26.億の秘策
「ふん、これで、遠慮なくお前を葬ることが出来る」
「葬りはしませんが、今から僕はあなたを拘束しますよ?」
「口の減らないガキが!」
ゼーネシアさんが魔力を放出すると魔法陣が大量に放出された。
「分析……っやっぱりだめか」
「馬鹿が、お前が持っている解魔石は私が作った魔具で作られている。精霊もいない今お前はあの無様に追放されたときとなんも変わらない状態なんだよ」
そんなことは百も承知である。僕の出力能力は恐らくミルティがいないから、発動できないだろうと言う事は楽に予想できた。
「この無数の魔法陣から放たれる魔法で終わりだ! 消え去れ!」
「ドドドドドドドドドドドドドドドド!」
無数の魔法が一点集中で放たれて凄まじい轟音と共に、当たりに粉塵や煙が巻き起こり視界が閉ざされた。
「ふん……跡形も無くなったか」
「僕が何の対策もせずに、あなたの元へ来たなんて本当に思っているんですか」
「な、何! お前何をした!」
「見てくださいよセルファシアさんこれ!」
「なんだそれは……アイテムボックスか?」
「ホルテラ様の宝珠」
「なんていった?」
「ホルテラ様の宝珠100000000個入りアイテムボックスですよ! 見てくださいこれ」
「き、貴様、私をからかっているのか、そんな球が大量にあったところで何の意味があるんだ。もう一度無数の魔法陣でくたばれ!」
「ズドドドドドドドドド!」
「ふん、くたばったか」
「凄いですね」
「何?」
「セルファシアさんの魔力は無尽蔵なんですか? もう軽く100個はホルテラ様の宝珠が壊れちゃった気がします。そろそろ無駄に壊すのがもったいない気がしてきたんで、こっちも攻めさせてもらいますよ」
「貴様……なぜ私の攻撃をくらって無事でいられるんだ。それにそのアイテムなんなんだ」
実は精霊都市を出た時にホルテラ様に頼んでおいたホルテラ様の宝珠、数年前の聖堂クエストで神級魔力を纏い解魔石の代替品として僕を助けてくれたアイテムがここで役に立つとは。
解魔石がセルファシアさんとの戦いで使えないことが分かった以上、沢山ストックをお願いしたら、セレネティリア様がノリノリになってまさかこんなに沢山作ってくれるなんて思わなかった。
「お答えしている時間なんて戦闘中にはありませんね。こっちにもストックがあります。一気に行かせてもらいますよ!」
僕は今回セルファシアさんの魔法陣にではなく周囲の空間に分析を掛けた。空間を歪ませる攻撃を放つ。
「馬鹿な……私の魔法陣に直接干渉するだけでなく、周囲の空間にまで干渉を及ぼすだと。そんな規格外なことがあるか!」
「うーむ、中々素早いですね」
魔法陣を足に付与して移動速度を上げているのか、僕の空間の歪みはセルファシアさんを捉えることはできなかった。
「くそっこの勇者である私がこうも防戦一方だとは……」
「まだまだですよ! 今度は遠慮なしで仕留めに行くんで悪く思わないでくださいね。ちょっと自分でもこの方法を使うのは気が引けるんです」
「くっ! 何だこれは! 私の身体に直接何らかの力が掛かっている!?」
僕は分析をセルファシアさん身体本体にかけて機能停止の出力を掛けた。今まで敵への分析はなんかずるい気がして使わなかったんだが……今回はそうも言ってられないからね。それだけ目の前の勇者セルファシアは今までの中で一番の強敵というわけだ。
「悪く思わないでくださいよセルファシアさん! これでチェックメイトです」
「……解除」
「なっ! 嘘だろ」
「はあ、はあ、はあ……馬鹿が、私自身の身体には魔法陣を消滅させる機能があるんだよ。日々魔法陣を解析する中で身体にそれがある危険を私が一番理解しているからな」
「へ、へえ、随分と用意周到な事で」
くそっ仕留めたと思ったのに……でもまだまだ宝珠のストックはたくさんある。
「でも見た感じセルファシアさんの魔法陣の変化は外部の者にはできないようですね。自分を介して出来る魔法や、さっきのような体への付与程度ですよ。それならこのまま空間の歪みで押し通させてもらいます!」
「き、貴様!」
息が上がっているセルファシアさんは再び放たれた空間の歪みから、加速して逃げる。
「捉えた! これでお終いです」
「ドドドドドド!」
僕の空間の歪みが完全にセルファシアさんを捉えたと同時に凄まじい爆発が起きるのだった。
「はあ、はあ、はあ……愚か者め、お前は勇者がどんな局面で世界を見ているのかすら分からないのだろうな……これを使うことになるなんて」
「嘘だろ」
まだ倒れてないなんて……あれだけあったホルテラ様の宝珠のストックも残り半分くらいだぞ。
それにあれはなんだ精霊?
「すまんなシテリィセリア、ひずみの作業中に呼び出してしまった」
「いいえ、マスター問題ありません。これはどうも緊急事態のようですね」
「ああ、ここからだ! そのガキを殲滅する」
「面白かった、続きが読みたい!」
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