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30.内部抗争~後半追放サイド~

「しかしここからどうやって出るんだ」


 今僕達がいるのはシレニアの空間の中である。魔王軍の生き残りと聞いていたけど一体どんな能力なのか。


「そんなことも分からずにこの空間に入ってきたのか」


「……」


 満身創痍の身体でゼーネシアさんに背負わされているのに、口だけはこの勇者はうるさいものだ。


「私も出方は分かりません。師匠ここからはどうやって出るんですか」


「簡単なことだよ。内部からこの空間を破壊すればいい」


「はあ……」


 そんなことはここに来た時に試している。どうやらこの空間は微小サイズでも魔法陣を含んでおらず僕の分析が通用しない。


 またみんなで物理や魔法攻撃を加えても簡単に弾かれてしまった。


「ふん……どうやら手詰まりのようだな」


「……さっきから横でやじばっかり入れてますけど、あなたは内部から空間を破壊する方法を思いついているんですか?」


「おいグラス、この勇者ちょっと腹立つから一発ぶん殴っていいか」


「私もエルカさんと同意見ですご主人様」


「いやいや、流石に満身創痍の相手に殴るのはよくないだろ」


「……ふん、くだらんな」


 満身創痍でもキザな態度を取るセルファシアさんにエルカとレピティと僕は凄い不快感を覚えることになったのであった。


「おい、ここら辺の近くにき裂があるぞ」


「よしっそこから出れそうだな。よく見つけなエルカ」


 ここでも聖女の感知能力が役に立つことになったのであった。




「僕達が外に出ると、オーレンとシレニアは息を引き取って倒れていた」


「こ、これは……」


「誰がこんな酷い事……」


「どうやらこの傷はシセレッサがやったようだな。この空間のき裂もシセレッサが仕業であろう」


「またシセレッサか。今すぐあいつを追いましょう」


 空間から出て僕達はシセレッサを追うことになる。仮面騎士シセレッサ、いまだに僕はあいつに屈辱を受けてから再会はしていないが、ここまで重大な人物になるとは全く思わなかった。なんだか嫌な予感がするけど、何も起きないでほしい、そう僕は強く思うことになったのであった。


 


 ここは魔王軍拠点跡地の深層部、シセレッサはオーレン達を葬った後、グラスたちとは反対方向の跡地に出ていた。


 そんな中シセレッサに連れられたフォラリフェが目を覚ますことになる。


「フォラリフェきゅん」


「はっ! てめえはシセレッサ!? 俺に何をしやがった」


 フォラリフェは身体をシセレッサに拘束されていることに気づいた。


「ふふふふ、覚えてない? 精霊都市から出てきてフォラリフェ君ずっと意識を朦朧とさせてうめき声をあげていたのよ」


「精霊都市……はっ! そうだ俺はあいつ……いやグラスさんに圧倒的力の差を見せつけられて……そこから精神的に沈んで記憶が……」


「グラスさん……!?」


「ぐっ……て、てめえ!」


 シセレッサはフォラリフェの首根っこを掴んで壁に叩きつけた。


「いつからおめえはあのメガネ野郎の事をさん付けして呼び出したんだよ」


「うごっ! ぐごっ……か、勘違いだったんだよ。グラスさんの力は途轍もなくて、あの時は能力を発揮できてなかっただけだったんだ。俺はあの人に絶対ついて……ぐはっ」


「おい、おい、おい、あれだけ粋がってたのに、少し実力を発揮されただけでそんな直ぐに意思を変えちゃうんだね。知ってるフォラリフェきゅん? 君が意識を失っていた時、君はずっと私の操り人形だったんだよ」


「は? はあ! 何言ってやがる……てめえ俺の前で調子に乗り過なんだよ!」


 フォラリフェは身体の魔力を解放してシセレッサの手を振りほどき拘束を破壊した。


「シセレッサ! てめえは俺を怒らせた。ここでボコボコにして今の状況を洗いざらい吐かせてやるからな」


「へえ、すっかり私へのさん付けも止めちゃって、調子のってんのはどっちの方かしらね。駄犬は今すぐ黙らせてお終いだよ」


 シセレッサは仮面の奥から目を光らせて魔力を放つ。


 勇者セルファシアがいなくなったことにより、実質解体になった勇者パーティーであるが、残りのメンバー2人での更なる内部崩壊の戦いが始まるのであった。


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