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第二話 名状し難いデートのようなもの

遂に念願の彼女ができた。しかも、相手は学年一と言われるような体の持ち主だ。

外見も良く、発達も良く、頭は…まだ分からないが、良いのだと思いたい。

しかも、ちょっと、いや、かなりエッチな子でもある。

もう、最高の一言である。


ただ、少し残念なこともある。

休み時間などで思い切りいちゃつこうと思っていたが、休み時間はちょっと話したりする程度だった。

こんな、ただ優しい(笑)しか取り柄のない者と付き合って、服の上から胸まで触らせているなんてことがバレれば笑いものになること間違いなしだろう。


まあ、放課後になれば、みんなに隠れて胸触り放題だがな、ガハハ!


「…おい」

「…おい三ツ葉、聞いているのか?」

「あ、はい」

「彼女でもできたのか知らんが、授業はちゃんと聞けよ」

「すんません」


教師からそう注意されると同時に、周りから笑い声や熱い罵声が飛んでくる。


最近は嬉しさのあまり、授業にも身が入らず毎日毎日恍惚と妄想をする日々だ。

こうやって授業中に注意されるのも日常茶飯事だ。

決して頭が良い訳ではないので、しっかり授業は聞いていないといけないのだが、やはり授業なんかより彼女とのあんなことやこんなことの妄想の方が楽しい。


色々な妄想をしながら、放課後を待つ毎日…最高だ。一生続いてほしい。


そして、放課後。今日も声を掛けられて空き教室へ。


「今日は何を?」

「ちょっといつもと違うこと、しようかなぁ…」


そう言うと、椎名の手が触れて、再び胸部に手を移動させてくる。

最初はこの行動に焦りまくっていたが、最近は当たり前のことと化し、慣れてきてしまった。

…本来はこんな奇行慣れるべきものではないのだが。


今日もいつもの柔らかく全てを包み込む感触…だけではなかった。

指をいじり、形を変えさせる。この行動は初めてだ。


「今度は何をするつもりだ?」

「なんだろうね~…指を折るとか?」

「物騒なことを…」

「まぁ全然違うんだけどね」

「…そうだと良いが」


そして、流されるまま指を動かされると、その指は胸部の中央付近へ。

指には柔らかい感触以外に、少しだけ硬めの感触が伝わってくる。

その硬めの感触を感じると同時に椎名の体がビクビクとはねる。


「こ、これは…」

「言わなくて良いよ」

「わかった。……女性の乳首って男のとはちょっと違うんだな…」

「言わなくて良いって」

「ナイス乳首!」

「やめっ、止めろォ~!」

「普段俺でエロいことをして遊んで、二重の意味でたのしんでいるお返しよ。やられたらやり返す、倍返しさ」


何か思っていたのと違うが、これはいちゃいちゃ出来ているということで良いのか…?


そして、また1時間程度エッチな遊びをし、その帰り際。


「そうだ。日曜日、どこか出かけようか。10時に駅前集合ね。じゃ、また日曜ね~」

「あ、おい、ちょっと急に…。もし俺が用があって来れなかったらどうするんだ?」

「しにます」

「重たいボケやめろ」


休日に会う約束を急に結ばされた。

何もないから良いものの、もし本当に別に用があったら…とか、急に用が出来たら…と思うと、夜も寝られない。


………

……


結局夜はしっかり眠れた。

というか、寝坊した。

8時には起きようと思っていたが、起きると時計が差す時間は9時20分。ギリギリ間に合わなくもないが、何のおめかしも出来ず初のデートのようなものに臨むことになる。



急いで駅前に行ったが、5分の遅刻。

その結果なのか、見渡してもどこにも見当たらない。


「まさか本当にし…」


そう思った瞬間、真後ろから最近よく聞くようになった女性の声が響き渡る。

「勝手にころさないでよ」

「びっくりした…。いたのか、いつからここに?」

「しらす(。∀°)」

「真面目に答えてくれ、俺で遊ぶな」


集まったが、最大の問題がある。それは、どこで何をするのか。

正直ありきたりなものしか思い浮かばない。映画観るか?服屋とか見るか?

色々悩み、迷っていると、いつものように椎名が手を掴んできた。


「え?こんな大勢の前で…」

「ん?私にプランがあるから、付いて来てもらおうと思ったんだけど…。何を考えたの?」


相手をからかうようにニヤニヤしながらそう言い放つ。

流石にこんな多くの人がいるなかで言うのははばかられることだが、困らせてやろうと直接的にいってやることにした。


「いつも通りまーた胸に手やられると思ったわ」

「…えっち」

「お前が言うな」


流されるままついていくと、そこは何も変哲もないただの公園。普通に小さい子どもも遊んでいる。

一体、公園で何をするつもりなのか?違法アップロードのAVをよく嗜む者としては、卑猥な妄想しかできない。


ベンチに座ると、急に頭を手で押さえつけられる。

流石に驚いて声を出そうとしたその時、後頭部に胸程ではないが柔らかく温かい感覚を覚えた。

そして何より、眠たくなるほど安らぐこの感覚…


「膝枕やんけ!」


俺はとても気持ちよく、また、椎名も非常に嬉しそうな、そして小動物でも見ているかのような顔でこちらを見ている。

しかも、その構図から、正面を向いているとずっと目や顔が合う。

とても幸せなひと時ではあるが、小さな子どもには教育に悪い、目に毒な絵面である。


どうしても周りが気になり目を背けようとした瞬間、手で顔を思い切り抑え込んで、他のものに目がいかないようにしてくる。

目が他のものにいくことはないだろうけれども、俺は色々な意味であっと言う間にいってしまいそうである。


しばらくして、椎名がふと時計に目をやったと思うと、立ち上がった。

「うぉ」

急だったので転げ落ち、力士の如く土、もとい砂が付く。


「あっごめ~ん。膝の上にいたこと忘れてた。」

「しばらくずっと見てたのに忘れてたとか、鳥かな?」

「そうかもね」

「いや、否定して?」

「いや、でも本当に今は鳥頭よ。」


そう言って椎名は自分の頭を指差したが、俺よりも少しだけ背の高い者の頭など見えるはずもなく。


「すまん、見えない…」

「ずっとああしてたらね、いつの間にか頭に鳥の糞が…」

「それで鳥の糞の付いた頭→鳥頭か。上手くないし汚いから水で流してね」

「そんな直球で言うなんて、うぅぅ…」

「人前で鳴き真似やめて、俺の人生終わる。…ただ、マジで頭は水飲み場ででも洗った方が良い」


頭を綺麗に洗い終わると、もう昼だ。

一緒にどこで昼を食べようかと思ったその時。


「ごめんね。うちの親、クソでさ…。今日はここでお開きで」

「親がクソ、か…それなら仕方ないか」


とんでもない事実の発覚と共に、今回のおかしな名状し難いデートのようなものは終焉を迎えた。


「親がクソ、か…。結構クソ親っているものなんだな…」


…俺の親も大概クソだった。

小さい頃は当たり前のように虐待されていた。

ベランダから足首だけ持って吊るされたり、監禁されたり、フライパンで殴られたり…。多種多様な虐待を受けた。

もしかして、椎名も…。とは思いたくない。


色々な出来事が頭の中を渦巻き、その夜は眠れなかった。



翌日。

放課後になり、いつも通りエロエロな時間を過ごした。

しばらくの時間続いたが、嫌な過去を思い出すかもしれないなどなど考えて、結局親のことについては聞けず仕舞いだった。


「凄い、気になるなぁ…」


あの宣言とそれに対する疑問は、いつでもついて回ることになった…


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