネエセテラを包み込む。
「何かと思えばまた精霊術かよ。私にその術は通用しないわ」
ブォネエセテラは真っ向から迎え撃つつもりのようだった。
「これでお終いだ!」
「ドドドドドドド!」
精霊術を受け止めるブォネエセテラ、その時すさまじい衝撃が辺りに巻き起こる。
「うをおおおおおお、これは! さっきの精霊術とは違う?」
精霊術の見た目は基本的に同じであるから、中々見分けることができない。しかし肌で攻撃を受けて初めてその性質に気づくことがよくあるのだった。
そしてブォネエセテラも精霊術・滅から精霊術・ラグナロクの違いを攻撃を受けたことで気づく。
「攻撃の威力が弱まらない?」
そう、精霊術ラグナロクは周囲の魔力からも力を増長させることができるのである。これによって威力が弱まることがない。
「な、なめるな!」
しかしブォネエセテラも凄い力での抵抗を見せてくる。
「う、かなり抵抗力が強いな」
今のところの力は凄まじく拮抗していた。想像以上に抵抗してくるブォネエセテラに僕は衝撃を受ける。これは勇者との戦いのとき以上の力が必要になりそうだ。
「ミルティ頼む、出力60%にあげるかも」
「え? そんなことして身体が持つんですか」
「うん、大丈夫でしょ」
「そんな簡単に……でも分かりました。グラスさんならやってくれそうな気がします」
「そうじゃなきゃね」
「僕は初めてである出力60%を繰り出した」
「はああああああ!」
「う、うわああああああああ」
吹き飛ばされていくブォネエセテラ、出力の上昇により目に見えて相手の抵抗力が弱まったことに僕は気づく。
「これで終わりだ!」
「嘘だあああああああ!」
僕は出力を上げる際に片目に光が宿ったことに気づいた。これは勇者セルファシアの契約精霊であるシテリセリアを吹き飛ばした時にも感じた感覚である。
「うっ」
そして片目に痛みが走ったが、続けて威力を弱めずに魔王ブォネエセテラに攻撃を加える。
「終わったか」
気が付けば魔王ブォネエセテラは後片もなく消え去ったのである。
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